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41.約束
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「襲うように命令を出したのはビビアナだ。
シルフィーネ嬢がいなくなればジルバードが自分のものになると思ったらしい。」
「ビビアナ様が?」
「だから、今回のことは全部ビビアナが悪い。
シルフィーネ嬢は何も悪くないんだ。」
急にビビアナ様の名前が出て驚いていると、
助けられた後もいろいろあったことを聞かされる。
魔力切れで倒れた私にお義兄様が魔力を注いでいる時に、
ビビアナ様が現れて邪魔しようとしたらしい。
その時に私が死ねばよかったと話したことから、
セドリック様がビビアナ様がやったことなのか問いただしたという。
聞かれたビビアナ様が素直に認めたことから捕えられた。
手引きしたと思われる女官たちも一緒に。
ビビアナ様がお義兄様と結婚したいと思っているのは知っていたし、
私がそれを邪魔をしているのかもしれないとは思っていた。
だけど、死んでもいいと思われていたほど恨まれていたとは。
ビビアナ様の降嫁の話を聞かされた時には、
私が身を引いたほうがいいのではと思ったりもしたけれど。
こんな恐ろしいことを平気でするような人はお義兄様にふさわしくない。
怒りで身体が震え始める。
「あぁ、悪い。刺激が強かったか。
体調が戻っていない時に話すことじゃなかったな。
ビビアナと女官は貴族牢に一人ずつ入れてある。
今回はさすがに父上も許せとは言わないだろう。
もうこんな愚かな真似は二度とさせない…。
詳しい話し合いは後日、調べが終わってからにしよう。
…それまでにアンジェリカも起き上がれるようになっているはずだ。」
私へ気遣いながらもセドリック様は苦しそうな顔をして、
寝ているアンジェリカ様の髪を一房すくうように持ち上げる。
あぁ、もう見ていられない。お義兄様を見ると、無言でうなずいた。
「アンジェリカ嬢の怪我は誰にも知られていないのか?」
「父上には報告してある。一応は国王だからな。
王宮内の話を他に広がらせないようにするためにも仕方ない。
まぁ、アンジェリカが怪我したと知っても、
父上が婚約解消を言い出すわけがないから大丈夫だろう。」
陛下には知られてしまっている…大丈夫だろうか。
少しだけ怖さは残る。
だけど、アンジェリカ様の怪我をそのままにはできなかった。
「…もし、アンジェリカ嬢の怪我が治るとしたら、秘密を守れるか?」
「秘密を?もちろんだ…。
治るなら何でもするとは言えない。
王太子としての責任はあるし、アンジェリカと離れろと言われても断る。
だが、秘密を守るくらいならたやすいことだ。
…もしかして、シルフィーネ嬢は光属性が使えるのか?」
「光属性が使えると知られたらどうなるか、お前なら理解できるはずだ。」
「…そうだな。わかった。約束しよう。
俺個人としてだけでなく、国王となった後でも、
その秘密を一生守り続けると。アンジェリカにも言わない。
それでいいか?」
いいか、と聞かれたのはお義兄様ではなく、私にだった。
アンジェリカ様にも言わないとは思わなかったが、
考えれば知らないほうが安全かもしれない。
知らなければ秘密を守る必要もなくなる。
「その条件でお願いします。…アンジェリカ様に近づいても?」
「ああ、頼む。」
寝台の横に近づいて、アンジェリカ様の左腕にふれる。
包帯の上からでも凸凹しているのがわかる。
焼け焦げた腕の表皮を守るように何か添えてあるらしい。
魔力で包み込むようにしながら、ゆっくりと包帯を外していく。
嫌なにおいが広がる。見ているだけでも痛そうな肌が見えてきた。
何度も何度も表皮を生まれ変わらせるようにはがし、少しずつ綺麗にしていく。
半刻ほどかけ、アンジェリカ様の腕は元通りになった。
「…すごい。本当に治った…はは。」
少し離れたところから見守っていたセドリック様が、
すとんと床の上に座り込んだ。
力が抜けてしまったのか、お義兄様が手を貸して椅子に座らせる。
「あとは魔力の調整が終われば、アンジェリカ様は目を覚ますはずです。
でも、アンジェリカ様にはどう説明するのでしょうか?」
