136 / 167
7章 運命の日
4.危機
しおりを挟む
「あ、来たわ。」
ビクトリア様が令嬢を何人か引き連れて広間に入ってくる。
緑色のドレス。両肩が出ている大胆なもので、
長身で細身のビクトリア様の魅力を良く引き出している。
金色の髪は片側にまとめ、緩い縦巻きにして流してあった。
そのビクトリア様がライニードを見つけ近づいていく。
微笑んでいるが、どこか敵対しているような雰囲気もある。
…ビクトリア様はライニードに惚れているわけではなさそうだ。
「ねぇ、ビクトリア様のライニードを見る目がちょっとおかしくない?」
「少なくとも友好的には見えないよな…?」
「だよねぇ。」
婚約を申し込んで断られたことで腹が立っているのかもしれない。
もしかして、その八つ当たりでエリザベスたちに何かしようとしている?
今もライニードに話しかけてはいるが、腕を組んでいて挑発的に見える。
それに対してライニードはいつも通りのんびりと応えているようで、
それがよけいにイラつかせているように見えた。
後ろの令嬢たちも口をはさめず、ただじっと二人の会話を聞いているだけだった。
…あれ。令嬢たち、だけ?
「…ビクトリア様の取り巻きって、令息のほうが多かったわよね?」
「そのはずだが、一人もいないな。
…もしかしてもう動いているのか?」
「ライニードも心配ではあるけど、どうしよう。」
ライニードとビクトリア様の周りにはたくさんの人がいる。
この場で何かするとは思えない。
むしろ、この場にいない二人のほうが心配になった。
動くべきか悩んでいるとすぐ後ろから女性の声が聞こえた。
「休憩室付近で何か起きたようです。」
人の気配はなかったはずなのにと驚いて振り向くと、そこには誰もいなかった。
「レイニード、今の?」
「リグレット魔術師長の監視からの連絡かもしれない。
行ってみよう!」
そっとその場を離れ、広間から外に出る。
まだ夜会の中盤に差し掛かったところで、休憩室に行く人は少ない。
この先の廊下を曲がったら休憩室というところで、一人の令息がいるのに気が付いた。
きょろきょろと辺りを見渡して、何か焦っているように見える。
茶色の髪と目…だけど、見たことのある令息?
あれはもしかして!レイニードも気が付いたようで、令息に声をかけた。
「もしかしてジルレッド王子ですか?
ジングラッド先輩の後輩でレイニードと申します。」
「ああ!兄さんから聞いている!
どうしよう!俺、見てしまって!」
ジングラッド先輩と同じ顔だが、幼い感じの声だった。
まだ貴族科二年、16歳になったばかりなはず。
卒業したジングラッド先輩と比べて幼く感じるのも無理はない。
「何かあったのですか?」
「令嬢が二人、令息たちに連れていかれたんだ!別々のほうに!
一人はこの奥の休憩室に。ジュリアって令嬢だ。
もう一人は途中で手を振りほどいて逃げて、追いかけられてた。
エリザベスって伯爵家の令嬢!
俺が直接助けに行くわけにもいかなくて、でもこの辺に護衛騎士がいないんだ。
誰に助けを求めたらいいのかわからなくて!」
「…っ!わかりました!
とりあえず、ジュリアのほうはどこの部屋かわかりますか!?」
「入って左、奥から二番目の部屋!
令息三人に引きずられていったんだ!」
「わかりました!
私たちで救出に行きます。
王子は護衛騎士か女官を探してもらえますか!?」
「わかった!」
急がなければ!
