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13.冷酷教師とわがまま王子
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「……!! 意見ならある!
三属性も全属性もたいして変わらないだろう!
アリアンヌが指導を受けたいと言うのなら黙って引き受ければいいだろう!」
「セザール様!!」
隣にいたアリアンヌ様が慌てて止めようとしたけれど、
セザール様は最後まで言い切ってしまった。
どうやらセザール様は王族至上主義のようだ。
アリアンヌ様が指導を受けたいのであれば変更させればいいと思ったらしい。
言われたギルバードは呆れたように一つため息をついた。
そして、めんどくさそうに説明を始める。
「まず、はっきり言っておく。
三属性と全属性の違いは一つ属性が増えるだけではない。
三属性はそうだな……水たまりのようなものだ。そこに見えるだけの水しかない。
全属性は川や海のようなものだ。どれだけ量があるのか誰にもわからない。
水たまりの水を制御するのと、川の流れを制御するのが同じだとは、さすがに言わないよな?」
「だからと言って、三属性持ちを指導しない理由はないだろう?
全属性と一緒に指導すればいいだけじゃないか」
「ダメな理由があるからに決まってるだろう。
水たまりの上でぱちゃぱちゃやっているのが水遊びだと思っているものと、
大海を泳いで渡るのを水遊びだと思っているものを一緒にできるのか?
下手に巻き込まれたら死ぬんだぞ?」
「……」
「全属性のものを他のものと同じに扱うわけにはいかない。
わかったら…」
「じゃあ、担当教師を変えればいいだろう!
お前が三属性を指導しろ!」
どうしてもアリアンヌ様の担当をギルバードに変えたいのか、
ついにセザール様は立ち上がってギルバードに命令した。
それを聞いてアリアンヌ様は倒れそうなほど顔が青くなっている。
「はぁぁ。これを最初に言っておくべきだったな。
俺はこの仕事を受ける時に陛下と誓約つきの契約をしている。
王族であっても容赦しなくていいと言われている。
王子でも公爵令嬢でも成績が悪ければ留年させる。
他の学生を傷つけるようなことがあれば退学にしていいと」
「はぁ?」
「この学園にいる間、お前らよりも俺のほうが立場は上だ。
国王陛下がそう決めて、全貴族に通達することになっている。
今日中には通達されているだろう」
国王陛下からの通達?では、本当に?
でも、どうして入学前に通達しなかったんだろう。
そうすればセザール様が文句を言うことも無かったかもしれないのに。
不思議に思っていたら、また教室のドアが開いた。
入ってきたのは紙束を抱えたカミルだった。
「ちょうどいい。試験の問題が運ばれてきた。
今日の午前中は試験をしてもらう」
「は?」
「この学年は入学後にもう一度試験をやってもらうことになった。
その成績で教室を決める。今の教室は仮のものだ」
「どういうことだ!」
「毎年、課題を送り返す時に誓約書を送り返してこないものがいる」
その言葉に数名が視線をさげた。
どうやらセザール様もそうなのか、ギルバードから目をそらした。
「課題を自宅で解いていいのは誓約書があるからだ。
必ず自分の力で解く、人に教えてもらうなどの不正はしない。
誓約させることで課題の結果を評価することができる。
だが、誓約しないのであれば不正はし放題。これでは実力はわからない」
ギルバードが説明する間もカミルは試験問題を裏返しにして配っていく。
数枚の問題と解答用紙のようだ。
課題よりも少ないが、午前中だけで解くのであればこのくらいなのかもしれない。
「おかげで上位教室にいるのに基本もわからない者がいる。
基本がわからないのに、応用だけ学び続けても意味はない。
一方で、本来なら上位教室だった者が下位教室になった場合、
基本ができているものに基本を学ばせても意味はない。
この不正のせいでこの国の学園は学力が低下し続け、
結果として二学年から優秀なものはエシェル王国に留学している。
陛下はこれを憂慮し、今年から入学後に試験をし直すことになった。
また学期ごとの試験も厳しくし、赤点者は容赦なく教室を落とす。
では、試験を開始しろ」
「ちょっと、待て。俺は受けるとは言ってない!認めないぞ!」
「受けない場合は出ていけ。その場合は退学になる」
「はぁ?横暴だろ!」
「セザール様!本当に退学になりますわよ!
ギルバード先生は嘘をつくようなお方ではありません!
陛下の許可も本当のことだと思います!」
説得するようにアリアンヌ様に言われ、セザール様は渋々席に座る。
不貞腐れながら試験問題を見始めたが、顔が青くなっている。
……課題、自分で解かなかったのかな。
試験問題を見たら、意外と簡単だった。
出された課題を直接そのままではないけれど、
課題を解くときに読まなければいけなかった参考文献から出されていた。
ちゃんと課題を解いたものなら難しくはない。
だけど、参考文献を読んでいないのであれば解けないかもしれない。
魔力筆が机にぶつかるカツカツという音だけが聞こえる。
静かな教室の中、ギルバードは座ることも無く学生たちをながめていた。
「そこまで」
試験時間が終わるとカミルが回収していく。
回収されるとすぐにセザール様は教室から出て行った。
それをアリアンヌ様が慌てて追いかけていく。
教室に残っていたものたちも気まずそうに出て行く。
ギルバードとカミルが教室から出て行くのを見て、収納袋から封筒を取り出した。
そこには
「担当教師ギルバード 指定場所 旧演習場」と書かれていた。
三属性も全属性もたいして変わらないだろう!