あれほどひどかった怪我が寝ているうちに治ったら驚くだろうし、
何があったのかとセドリック様に聞くだろう。
「…大丈夫。このことについては何も聞いてはいけないし、知ってはいけない。
そう言えばアンジェリカは余計なことをしない。
王妃になるというのは、そういうことだ。」
「そうですか、わかりました。
…良かった。私を守ろうとしてアンジェリカ様は怪我を負いました。
だから、お義兄様にお願いしたんです。どうしても治したいと。
無事に治せてほっとしました。」
「そうか…アンジェリカが怪我をしたことはアンジェリカの責任だ。
だが、治してくれてありがとう…ジルバードの説得は大変だっただろう。」
「…簡単にシルフィーネのことを知られるわけにはいかないからな。」
セドリック様が言うように、渋るお義兄様を説得するのは大変だった。
私のことが知られたら、ますます結婚を妨害しようとするものが増えてくる。
私を守るのも難しくなる。私が傷つくようなことになるのは嫌だと。
きっとアンジェリカ様の怪我のことは知られないようにしているはずだから、
こっそりと会ってみて、治せるようだったら治したい。
無理そうならあきらめるからと、そう言ってなんとか説得した。
セドリック様が秘密を守ってくれると約束してくれて本当に良かった。
「あーそういうことか。なるほどな…。
シルフィーネ嬢が公爵家の養女になった理由はこれか。
俺はてっきり…ジルバードがさらってきたんだと思っていた。」
「え?」
「いやだって、ジルバードは最初から嫁にするって言ってたし、
可愛がり方が異常だったからな。」
可愛がり方が異常?
お義兄様はセドリック様に何を話していたんだろう?
どういうことかとお義兄様を見たら、目をそらされる。
「よけいなことは言うな。では、俺たちは帰る。
詳しい話し合いはまた後日、呼び出してくれ。」
「わかった。連絡する。
…シルフィーネ嬢、本当にありがとう。」
「いいえ、助けてもらったのは私のほうですから。」
私のせいで負傷したのに、お礼を言われても困る。
そう告げると、セドリック様は笑ってそれ以上は言わなかった。
部屋を出る時、もう一度セドリック様を見たら、
うれしそうな顔してアンジェリカ様のところに戻ろうとしているのが見えた。
シルフィーネ嬢がいなくなればジルバードが自分のものになると思ったらしい。」
「ビビアナ様が?」
「だから、今回のことは全部ビビアナが悪い。
シルフィーネ嬢は何も悪くないんだ。」
急にビビアナ様の名前が出て驚いていると、
助けられた後もいろいろあったことを聞かされる。
魔力切れで倒れた私にお義兄様が魔力を注いでいる時に、
ビビアナ様が現れて邪魔しようとしたらしい。
その時に私が死ねばよかったと話したことから、
セドリック様がビビアナ様がやったことなのか問いただしたという。
聞かれたビビアナ様が素直に認めたことから捕えられた。
手引きしたと思われる女官たちも一緒に。
ビビアナ様がお義兄様と結婚したいと思っているのは知っていたし、
私がそれを邪魔をしているのかもしれないとは思っていた。
だけど、死んでもいいと思われていたほど恨まれていたとは。
ビビアナ様の降嫁の話を聞かされた時には、
私が身を引いたほうがいいのではと思ったりもしたけれど。
こんな恐ろしいことを平気でするような人はお義兄様にふさわしくない。
怒りで身体が震え始める。
「あぁ、悪い。刺激が強かったか。
体調が戻っていない時に話すことじゃなかったな。
ビビアナと女官は貴族牢に一人ずつ入れてある。
今回はさすがに父上も許せとは言わないだろう。
もうこんな愚かな真似は二度とさせない…。
詳しい話し合いは後日、調べが終わってからにしよう。
…それまでにアンジェリカも起き上がれるようになっているはずだ。」
私へ気遣いながらもセドリック様は苦しそうな顔をして、
寝ているアンジェリカ様の髪を一房すくうように持ち上げる。
あぁ、もう見ていられない。お義兄様を見ると、無言でうなずいた。
「アンジェリカ嬢の怪我は誰にも知られていないのか?」
「父上には報告してある。一応は国王だからな。
王宮内の話を他に広がらせないようにするためにも仕方ない。
まぁ、アンジェリカが怪我したと知っても、
父上が婚約解消を言い出すわけがないから大丈夫だろう。」
