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番外
ランドル
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「なぁ、図書の森に来る銀の妖精の話知っているか?」
「なにそれ、銀の妖精?」
「あぁ、サウンザードから来ている兄妹の魔術師なんだが…。
二人とも輝くようなサラサラの銀の髪が特徴で、
森の中で魔術書を読んでいるとまるで妖精のように美しいんだと。
特に妹のほうは…魔術書を読み終えると…
うれしそうに微笑むらしくて、それに見惚れる奴が続出しているんだ。
あまりに見惚れすぎて、持っていた魔術書が逃げてしまったって。」
「なんだそれ。すごいな。
魔術書がすねるくらい心を持っていかれたってことか。
図書の森に入館できるってことは、かなり優秀な魔術師なんだろ?
その上、妖精と間違えられるほどの美しさか…見てみたいな。
よし、今度図書の森の近くで待ち伏せしてみよう。」
魔術師学校の昼の休憩時間、
食堂で食事を取っていたら隣に座っていた奴らの話が聞こえた。
サウンザードから来ている魔術師…銀の妖精か。
絶対にエミリア様とレイニード様のことだな。
見た者は二人とも銀の髪だから兄妹だと思ったのだろう。
妖精だと言ってしまいたくなる気持ちはよくわかる。
俺も最初に会った時には思わず人間なのか疑ってしまっていた。
令嬢のエミリア様だけならともかく、
隣に対になるくらい綺麗なレイニード様までいたからだ。
めずらしい銀髪というだけじゃなく別格の美しさに圧倒された。
あの二人は別世界の住人なんじゃないかと思った。
ルリナからは聞いたことがあった。
魔術師科のお友達、エミリア様とレイニード様。
魔術師科だが貴族の出で、将来は侯爵家を継ぐ二人だという。
しかもエミーレ様の子孫、エンドソン家!
ルリナはお友達だと言っていたが、会ったこともない俺には想像するしかない。
とても綺麗な令嬢だけど、強くて優しい人よ、なんて言われても。
俺にとって一番綺麗な女はルリナで。
正直言ってルリナよりも美人で強い魔術師なんているわけないと思っていた。
そんな気持ちもエミリア様に会ったら、簡単にふっとんだけど。
さすがに既婚者のエミリア様に思いを寄せるわけはないけれど、
ルリナだけじゃないって気が付かせてもらえたことは大きい。
ルリナの隣にはずっとファルカがいて、俺は三つも年下で。
敵わないのはわかっていたけど、簡単に認めるのは嫌だった。
ルリナとファルカが結婚した後も、素直に負けを認めるのは悔しかった。
ジンガ国に行けば何か変われるんじゃないかって思って留学を決めたけど、
その前にエミリア様とレイニード様と旅を一緒にできたことで、
見えるものが変わったように思う。
なんだ、サウンザードの魔術師科にいても強い魔術師になれるんだ。
一瞬そう思ったけど、それは違う。この二人は特別なんだ。
そして、この二人がジンガ国に行くというのなら、
国を出ようとした俺の行動は正解だったことになる。
サウンザードにいたままなら、会うことすらできなかったのだから。
「さっさと声掛けないと、また王族に持っていかれるかもな。」
「ホントだよ。美人な魔術師はすぐに王族に持っていかれる。
声かけて仲良くなって…あぁ、嫁に来てくれないかな。」
嫁…。エミリア様を…嫁。いや、どう考えても無理だろ。
さすがに止めておくか。
隣の奴らに向かって声をかける。
「なぁ、その銀の妖精、サウンザードから来ている魔術師なら、
もうすでに結婚しているぞ。」
「「は?」」
「その銀の妖精は兄妹じゃなくて、夫婦なんだ。
しかも、その二人は貴族だから…気を付けたほうがいいよ。」
「マジか…兄妹じゃなかったのか。」
「あぁ、お前、そういえばサウンザードからの留学生か。
それで銀の妖精のことを知ってるのか。
…貴族か。声かける前に教えてくれてありがとう。
下手に関わったらまずかったな。」
「いや、わかってくれたならいいよ。」
…銀の妖精の噂、レイニード様には伝えておくか。
結婚したっていうのに寄ってくる虫がいるとは、レイニード様も大変だな。
美人で強い魔術師を嫁にするつもりだったけど、考え直そうかな…。
「なにそれ、銀の妖精?」
「あぁ、サウンザードから来ている兄妹の魔術師なんだが…。
二人とも輝くようなサラサラの銀の髪が特徴で、
森の中で魔術書を読んでいるとまるで妖精のように美しいんだと。
特に妹のほうは…魔術書を読み終えると…
うれしそうに微笑むらしくて、それに見惚れる奴が続出しているんだ。
あまりに見惚れすぎて、持っていた魔術書が逃げてしまったって。」
「なんだそれ。すごいな。
魔術書がすねるくらい心を持っていかれたってことか。
図書の森に入館できるってことは、かなり優秀な魔術師なんだろ?
