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7章 運命の日
26.幼い記憶
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「眠くない?大丈夫?」
部屋に入ってきたレイニードの手には何かを持っている。
薄暗闇の中で目を凝らしてみると、どうやらいつも着ているローブのようだ。
「とりあえず、これ着て?」
「…私のローブ??」
どうしてだろうと思いがらも渡されたローブを着ると、レイニードもローブを着ている。
ローブの中は夜着で、誰かに会えるような服装ではない。
なのに、このまま外に連れ出そうというのだろうか?
「これからどこかに行くの?」
「ちょっとだけね。」
レイニードに抱き上げられ、次の瞬間で転移したのがわかった。
周りを見ると外のようだ。
暗闇に目が慣れたころ、ここがどこか分かった。
うちの家の修練場の奥にある庭園、
子どもの頃にレイニードとライニードとかくれんぼをした場所。
大きくなってからはこんなに奥まで来ることはなくなっていた。
その場所に、ふわりと浮かんでいた。
二人とも靴を履いていないからか、レイニードに浮遊をかけられているようだ。
「どうしてここに?」
「うん、どこがいいかなって思って…結局ここしかないと思ったんだ。」
「え?」
ここしかない?この庭園にいったい何が?
「覚えていないかな。
小さいころ、エミリアと遊んで…公爵家に帰りたくないって逃げた時。
ここに隠れていたのを見つけてくれたのはエミリアだった。」
そう言われてみて思い出した。
聞き分けのいいライニードと違って、レイニードはよく泣いていた。
まだ遊びたい、エミリアといたい、家に帰りたくない。
そう言ってカリーナおばさまを困らせていた。
あれ…レイニードはいつから泣かなくなった?
私、覚えているはず…そうだ。ここで話したんだ。
あの約束をしてから、レイニードは泣かなくなった。
「思い出したわ。泣いて隠れてたレイニードと約束したの。」
「思い出してくれて良かった。
…でも、もう一度ちゃんと言わせて。
何度も失敗してしまったのはわかってる。
だけど、どうしてもエミリアがいい。エミリアといたいんだ。」
あの時、帰りたくないと言って逃げ出したレイニードは、
この庭園の木の上に隠れていた。
ライニードはほっといていいよと言っていたが、
そうもいかずエミリアが探しに来たのだ。
見つけたのが私だとわかるとすぐに降りてきたが、
エミリアと一緒にいたいから今すぐ結婚したいって言ったレイニードに、
私より大きくなって強くなったらねと約束していた。
「この先の人生は、やり直しとは関係ない。
エミリアを自由にしてあげたほうがいいのかもしれないと悩んだ。
だけど、何度やり直したとしても、エミリアを愛している。
いろいろ情けない俺だけど、それだけは変わらない自信がある。
もっと強くなるから…これからもエミリアを守らせてほしい。
俺と結婚してください。」
私の頬に手を当て、じっと目を見つめてくるレイニードに、思わず口にしたのは…。
「いやよ。」
「え?」
「守られるだけは嫌。私もレイニードを守るの。
…それなら、ずっと一緒にいるわ。」
「エミリア!!良かった…断られるかと思った。」
断ろうとか焦らそうとか思ったわけじゃなかったけれど、
考えるより先に言葉が出ていた。
「あ、本当ね。誤解させてごめんなさい?」
「いや、いいよ。そういうところも好きだよ。」
額に軽くくちづけされ、抱き寄せられる。
その胸に腕をのばして抱きしめると、もう少しだけ強い力で抱きしめ返してくれた。
「レイニード、大好き…。」
「うん、うれしい。ありがとう。」
そこでどのくらい抱きしめ合っていたのか、先に気が付いたのはレイニードだった。
「ごめん…こんなとこに長居しちゃダメだったな。
部屋に戻ろう?送るよ?」
「今日は一緒に寝ないの?」
なんとなく離れたくなくてそう言ったら、
レイニードが困った顔になった。
「レイニード?」
一瞬で私の部屋に転移した後、扉の前でもう一度私を抱きしめた。
「次、同じ寝台で寝るって言ったら、抱くよ?」
「え?」
そのまま出て行ってしまったレイニードに呆然としていたが、
言葉の意味を理解して…慌てて寝台の中に逃げ込んだ。
卒業してしまったからには、待たせる理由なんてないことに、
その時になってようやく気が付いた。
部屋に入ってきたレイニードの手には何かを持っている。
薄暗闇の中で目を凝らしてみると、どうやらいつも着ているローブのようだ。
「とりあえず、これ着て?」
「…私のローブ??」
どうしてだろうと思いがらも渡されたローブを着ると、レイニードもローブを着ている。
ローブの中は夜着で、誰かに会えるような服装ではない。
なのに、このまま外に連れ出そうというのだろうか?
