神の審判でやり直しさせられています

gacchi

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6章 やり直しの世界

8.エリザベスの決意

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離れていたテーブルではあったが、
令嬢たちの話はエリザベスにも聞こえていた。

ライニードの本命はマジェスタ公爵家のミリーナ様。
そんなことは最初から知っている。
隠されているようでジョランド家もマジェスタ家も隠していなかった。
ちょっと調べればわかるようになっていた。
それがここ最近は大っぴらに語られ、それが事実のように受け入れられている。

なんとかしなきゃ…。
きっとミリーナ様が12歳になったら婚約してしまう。
そのまえにライニード様と関係を持ち、責任を取ってもらう予定だったのだ。
夜会で会うたびに隣を陣取って話しかけ、
たまに腕にふれたり、胸の谷間が見えるようにかがんだりしている。
その辺の男ならデレデレした顔になって、
いくらでも私が言うお願いを聞いてくれるというのに。

ライニード様は話しかければ答えてくれるし、話に付き合ってくれる。
話の内容はエミリアともう一度仲良くなりたいという相談である。
もちろん、エミリアと仲良くなりたいなんて一度も思ったことは無い。
ライニード様と話すきっかけになればいいと思って言っただけだ。

ライニード様は不思議な男で、
穏やかににこにこと笑っていても私になびいているわけではない。
そのことがよくわかったのは、ジュリアやビクトリア様が話しかけても、
私の時とまったく同じように対応している。
ちっとも気がないのがわかりすぎるくらいだった。

仕方なくライニード様と私の仲が良いらしい、
もしかしたら男女の仲かもという噂を流してみたが、
うわさは広がることなく消されていく。
どこで邪魔されているのかもわからないほどだった。

伯爵家の力は使えないし、公爵家二家にたいして外堀を埋めていく方法は使えない。
レイニード様とエミリアのように恋話として広まればと思ったのだが…。
思ったよりもジョランド公爵家はそういった対策がされているようだ。
噂を流したのが私だとは気が付かれていないとは思うが、
あまり動きすぎているとはっきりと拒絶されかねない。

今は無理に動くべきではない。
そう判断して様子を見ていたのは間違いだったのだろうか。

「次の新年を祝う夜会が勝負ね…。」

新年の夜会を過ぎたら、ミリーナ様が11歳になってしまう。
12歳になったら婚約すると公言するようになるだろう。
婚約式の準備に入ってしまえば、既成事実に持ち込むことも難しい。
その時点でライニード様とうまくいったとしても、
ミリーナ様と私とでは身分の差があるため、
私は妾の扱いになってしまう可能性が高い。

いくら相手が公爵家の嫡男だからと言って、妾には身分がない。
子を産んだところで正妻が認めなければ実子として扱われることもない。
王太子妃の妹であるミリーナ様がそれを許すとは思えなかった。

正妻から立場を認めてもらわなければ、
元貴族ではあるが、平民と変わらない扱いになる。
それではエミリアに勝つことができない。
むしろ妾になってしまえば見下されるに違いなかった。

それだけは避けなければいけない。
エリザベスは次の夜会に向けて…薬を手に入れることも考えていた。



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