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6章 やり直しの世界

10.決戦を前に

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リグレット魔術師長から呼び出されたのは、新年を祝う夜会の三週間ほど前だった。
魔術師長の部屋に通されると、リグレット魔術師長の顔色は少し悪かった。

「王宮で探らせているものから情報がいくつか入っている。
 まず、これは事実として報告されたのが…。
 陛下と第一王子の食事に毒が盛られていた。」

「ええ!?」

「…それは、やっぱりビクトリア王女ですか?」

「それが何もわかっていないんだ。
 陛下と第一王子は別々の部屋で食事をとっていた。
 その両方に混ぜられていたが、料理室に残っていた料理には毒はなかった。
 運んだものたちも一人ではなく、監視する騎士もついている。
 そんな状況で料理に毒を混ぜるのは無理だろう。

 それにビクトリア王女の周りは女官長の指示によって、
 ビクトリア王女の命令に従わない女官で固められているし、
 王女の取り巻きの令息令嬢が王宮内に侵入できるわけもない。
 いったいどうやって毒を盛ったのか…。」

「毒が盛られたって、どうしてわかったんですか?
 まさかまた体調が悪く?」

陛下とジョージア様には毒が盛られても無効化できるように、
ペンダント型の魔術具を渡してある。
考えられる限りの毒を無効化できるように作ったはずだが、
もしかして効かない毒が使われた?

「ほら、あれだよ。エミリアが作った魔術具。
 あれが毒に反応したらしい。
 何かつけている本人にもわかるようにしたのだろう?」

「あ。そういえばそうでした。
 無効化するとしても、気が付かないのはまずいと思って…。
 毒を感知すると熱くなるようにしたんです。」

「うん、それがちゃんと機能したようだよ。
 陛下も第一王子も魔術具が反応したのに気が付いて、
 すぐに食事を下げさせ調べたそうだ。
 蓄積型の毒が使われていた。
 これはかなりの回数盛らないと効果が出ないため、
 あまり暗殺で使われることは無い。
 数回口にしただけなら自然に排出してしまうものだからな。」

「では、それを使ったということは、
 長期間にわたって毒を盛ることができる者…ということになりますか?」

「それもおかしいんだ。
 一度盛られてから、次に盛られるまでの間が長すぎる。
 殺そうという気がまったく感じられない。」

「では、何のために?」

「…考えられるのは警告かな。」

「警告、ですか?」

警告。陛下とジョージア様に?
それとも、もっと別なことにたいする警告?
たとえば、毒を盛られることにもっと警戒するようにとか?
お二人が毒無効化の魔術具を身に着けていることは、
王宮内でも一部の人間しか知らないことだ。
もし知らなければ、もっと強い毒がこれから使われることへの警告とか?
でも、今回のことも普通なら気が付かないで終わってしまっていただろうし…。

うーん。犯人の目的がわからない。


「まぁ、それに関してはこれからも調査を続ける。
 陛下と第一王子も調べているだろうしな。
 それとは別に、新年を祝う夜会なのだが…。
 二人は出席する予定だな?」

「はい。」

「例の夜会ですから出るのが怖い気もしますが、
 出席の予定です。」


「ビクトリア王女に動きがあった。」

「「!?」」




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