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7章 運命の日
3.ライニードの相手
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ライニードのそばに行くと、ライニードのほうから近づいてくる。
人の少ない場所で話をしたいようだ。
歓談席の奥、布で区切られている席まで行くと、小声で報告される。
「エリザベスから受け取った飲み物に何か入ってた。
ペンダントが熱くなったよ。」
「やっぱり…エリザベスは何か言ってた?」
「これ。」
それは小さな紙片だった。
"二人きりで話がしたいので休憩室に行きませんか?
夜会の間、休憩室付近の廊下でお待ちしています。"
そう書いてあった。
「…この手紙を見ると、使われた薬は媚薬だったのかと思うけど。」
「ついでにジュリアにも同じことを言われたよ。
休憩室の近くの廊下で待ってます、だってさ。」
さきほどジュリアが耳元で言ってたのはそれだったのか。
「ねぇ…休憩室付近で二人ばったり会ったら喧嘩になってないかしら。」
「ありうるな~。」
「…俺が行かないとわかったら、二人とも広間に戻ってきそうだけど。」
「戻ってきたらきたで揉めそうね。」
「まぁ、その辺はうまくやるよ。
俺は相手するなんて一度も言ってないからね。
もちろん直接誘われるようなことがあればはっきりと断るよ。」
それはそうかもしれないけれど、それで納得するような子たちかしら。
ライニードの話は聞かずに二人で取り合いするような場面が想像できた。
「ビクトリア様は話しかけに来た?」
「ビクトリア様は今日が夜会デビューだろう?
まずは王族として当主たちのほうに挨拶に行ってるはずだよ。
こっちに来るのはもう少し後になるんじゃないかな。
…ダンスするように遠回しに誘われたけど、断ったよ。」
「なんて言って断ったの?」
「…初めてのダンスは恋人と踊る約束をしていますって。」
「「…。」」
ミリーナ様とそんな約束をしていたなんて。
耳が赤くなったライニードに、ミリーナ様とは順調なんだと安心する。
だけど、そう断られたビクトリア様の反応はどうだったんだろう。
「それって、断って大丈夫だったの?」
「陛下からもジョージア様からも、
その気がないならはっきり断っていいって言われている。
むしろ思わせぶりなことをすると揉めるだろうって。
ダンスを踊ったりしたら婚約したなんて言い出しかねないからね。」
「あぁ、それもそうか。」
「確かに言われかねないわね。」
「だからこの後も広間にはいるけど、誰の誘いにも乗らずにいるよ。
下手に姿を消すと噂になりそうだしね。
人の目につくところにいることにするよ。」
「そのほうがいいな。
俺たちは離れるけど、遠くから見ているから。
何かあればすぐに駆け付けるよ。」
「ああ、ありがとう。助かるよ。」
レイニードとその場を離れると、
令嬢たちがライニードを遠巻きに見ているのがわかった。
声をかけるのは無理でも、近くで見ていたいのだろう。
婚約者がいない公爵家嫡男、銀の貴公子に近づきたいのはエリザベスたちだけじゃない。
ミリーナ様のことがわかってもあきらめきれない人もいるだろう。
その視線に気が付いているのかいないのか、
ライニードは近くにいた令息たちと談笑している。
その笑顔はエリザベスたちに向けていたのと全く同じで、
誰から見ても気がないのだとわかるようなものだった。
「少し見てたらわかるのにね。」
「ん?」
「ライニードが令嬢たちに見せる笑顔と令息たちに見せる笑顔、まったく同じだわ。
これほどはっきりと気がないのがわかるのに…。」
「自分に自信がある令嬢ほど勘違いするんだろう。
私に惚れないわけがないとか思ってそうだしな…。」
「なるほどね…。」
そんなことを話していると広間の入り口付近がざわつき始めた。
人が多くてここからは見えないけれど、もしかしたらビクトリア様が来た?
人の少ない場所で話をしたいようだ。
歓談席の奥、布で区切られている席まで行くと、小声で報告される。
「エリザベスから受け取った飲み物に何か入ってた。
ペンダントが熱くなったよ。」
「やっぱり…エリザベスは何か言ってた?」
「これ。」
それは小さな紙片だった。
"二人きりで話がしたいので休憩室に行きませんか?
夜会の間、休憩室付近の廊下でお待ちしています。"
そう書いてあった。
「…この手紙を見ると、使われた薬は媚薬だったのかと思うけど。」
「ついでにジュリアにも同じことを言われたよ。
休憩室の近くの廊下で待ってます、だってさ。」
さきほどジュリアが耳元で言ってたのはそれだったのか。
「ねぇ…休憩室付近で二人ばったり会ったら喧嘩になってないかしら。」
「ありうるな~。」
「…俺が行かないとわかったら、二人とも広間に戻ってきそうだけど。」
「戻ってきたらきたで揉めそうね。」
「まぁ、その辺はうまくやるよ。
俺は相手するなんて一度も言ってないからね。
もちろん直接誘われるようなことがあればはっきりと断るよ。」
それはそうかもしれないけれど、それで納得するような子たちかしら。
ライニードの話は聞かずに二人で取り合いするような場面が想像できた。
「ビクトリア様は話しかけに来た?」
「ビクトリア様は今日が夜会デビューだろう?
まずは王族として当主たちのほうに挨拶に行ってるはずだよ。
こっちに来るのはもう少し後になるんじゃないかな。
…ダンスするように遠回しに誘われたけど、断ったよ。」
「なんて言って断ったの?」
「…初めてのダンスは恋人と踊る約束をしていますって。」
「「…。」」
ミリーナ様とそんな約束をしていたなんて。
耳が赤くなったライニードに、ミリーナ様とは順調なんだと安心する。
だけど、そう断られたビクトリア様の反応はどうだったんだろう。
「それって、断って大丈夫だったの?」
「陛下からもジョージア様からも、
その気がないならはっきり断っていいって言われている。
むしろ思わせぶりなことをすると揉めるだろうって。
ダンスを踊ったりしたら婚約したなんて言い出しかねないからね。」
「あぁ、それもそうか。」
「確かに言われかねないわね。」
「だからこの後も広間にはいるけど、誰の誘いにも乗らずにいるよ。
下手に姿を消すと噂になりそうだしね。
人の目につくところにいることにするよ。」
「そのほうがいいな。
俺たちは離れるけど、遠くから見ているから。
何かあればすぐに駆け付けるよ。」
「ああ、ありがとう。助かるよ。」
レイニードとその場を離れると、
令嬢たちがライニードを遠巻きに見ているのがわかった。
声をかけるのは無理でも、近くで見ていたいのだろう。
婚約者がいない公爵家嫡男、銀の貴公子に近づきたいのはエリザベスたちだけじゃない。
ミリーナ様のことがわかってもあきらめきれない人もいるだろう。
その視線に気が付いているのかいないのか、
ライニードは近くにいた令息たちと談笑している。
その笑顔はエリザベスたちに向けていたのと全く同じで、
誰から見ても気がないのだとわかるようなものだった。
「少し見てたらわかるのにね。」
「ん?」
「ライニードが令嬢たちに見せる笑顔と令息たちに見せる笑顔、まったく同じだわ。
これほどはっきりと気がないのがわかるのに…。」
「自分に自信がある令嬢ほど勘違いするんだろう。
私に惚れないわけがないとか思ってそうだしな…。」
「なるほどね…。」
そんなことを話していると広間の入り口付近がざわつき始めた。
人が多くてここからは見えないけれど、もしかしたらビクトリア様が来た?
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