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5章 地下の学年

17.王女の企み

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「またダメなの?」

「はい。第一王子様も国王陛下もお忙しく、今はお会いすることができません。」

「もう、いつもそうじゃない!いつになったら会えるのよ!」

「ですから、謁見を求める理由をおっしゃっていただかないと。
 第一王女様に正当な理由があるのなら検討するそうです。」

「…もういい!」

「かしこまりました。」

うっすらと微笑みを浮かべて去っていく女官長に余計に怒りが増す。
毎回会いたいというと女官長が来て会えないと返事をされる。
会えない理由を聞いても忙しいとだけ。そんなわけないのに。

あのお茶会以来、お父様もお兄様も会ってくれなくなった。
お兄様の婚約者が怖い顔してお父様に報告するなんて言うから、
また怒られるかもとは思っていたけれど、怒られることはなかった。
その代わり、一度も会えていない。

あれは私は悪くない。
レイニードの婚約者が氷姫だなんて言われていい気になっているから。
皆の前で氷姫だなんて嘘だってわからせようと思ったのに。

氷を出せるっていうのなら、それが本当だっていうのなら、
あの場でやって見せればよかったのに。
ジンガ国の王女がいたからってそれがなんだっていうの?
うちの国に留学しに来ているだけの学生じゃない。
わがまま言わないで黙ってみていればよかったのよ。
結局あの女は言い訳ばかりで氷一つも出せなかったのだから、
私やあの場にいた令嬢たちに謝らせなきゃいけなかったのに。
邪魔するものが多くてうまくいかなかった。


「もう…めんどくさいわ。
 いつまでも謹慎させられるし、遊び相手もいないし。
 学園でも伯爵家や男爵家のくせに妙に目立つ子はいるしで…イライラするわ。
 あーあ。いっそのこと、お父様もお兄様も、どっちもいなくならないかしら。」

「…それはご命令ですか?」

いつのまにか私の後ろに来ていた女官が跪いている。
先月からここに来るようになった、この女官だけは私の言うことを聞いてくれる。

「うーん。命令っていうか、願い事かしら。
 バレないように二人がいなくなるような、そういうことはできないのかしら?」

「そうですね…急に亡くなるようなことがあればまずいですが、
 ゆっくりと蓄積していくような毒で弱めていくのなら可能です。
 ただ時間がかかりますが。」

「時間?どのくらい?」

「一年くらいでしょうか。
 そのくらいの時間があれば気が付かないうちに毒は蓄積されますし、
 体が弱った後で気が付いても、その時にはもう手遅れになっているでしょう。」

「一年も我慢するの?長いわね…まぁ、いいわ。
 でもそれなら二人ともいなくなるのよね?
 じゃあ、頼んだわよ。」

「はい。」

礼をした後、うつむき加減のまま女官は退出していく。
いつも暗くてあまり話をしないし、
他の女官がいる時には影が薄くてわからない女官だけど、
私の言うままに動いてくれる者ができたのは心強かった。
まさかお父様とお兄様を消すことができるとは。

「ふふふふ。もう少しだけ我慢しましょう。
 そうね…私が女王になるのもいいかもしれないわ。
 フレデリック兄さまはどうにでもなるもの。」

誰もいない部屋で笑い出すと止まらなくなった。
一年後の未来を思うと、楽しみで仕方ない。
そうね。国王が側妃をもてるのなら、王配だって一人じゃなくてもいいはずよね。
まずはレイニード。ライニードもついでにそばにおいてもいいかも。
銀色の髪をもって生まれたら、きっと美しい子になるに違いないもの。


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