陛下には知られてしまっている…大丈夫だろうか。
少しだけ怖さは残る。
だけど、アンジェリカ様の怪我をそのままにはできなかった。
「…もし、アンジェリカ嬢の怪我が治るとしたら、秘密を守れるか?」
「秘密を?もちろんだ…。
治るなら何でもするとは言えない。
王太子としての責任はあるし、アンジェリカと離れろと言われても断る。
だが、秘密を守るくらいならたやすいことだ。
…もしかして、シルフィーネ嬢は光属性が使えるのか?」
「光属性が使えると知られたらどうなるか、お前なら理解できるはずだ。」
「…そうだな。わかった。約束しよう。
俺個人としてだけでなく、国王となった後でも、
その秘密を一生守り続けると。アンジェリカにも言わない。
それでいいか?」
いいか、と聞かれたのはお義兄様ではなく、私にだった。
アンジェリカ様にも言わないとは思わなかったが、
考えれば知らないほうが安全かもしれない。
知らなければ秘密を守る必要もなくなる。
「その条件でお願いします。…アンジェリカ様に近づいても?」
「ああ、頼む。」
寝台の横に近づいて、アンジェリカ様の左腕にふれる。
包帯の上からでも凸凹しているのがわかる。
焼け焦げた腕の表皮を守るように何か添えてあるらしい。
魔力で包み込むようにしながら、ゆっくりと包帯を外していく。
嫌なにおいが広がる。見ているだけでも痛そうな肌が見えてきた。
何度も何度も表皮を生まれ変わらせるようにはがし、少しずつ綺麗にしていく。
半刻ほどかけ、アンジェリカ様の腕は元通りになった。
「…すごい。本当に治った…はは。」
少し離れたところから見守っていたセドリック様が、
すとんと床の上に座り込んだ。
力が抜けてしまったのか、お義兄様が手を貸して椅子に座らせる。
「あとは魔力の調整が終われば、アンジェリカ様は目を覚ますはずです。
でも、アンジェリカ様にはどう説明するのでしょうか?」
あれほどひどかった怪我が寝ているうちに治ったら驚くだろうし、
何があったのかとセドリック様に聞くだろう。
「…大丈夫。このことについては何も聞いてはいけないし、知ってはいけない。
そう言えばアンジェリカは余計なことをしない。
王妃になるというのは、そういうことだ。」
「そうですか、わかりました。
…良かった。私を守ろうとしてアンジェリカ様は怪我を負いました。
だから、お義兄様にお願いしたんです。どうしても治したいと。
無事に治せてほっとしました。」
「そうか…アンジェリカが怪我をしたことはアンジェリカの責任だ。
だが、治してくれてありがとう…ジルバードの説得は大変だっただろう。」
「…簡単にシルフィーネのことを知られるわけにはいかないからな。」
セドリック様が言うように、渋るお義兄様を説得するのは大変だった。
私のことが知られたら、ますます結婚を妨害しようとするものが増えてくる。
私を守るのも難しくなる。私が傷つくようなことになるのは嫌だと。
きっとアンジェリカ様の怪我のことは知られないようにしているはずだから、
こっそりと会ってみて、治せるようだったら治したい。
無理そうならあきらめるからと、そう言ってなんとか説得した。
セドリック様が秘密を守ってくれると約束してくれて本当に良かった。
「あーそういうことか。なるほどな…。
シルフィーネ嬢が公爵家の養女になった理由はこれか。
俺はてっきり…ジルバードがさらってきたんだと思っていた。」
「え?」
「いやだって、ジルバードは最初から嫁にするって言ってたし、
可愛がり方が異常だったからな。」
可愛がり方が異常?
お義兄様はセドリック様に何を話していたんだろう?
どういうことかとお義兄様を見たら、目をそらされる。
「よけいなことは言うな。では、俺たちは帰る。
詳しい話し合いはまた後日、呼び出してくれ。」
「わかった。連絡する。
…シルフィーネ嬢、本当にありがとう。」
「いいえ、助けてもらったのは私のほうですから。」
私のせいで負傷したのに、お礼を言われても困る。
そう告げると、セドリック様は笑ってそれ以上は言わなかった。
部屋を出る時、もう一度セドリック様を見たら、
うれしそうな顔してアンジェリカ様のところに戻ろうとしているのが見えた。
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