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7章 運命の日

5.犯行を暴く

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レイニードが休憩室の鍵を一瞬で壊してドアを開けると、
大きな寝台の真ん中にジュリアは寝かされいた。

いつもは綺麗に整えられている黒髪は乱れ、
のしかかるように両手と両足を令息たちに押さえつけられていた。
赤いドレスは肩から破かれ、白い胸があらわになっている。
足元も太ももまでまくりあげられていた。

「うわ!なんだお前たち!勝手に入ってくるな!」

「出て行けよ!」

犯行を見られた令息たちが慌ててジュリアを離し、
レイニードを部屋から出て行かせようとする。
寝台から降りて向かってきた令息たちに、
レイニードが容赦なく蹴りを入れて壁まで飛ばしているすきに、
寝台の上のジュリアのそばへと駆け寄った。

すぐさま着崩れたドレスを直そうとしたけれど、
あちこちを破られていて下着も取り払われていた。
とりあえず隠そうと近くにあった毛布をかけてあげると、
ジュリアは力なく私を見上げてくる。

私をきちんと見えていないのかと思うほど、視点があっていない感じがした。
化粧は泣き崩れていて、叩かれたのか左頬が腫れて口の端が切れている。
令息たちにどう扱われていたのかがわかる有様だった。
暴れて体力も気力もなくなるまで抵抗したのか、
ぐったりとしたままで動けないようだった。

「もう大丈夫よ…。」

「…ぅぅ…うわぁ…!」

震えながら泣き始めたジュリアを毛布で包み、ゆっくりと抱き起す。
背中をさするが一向に泣き止む気配はない。
こんな目に遭ったとしたら落ち着いてと言っても無理だろう。
未遂ではあるが、確実に心に傷を負ったに違いない。

そうしている間にもレイニードが令息たちを容赦なく蹴り倒し、
気を失ったものをロープで縛りあげていく。
一人、二人と倒されていき、最後の一人はあきらめたのかしゃがみこんだ。

縛り上げられた令息の顔が見えたが、どの令息も見覚えがない。
おそらく貴族科一年の令息たちだと思うけれど、
王女のためだとはいえどうしてこんなひどいことができるのだろう。

レイニードが最後の令息を縛り上げたところで護衛騎士が駆け付け、
令息たちを担ぎ上げるようにしてどこかへ連れて行った。
リグレット魔術師長が話していた騎士団なのかもしれない。
それならば証拠を隠滅されないうちに調べてくれるだろう。

まだ泣き続けているジュリアをなだめていると、
私のそばには二人の女官が来ていた。

「エミリア様…ここは私たちにお任せください。」

「お急ぎください。まだ終わっていません。
 もう一人のほうは、中庭の奥のほうへ逃げたようです。」

そう声をかけられてハッとする。
耳打ちしてくれた女官はリグレット魔術師長の手のものだった。
こんな状態のジュリアを置いていくのは気が引けるが、もうすでに保護している。
今は早くエリザベスを助けに行く必要がある。
この先は女官たちにまかせて、早く治療してもらったほうがいい。

「わかりました。
 彼女を頼みます。」

レイニードを見ると、そちらも護衛騎士に最後の一人を引き渡していた。

「よし、行こう。」

「ええ。中庭の奥へ行ったそうよ。急ぎましょう!」

レイニードが差し出してくれた手をとって中庭へと急ぐ。
令嬢がこんな風に全力で走るなんてはしたないと言われそうではあるが、
幸い中庭に出る廊下には誰もおらず見つかることは無かった。
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