その上、妖精と間違えられるほどの美しさか…見てみたいな。
よし、今度図書の森の近くで待ち伏せしてみよう。」
魔術師学校の昼の休憩時間、
食堂で食事を取っていたら隣に座っていた奴らの話が聞こえた。
サウンザードから来ている魔術師…銀の妖精か。
絶対にエミリア様とレイニード様のことだな。
見た者は二人とも銀の髪だから兄妹だと思ったのだろう。
妖精だと言ってしまいたくなる気持ちはよくわかる。
俺も最初に会った時には思わず人間なのか疑ってしまっていた。
令嬢のエミリア様だけならともかく、
隣に対になるくらい綺麗なレイニード様までいたからだ。
めずらしい銀髪というだけじゃなく別格の美しさに圧倒された。
あの二人は別世界の住人なんじゃないかと思った。
ルリナからは聞いたことがあった。
魔術師科のお友達、エミリア様とレイニード様。
魔術師科だが貴族の出で、将来は侯爵家を継ぐ二人だという。
しかもエミーレ様の子孫、エンドソン家!
ルリナはお友達だと言っていたが、会ったこともない俺には想像するしかない。
とても綺麗な令嬢だけど、強くて優しい人よ、なんて言われても。
俺にとって一番綺麗な女はルリナで。
正直言ってルリナよりも美人で強い魔術師なんているわけないと思っていた。
そんな気持ちもエミリア様に会ったら、簡単にふっとんだけど。
さすがに既婚者のエミリア様に思いを寄せるわけはないけれど、
ルリナだけじゃないって気が付かせてもらえたことは大きい。
ルリナの隣にはずっとファルカがいて、俺は三つも年下で。
敵わないのはわかっていたけど、簡単に認めるのは嫌だった。
ルリナとファルカが結婚した後も、素直に負けを認めるのは悔しかった。
ジンガ国に行けば何か変われるんじゃないかって思って留学を決めたけど、
その前にエミリア様とレイニード様と旅を一緒にできたことで、
見えるものが変わったように思う。
なんだ、サウンザードの魔術師科にいても強い魔術師になれるんだ。
一瞬そう思ったけど、それは違う。この二人は特別なんだ。
そして、この二人がジンガ国に行くというのなら、
国を出ようとした俺の行動は正解だったことになる。
サウンザードにいたままなら、会うことすらできなかったのだから。
「さっさと声掛けないと、また王族に持っていかれるかもな。」
「ホントだよ。美人な魔術師はすぐに王族に持っていかれる。
声かけて仲良くなって…あぁ、嫁に来てくれないかな。」
嫁…。エミリア様を…嫁。いや、どう考えても無理だろ。
さすがに止めておくか。
隣の奴らに向かって声をかける。
「なぁ、その銀の妖精、サウンザードから来ている魔術師なら、
もうすでに結婚しているぞ。」
「「は?」」
「その銀の妖精は兄妹じゃなくて、夫婦なんだ。
しかも、その二人は貴族だから…気を付けたほうがいいよ。」
「マジか…兄妹じゃなかったのか。」
「あぁ、お前、そういえばサウンザードからの留学生か。
それで銀の妖精のことを知ってるのか。
…貴族か。声かける前に教えてくれてありがとう。
下手に関わったらまずかったな。」
「いや、わかってくれたならいいよ。」
…銀の妖精の噂、レイニード様には伝えておくか。
結婚したっていうのに寄ってくる虫がいるとは、レイニード様も大変だな。
美人で強い魔術師を嫁にするつもりだったけど、考え直そうかな…。
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