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6章 やり直しの世界

5.変えなければいけない未来

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「陛下と第一王子を守りつつ、第一王女を排除するのが目標だった。
 そのために第一王女の非道を見逃すことになるのは悔しいが、
 一度や二度のことで王女が排除されるわけがない。
 それ相当の罪でなければ訴えても消されてしまう。
 被害にあった者には悪いが、戦争になるよりはましだと言い聞かせて…。

 だが、あの夜会の日、気が付いたら五年前に戻り、またやり直しされていた。
 最初は何が起きたのか理解できなかった。
 俺のやり方がまずかったから、強制的に戻されたのかと思っていた。
 リシャエルから君たちの魔力測定の報告を聞くまでは。」

「あ、赤色の魔力ですか?」

「そうだ。
 やり直し前のエミリアの魔力は多かったが赤色ではなかったはずだ。
 それに魔力がなかったはずのレイニードまでもが赤色。
 おかしいと思ってすぐに調べた。
 教会のものからもそのあと話を聞くことができた。
 神の審判の話はなかったが、教会の水晶で白銀の魔力だったといわれ、
 二人に神の加護が付いたのを知った。

 これは俺の想像だが、同じ時間でやり直しをする場合は、
 全員で巻き戻ってしまうのではないかと思う。
 二人が神の審判から落ちたことでリセットされてしまった。
 そして、戻ったのが五年前だったのは、
 そこが大事な分岐点になっている可能性が高かった。
 戻ったのが二人が婚約した後だったってことは、
 婚約したところまでは間違っていなかったということだと思う。
 そこから先の分岐が問題ではあるのだが…
 俺が知った時にはエミリアもレイニードも全く違う道を歩みだしていた。

 エミリアだけでなくレイニードまでも魔術師に。
 思わぬ結果に喜んではいたが、安心はできない。
 
 …正直言って、俺には何をすれば正しいのかはわからない。
 もうすでに運命は変わってしまっている。
 どうなるかは俺を含めて、この三人の動き次第なんだ。

 だから、君たちの協力も必要だと思ったんだ。
 俺は戦争を止めたい。あの女王を誕生させたくないんだ。
 力を貸してくれないだろうか。」

ソファに座ったままの状態で体を折り曲げるほど深く頭を下げられる。
思わずレイニードを見ると、視線が合った。
レイニードの灰色がかった紫目の赤みが増しているように見えた。

…なんとなく、神の意思がそうしなさいと言っている気がした。

「リグレット魔術師長。
 私たちの話も聞いてもらえますか?
 戻った後、二人で話し合ってどう未来を変えてきたのかを。」

それから長い話が続いた。
落ちた後、目が覚めて、レイニードと話し合ったことを。
一度目の人生だと私たちが思っているものとどう変えてきたのか。

魔術師長はそれについて質問をしながら真剣に聞いてくれた。
それは、お互いに欠けていた場所を補うような作業に近かった。

私とレイニードの話をすべて聞き終えた後、魔術師長は再び頭を下げた。

「俺が変えたことでかなりの苦労をさせてしまっていたようだ。すまない。」

「いえ、俺としてはそれでもエミリアと婚約できただけマシだったと思います。
 そのあとの行動は俺自身が失敗したことで、魔術師長の責任ではありません。」

「苦労はしましたが、もうそのことについてはいいです。
 こうしてやり直しできたことで、少しずつ許せるようになってきたんです。
 今はもう何も思っていません。
 私にできることであれば協力したいです。」

「俺も、この国で戦争が起きることは避けたい。
 協力させてください。」

「ああ!ありがとう!
 これからよろしく頼む。
 …責任は変わらないが、一人じゃないというのは素晴らしいな…。
 まだ安心できないのはわかるが、ほっとしてしまう。」

最初に会った時とは全く違う気の抜けたような表情に、
私たちに話すことに緊張やためらいや不安があったのだと気が付く。
怒っていないことを確認出来て、ようやく安心できたのだろう。

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