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6章 やり直しの世界

11.レイニードの心配

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「ビクトリア王女に動きがあった。」

「「!?」」

「これは情報と言っていいのかわからない。
 魔術師協会に匿名の者から魔石が届いた。
 どうやら王女の会話を記録したものらしい。
 さすがにすべての会話を記録できなかったようだが、
 それでも何を企んでいるのかはわかった。
 三週間後の新年を祝う夜会の最中、
 取り巻きの者を使って嫌がらせをしようとしているようだ。
 相手はエリザベス・リンデとジュリア・ニール。
 理由はライニードに近寄るのが面白くないからだと。」


それを聞いてため息が出る。
やはりビクトリア様の性格は変わらなかったようだ。
貴族が一堂にそろう夜会で騒ぎを起こせば、
卒業を待たずに廃嫡されることになるだろう。
ただでさえ評判が悪かった上に、側妃様の子だということがわかって、
側妃様のことを恨んでいるものたちからも狙われている。

「ビクトリア様は私の時と同じことを二人にすると思いますか?」

「この会話では具体的なことは言っていなかった。
 ただ痛い目に遭わせておとなしくさせたいとだけ。
 もしかしたら王女が指示をするのではなく、
 令息たちが勝手に動くのかもしれないが…。」

「それって、ビクトリア様の罪にはならないということでしょうか?」

「普通ならな。
 ただ、この魔石がある以上、言い逃れはできないだろう。
 おそらくこれを送ってきたものは魔術師だ。
 匿名で送ってきたところをみると、魔術師協会の者ではないのだろう。
 王宮魔術師なのかもしれないな。
 その者はきっと王女を追い詰めるために証拠集めをしている。
 できれば正体を明かして協力してもらいたいが…。
 その者にも何か事情があるに違いない。
 魔石を送ってくれただけでもありがたい。」


「…その件を未遂で終わらせた場合は、
 ビクトリア様を罪に問えますか?」

「未遂のタイミングにもよるな。
 完全に計画をつぶすのはダメだ。
 令息たちが実行した後で助けるのはかまわないよ。
 さすがに知り合いがそういう目に遭うのを放っておくのは嫌だろう。」

「エミリアはそうでしょうね。
 俺にとっては一人は嫌いな人間だし、
 もう一人は迷惑をかけられた者です。
 どうなっても知らなかったことにできますが…。
 エミリアはそれで本当に良かったのかと、
 この先ずっと悩むことになると思います。」

「…レイニード…。」

確かにそうかもしれない。
エリザベスのことは嫌いだし、ジュリアについては迷惑をかけられたと思う。
それでも令嬢があんな目に遭うのを見逃すことになるのは…。
この国を救うための犠牲だと、そう割り切ることができるだろうか。

数人の令息たちに追われ、走って逃げても追いつかれ、
神の審判まで追い詰められた時…絶望した。
怒りでいっぱいで、それ以上に怖くて。
どうして私がこんな目に遭わなければいけないんだと思った。
あの思いを、もしかしたらもっとひどい思いを彼女たちにさせるの?


それに、もし失敗して助けられなかったとしたら。
そこで二人が何をされるのかわかっていて、助けることもできるのに、
故意に助けないことは許されるのだろうか。
同じ令嬢として…。
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