「これからどこかに行くの?」
「ちょっとだけね。」
レイニードに抱き上げられ、次の瞬間で転移したのがわかった。
周りを見ると外のようだ。
暗闇に目が慣れたころ、ここがどこか分かった。
うちの家の修練場の奥にある庭園、
子どもの頃にレイニードとライニードとかくれんぼをした場所。
大きくなってからはこんなに奥まで来ることはなくなっていた。
その場所に、ふわりと浮かんでいた。
二人とも靴を履いていないからか、レイニードに浮遊をかけられているようだ。
「どうしてここに?」
「うん、どこがいいかなって思って…結局ここしかないと思ったんだ。」
「え?」
ここしかない?この庭園にいったい何が?
「覚えていないかな。
小さいころ、エミリアと遊んで…公爵家に帰りたくないって逃げた時。
ここに隠れていたのを見つけてくれたのはエミリアだった。」
そう言われてみて思い出した。
聞き分けのいいライニードと違って、レイニードはよく泣いていた。
まだ遊びたい、エミリアといたい、家に帰りたくない。
そう言ってカリーナおばさまを困らせていた。
あれ…レイニードはいつから泣かなくなった?
私、覚えているはず…そうだ。ここで話したんだ。
あの約束をしてから、レイニードは泣かなくなった。
「思い出したわ。泣いて隠れてたレイニードと約束したの。」
「思い出してくれて良かった。
…でも、もう一度ちゃんと言わせて。
何度も失敗してしまったのはわかってる。
だけど、どうしてもエミリアがいい。エミリアといたいんだ。」
あの時、帰りたくないと言って逃げ出したレイニードは、
この庭園の木の上に隠れていた。
ライニードはほっといていいよと言っていたが、
そうもいかずエミリアが探しに来たのだ。
見つけたのが私だとわかるとすぐに降りてきたが、
エミリアと一緒にいたいから今すぐ結婚したいって言ったレイニードに、
私より大きくなって強くなったらねと約束していた。
「この先の人生は、やり直しとは関係ない。
エミリアを自由にしてあげたほうがいいのかもしれないと悩んだ。
だけど、何度やり直したとしても、エミリアを愛している。
いろいろ情けない俺だけど、それだけは変わらない自信がある。
もっと強くなるから…これからもエミリアを守らせてほしい。
俺と結婚してください。」
私の頬に手を当て、じっと目を見つめてくるレイニードに、思わず口にしたのは…。
「いやよ。」
「え?」
「守られるだけは嫌。私もレイニードを守るの。
…それなら、ずっと一緒にいるわ。」
「エミリア!!良かった…断られるかと思った。」
断ろうとか焦らそうとか思ったわけじゃなかったけれど、
考えるより先に言葉が出ていた。
「あ、本当ね。誤解させてごめんなさい?」
「いや、いいよ。そういうところも好きだよ。」
額に軽くくちづけされ、抱き寄せられる。
その胸に腕をのばして抱きしめると、もう少しだけ強い力で抱きしめ返してくれた。
「レイニード、大好き…。」
「うん、うれしい。ありがとう。」
そこでどのくらい抱きしめ合っていたのか、先に気が付いたのはレイニードだった。
「ごめん…こんなとこに長居しちゃダメだったな。
部屋に戻ろう?送るよ?」
「今日は一緒に寝ないの?」
なんとなく離れたくなくてそう言ったら、
レイニードが困った顔になった。
「レイニード?」
一瞬で私の部屋に転移した後、扉の前でもう一度私を抱きしめた。
「次、同じ寝台で寝るって言ったら、抱くよ?」
「え?」
そのまま出て行ってしまったレイニードに呆然としていたが、
言葉の意味を理解して…慌てて寝台の中に逃げ込んだ。
卒業してしまったからには、待たせる理由なんてないことに、
その時になってようやく気が付いた。
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