アリアンヌが指導を受けたいと言うのなら黙って引き受ければいいだろう!」
「セザール様!!」
隣にいたアリアンヌ様が慌てて止めようとしたけれど、
セザール様は最後まで言い切ってしまった。
どうやらセザール様は王族至上主義のようだ。
アリアンヌ様が指導を受けたいのであれば変更させればいいと思ったらしい。
言われたギルバードは呆れたように一つため息をついた。
そして、めんどくさそうに説明を始める。
「まず、はっきり言っておく。
三属性と全属性の違いは一つ属性が増えるだけではない。
三属性はそうだな……水たまりのようなものだ。そこに見えるだけの水しかない。
全属性は川や海のようなものだ。どれだけ量があるのか誰にもわからない。
水たまりの水を制御するのと、川の流れを制御するのが同じだとは、さすがに言わないよな?」
「だからと言って、三属性持ちを指導しない理由はないだろう?
全属性と一緒に指導すればいいだけじゃないか」
「ダメな理由があるからに決まってるだろう。
水たまりの上でぱちゃぱちゃやっているのが水遊びだと思っているものと、
大海を泳いで渡るのを水遊びだと思っているものを一緒にできるのか?
下手に巻き込まれたら死ぬんだぞ?」
「……」
「全属性のものを他のものと同じに扱うわけにはいかない。
わかったら…」
「じゃあ、担当教師を変えればいいだろう!
お前が三属性を指導しろ!」
どうしてもアリアンヌ様の担当をギルバードに変えたいのか、
ついにセザール様は立ち上がってギルバードに命令した。
それを聞いてアリアンヌ様は倒れそうなほど顔が青くなっている。
「はぁぁ。これを最初に言っておくべきだったな。
俺はこの仕事を受ける時に陛下と誓約つきの契約をしている。
王族であっても容赦しなくていいと言われている。
王子でも公爵令嬢でも成績が悪ければ留年させる。
他の学生を傷つけるようなことがあれば退学にしていいと」
「はぁ?」
「この学園にいる間、お前らよりも俺のほうが立場は上だ。
国王陛下がそう決めて、全貴族に通達することになっている。
今日中には通達されているだろう」
国王陛下からの通達?では、本当に?
でも、どうして入学前に通達しなかったんだろう。
そうすればセザール様が文句を言うことも無かったかもしれないのに。
不思議に思っていたら、また教室のドアが開いた。
入ってきたのは紙束を抱えたカミルだった。
「ちょうどいい。試験の問題が運ばれてきた。
今日の午前中は試験をしてもらう」
「は?」
「この学年は入学後にもう一度試験をやってもらうことになった。
その成績で教室を決める。今の教室は仮のものだ」
「どういうことだ!」
「毎年、課題を送り返す時に誓約書を送り返してこないものがいる」
その言葉に数名が視線をさげた。
どうやらセザール様もそうなのか、ギルバードから目をそらした。
「課題を自宅で解いていいのは誓約書があるからだ。
必ず自分の力で解く、人に教えてもらうなどの不正はしない。
誓約させることで課題の結果を評価することができる。
だが、誓約しないのであれば不正はし放題。これでは実力はわからない」
ギルバードが説明する間もカミルは試験問題を裏返しにして配っていく。
数枚の問題と解答用紙のようだ。
課題よりも少ないが、午前中だけで解くのであればこのくらいなのかもしれない。
「おかげで上位教室にいるのに基本もわからない者がいる。
基本がわからないのに、応用だけ学び続けても意味はない。
一方で、本来なら上位教室だった者が下位教室になった場合、
基本ができているものに基本を学ばせても意味はない。
この不正のせいでこの国の学園は学力が低下し続け、
結果として二学年から優秀なものはエシェル王国に留学している。
陛下はこれを憂慮し、今年から入学後に試験をし直すことになった。
また学期ごとの試験も厳しくし、赤点者は容赦なく教室を落とす。
では、試験を開始しろ」
「ちょっと、待て。俺は受けるとは言ってない!認めないぞ!」
「受けない場合は出ていけ。その場合は退学になる」
「はぁ?横暴だろ!」
「セザール様!本当に退学になりますわよ!
ギルバード先生は嘘をつくようなお方ではありません!
陛下の許可も本当のことだと思います!」
説得するようにアリアンヌ様に言われ、セザール様は渋々席に座る。
不貞腐れながら試験問題を見始めたが、顔が青くなっている。
……課題、自分で解かなかったのかな。
試験問題を見たら、意外と簡単だった。
出された課題を直接そのままではないけれど、
課題を解くときに読まなければいけなかった参考文献から出されていた。
ちゃんと課題を解いたものなら難しくはない。
だけど、参考文献を読んでいないのであれば解けないかもしれない。
魔力筆が机にぶつかるカツカツという音だけが聞こえる。
静かな教室の中、ギルバードは座ることも無く学生たちをながめていた。
「そこまで」
試験時間が終わるとカミルが回収していく。
回収されるとすぐにセザール様は教室から出て行った。
それをアリアンヌ様が慌てて追いかけていく。
教室に残っていたものたちも気まずそうに出て行く。
ギルバードとカミルが教室から出て行くのを見て、収納袋から封筒を取り出した。
そこには
「担当教師ギルバード 指定場所 旧演習場」と書かれていた。
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