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7章 運命の日

21.帰り道

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馬車に乗って学園から出て、ようやくレイニードに話をする。
ずっと気になっていたけれど、学園内で話していいことではないように思っていた。
ビクトリア様の会話が聞こえていた学園長なら、
私たちの会話も聞こえているかもしれない。

さすがに学園から離れた馬車の中なら大丈夫だろう。

「…あのね、レイニード。」

「ん?どうした?」

「さっきの、学園長室での話の途中、ビクトリア様の名前が出た時に、
 学園長からぶわっと殺気のような魔力が出たでしょう?」

「あぁ。あれは焦った。
 騎士団の中でもあんな殺気をぶつけてくるような人はいない。
 急にそんなことになると思わなくて、思わずエミリアの前に出てた。」

「…あの殺気のような魔力…前に学園内で感じていたのと同じだった。」

「あれか。前にエミリアが気になるって言ったやつか。
 そうか、学園長の魔力だったんだ。
 確かにあれは気になるよな…。」

そのこともそうだが、もっと気になることがあった。
あの魔力を感じたのは学園内だけではなかった。
それを口に出すのが怖くて…ためらったが、ゆっくりと口を開いた。

「それでね…あの日、夜会の帰るときに遠くに煙が見えた時も、
 王宮内からかすかにあの殺気と魔力を感じた気がするの。」

「…どういうことだ?
 学園長が王宮に行くことなんて無いって聞いてるぞ。
 さっきも王宮にはかかわらないって…。」

事の重大さに気が付いたのか、レイニードの顔色が変わった。
考えれば考えるだけ、このことがまずいのがわかる。
どうしよう。こんなこと、知らなければ良かったのかもしれない。

「…私、あの魔力の持ち主が学園長だって知らなかったけど、
 なんとなくビクトリア様が亡くなったのはその人がしたんじゃないかと思ってて。
 魔術師協会の誰かなんじゃないかって思ってたの。」

「…俺も、ビクトリア王女が死んだのは魔術師協会が何かしたんだと思ってた。
 だから気になっていたけど、魔術師協会に聞くのはやめていたんだ。」

やっぱりレイニードも同じように考えていたようだ。
お父様と話をした後、レイニードが魔術師協会に問い合わせている様子はなかった。
いつもなら真っ先に聞きに行くと思うのに。

「そうよね。
 レイニードが魔術師協会に聞きに行こうって言わないのは、
 私と同じことを考えているんだと思ってた。
 だけど、もし、ビクトリア様に手を下したのが学園長だったとしたら。」

「一度リグレット魔術師長に確認しに行ったほうがいいな。
 エリザベスの家で何かしているって言ってたし。
 明日にでも行ってみるか。」

「ええ。」

卒業が決まって喜ぶ日なはずなのに、心に大きな疑問が残ったまま。
レイニードと話し合って、
両親に卒業を伝えるのはこの件がすべて片付いてからにしようと決めた。


「あ、そういえばジンガ国の図書の森の話をしていた時、何か考え事していた?」

「ああ、うん。そんな顔していた?」

「ええ、話を聞いていないんじゃないかと思うくらいだったわ?」

「…一応は聞いていたよ。
 そうだな…もう少し考えがまとまるまで待っていてくれないか?
 エミリアにはちゃんと話すから。」

「?…わかったわ。待てばいいのね?」


レイニードが何を悩んでいるのかはわからないが、話してくれるというのなら待っていよう。
ガタゴト揺れる馬車の中、家まで会話のない時間が続いた。
それでもつなぐ手は暖かくて、ゆったりとした時間は嫌ではなかった。

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