もう部屋に連れられて行ったのなら、止めてもいいはず。
そう思ってレイニードを見ると、確認するから少し待ってと言われる。
部屋の前でレイニードが中の気配を探ると、眉をひそめる。
「…中に入ったら俺が令息を拘束する。
その間、エミリアはジュリアのほうに助けに行って。」
「わかった!」
ビクトリア様が令嬢を何人か引き連れて広間に入ってくる。
緑色のドレス。両肩が出ている大胆なもので、
長身で細身のビクトリア様の魅力を良く引き出している。
金色の髪は片側にまとめ、緩い縦巻きにして流してあった。
そのビクトリア様がライニードを見つけ近づいていく。
微笑んでいるが、どこか敵対しているような雰囲気もある。
…ビクトリア様はライニードに惚れているわけではなさそうだ。
「ねぇ、ビクトリア様のライニードを見る目がちょっとおかしくない?」
「少なくとも友好的には見えないよな…?」
「だよねぇ。」
婚約を申し込んで断られたことで腹が立っているのかもしれない。
もしかして、その八つ当たりでエリザベスたちに何かしようとしている?
今もライニードに話しかけてはいるが、腕を組んでいて挑発的に見える。
それに対してライニードはいつも通りのんびりと応えているようで、
それがよけいにイラつかせているように見えた。
後ろの令嬢たちも口をはさめず、ただじっと二人の会話を聞いているだけだった。
…あれ。令嬢たち、だけ?
「…ビクトリア様の取り巻きって、令息のほうが多かったわよね?」
「そのはずだが、一人もいないな。
…もしかしてもう動いているのか?」
「ライニードも心配ではあるけど、どうしよう。」
ライニードとビクトリア様の周りにはたくさんの人がいる。
この場で何かするとは思えない。
むしろ、この場にいない二人のほうが心配になった。
動くべきか悩んでいるとすぐ後ろから女性の声が聞こえた。
「休憩室付近で何か起きたようです。」
人の気配はなかったはずなのにと驚いて振り向くと、そこには誰もいなかった。
「レイニード、今の?」
「リグレット魔術師長の監視からの連絡かもしれない。
行ってみよう!」
そっとその場を離れ、広間から外に出る。
まだ夜会の中盤に差し掛かったところで、休憩室に行く人は少ない。
この先の廊下を曲がったら休憩室というところで、一人の令息がいるのに気が付いた。
きょろきょろと辺りを見渡して、何か焦っているように見える。
茶色の髪と目…だけど、見たことのある令息?
あれはもしかして!レイニードも気が付いたようで、令息に声をかけた。
「もしかしてジルレッド王子ですか?
ジングラッド先輩の後輩でレイニードと申します。」
「ああ!兄さんから聞いている!
どうしよう!俺、見てしまって!」
ジングラッド先輩と同じ顔だが、幼い感じの声だった。
まだ貴族科二年、16歳になったばかりなはず。
卒業したジングラッド先輩と比べて幼く感じるのも無理はない。
「何かあったのですか?」
「令嬢が二人、令息たちに連れていかれたんだ!別々のほうに!
一人はこの奥の休憩室に。ジュリアって令嬢だ。
もう一人は途中で手を振りほどいて逃げて、追いかけられてた。
エリザベスって伯爵家の令嬢!
俺が直接助けに行くわけにもいかなくて、でもこの辺に護衛騎士がいないんだ。
誰に助けを求めたらいいのかわからなくて!」
「…っ!わかりました!
とりあえず、ジュリアのほうはどこの部屋かわかりますか!?」
「入って左、奥から二番目の部屋!
令息三人に引きずられていったんだ!」
「わかりました!
私たちで救出に行きます。
王子は護衛騎士か女官を探してもらえますか!?」
「わかった!」
急がなければ!
もう部屋に連れられて行ったのなら、止めてもいいはず。
そう思ってレイニードを見ると、確認するから少し待ってと言われる。
部屋の前でレイニードが中の気配を探ると、眉をひそめる。
「…中に入ったら俺が令息を拘束する。
その間、エミリアはジュリアのほうに助けに行って。」
「わかった!」
161
お気に入りに追加
6,633
あなたにおすすめの小説

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?
つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです!
文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか!
結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。
目を覚ましたら幼い自分の姿が……。
何故か十二歳に巻き戻っていたのです。
最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。
そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか?
他サイトにも公開中。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

【完結済み】婚約破棄致しましょう
木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。
運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。
殿下、婚約破棄致しましょう。
第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。
応援して下さった皆様ありがとうございます。
リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる