117 / 167
5章 地下の学年
17.王女の企み
しおりを挟む
「またダメなの?」
「はい。第一王子様も国王陛下もお忙しく、今はお会いすることができません。」
「もう、いつもそうじゃない!いつになったら会えるのよ!」
「ですから、謁見を求める理由をおっしゃっていただかないと。
第一王女様に正当な理由があるのなら検討するそうです。」
「…もういい!」
「かしこまりました。」
うっすらと微笑みを浮かべて去っていく女官長に余計に怒りが増す。
毎回会いたいというと女官長が来て会えないと返事をされる。
会えない理由を聞いても忙しいとだけ。そんなわけないのに。
あのお茶会以来、お父様もお兄様も会ってくれなくなった。
お兄様の婚約者が怖い顔してお父様に報告するなんて言うから、
また怒られるかもとは思っていたけれど、怒られることはなかった。
その代わり、一度も会えていない。
あれは私は悪くない。
レイニードの婚約者が氷姫だなんて言われていい気になっているから。
皆の前で氷姫だなんて嘘だってわからせようと思ったのに。
氷を出せるっていうのなら、それが本当だっていうのなら、
あの場でやって見せればよかったのに。
ジンガ国の王女がいたからってそれがなんだっていうの?
うちの国に留学しに来ているだけの学生じゃない。
わがまま言わないで黙ってみていればよかったのよ。
結局あの女は言い訳ばかりで氷一つも出せなかったのだから、
私やあの場にいた令嬢たちに謝らせなきゃいけなかったのに。
邪魔するものが多くてうまくいかなかった。
「もう…めんどくさいわ。
いつまでも謹慎させられるし、遊び相手もいないし。
学園でも伯爵家や男爵家のくせに妙に目立つ子はいるしで…イライラするわ。
あーあ。いっそのこと、お父様もお兄様も、どっちもいなくならないかしら。」
「…それはご命令ですか?」
いつのまにか私の後ろに来ていた女官が跪いている。
先月からここに来るようになった、この女官だけは私の言うことを聞いてくれる。
「うーん。命令っていうか、願い事かしら。
バレないように二人がいなくなるような、そういうことはできないのかしら?」
「そうですね…急に亡くなるようなことがあればまずいですが、
ゆっくりと蓄積していくような毒で弱めていくのなら可能です。
ただ時間がかかりますが。」
「時間?どのくらい?」
「一年くらいでしょうか。
そのくらいの時間があれば気が付かないうちに毒は蓄積されますし、
体が弱った後で気が付いても、その時にはもう手遅れになっているでしょう。」
「一年も我慢するの?長いわね…まぁ、いいわ。
でもそれなら二人ともいなくなるのよね?
じゃあ、頼んだわよ。」
「はい。」
礼をした後、うつむき加減のまま女官は退出していく。
いつも暗くてあまり話をしないし、
他の女官がいる時には影が薄くてわからない女官だけど、
私の言うままに動いてくれる者ができたのは心強かった。
まさかお父様とお兄様を消すことができるとは。
「ふふふふ。もう少しだけ我慢しましょう。
そうね…私が女王になるのもいいかもしれないわ。
フレデリック兄さまはどうにでもなるもの。」
誰もいない部屋で笑い出すと止まらなくなった。
一年後の未来を思うと、楽しみで仕方ない。
そうね。国王が側妃をもてるのなら、王配だって一人じゃなくてもいいはずよね。
まずはレイニード。ライニードもついでにそばにおいてもいいかも。
銀色の髪をもって生まれたら、きっと美しい子になるに違いないもの。
「はい。第一王子様も国王陛下もお忙しく、今はお会いすることができません。」
「もう、いつもそうじゃない!いつになったら会えるのよ!」
「ですから、謁見を求める理由をおっしゃっていただかないと。
第一王女様に正当な理由があるのなら検討するそうです。」
「…もういい!」
「かしこまりました。」
うっすらと微笑みを浮かべて去っていく女官長に余計に怒りが増す。
毎回会いたいというと女官長が来て会えないと返事をされる。
会えない理由を聞いても忙しいとだけ。そんなわけないのに。
あのお茶会以来、お父様もお兄様も会ってくれなくなった。
お兄様の婚約者が怖い顔してお父様に報告するなんて言うから、
また怒られるかもとは思っていたけれど、怒られることはなかった。
その代わり、一度も会えていない。
あれは私は悪くない。
レイニードの婚約者が氷姫だなんて言われていい気になっているから。
皆の前で氷姫だなんて嘘だってわからせようと思ったのに。
氷を出せるっていうのなら、それが本当だっていうのなら、
あの場でやって見せればよかったのに。
ジンガ国の王女がいたからってそれがなんだっていうの?
うちの国に留学しに来ているだけの学生じゃない。
わがまま言わないで黙ってみていればよかったのよ。
結局あの女は言い訳ばかりで氷一つも出せなかったのだから、
私やあの場にいた令嬢たちに謝らせなきゃいけなかったのに。
邪魔するものが多くてうまくいかなかった。
「もう…めんどくさいわ。
いつまでも謹慎させられるし、遊び相手もいないし。
学園でも伯爵家や男爵家のくせに妙に目立つ子はいるしで…イライラするわ。
あーあ。いっそのこと、お父様もお兄様も、どっちもいなくならないかしら。」
「…それはご命令ですか?」
いつのまにか私の後ろに来ていた女官が跪いている。
先月からここに来るようになった、この女官だけは私の言うことを聞いてくれる。
「うーん。命令っていうか、願い事かしら。
バレないように二人がいなくなるような、そういうことはできないのかしら?」
「そうですね…急に亡くなるようなことがあればまずいですが、
ゆっくりと蓄積していくような毒で弱めていくのなら可能です。
ただ時間がかかりますが。」
「時間?どのくらい?」
「一年くらいでしょうか。
そのくらいの時間があれば気が付かないうちに毒は蓄積されますし、
体が弱った後で気が付いても、その時にはもう手遅れになっているでしょう。」
「一年も我慢するの?長いわね…まぁ、いいわ。
でもそれなら二人ともいなくなるのよね?
じゃあ、頼んだわよ。」
「はい。」
礼をした後、うつむき加減のまま女官は退出していく。
いつも暗くてあまり話をしないし、
他の女官がいる時には影が薄くてわからない女官だけど、
私の言うままに動いてくれる者ができたのは心強かった。
まさかお父様とお兄様を消すことができるとは。
「ふふふふ。もう少しだけ我慢しましょう。
そうね…私が女王になるのもいいかもしれないわ。
フレデリック兄さまはどうにでもなるもの。」
誰もいない部屋で笑い出すと止まらなくなった。
一年後の未来を思うと、楽しみで仕方ない。
そうね。国王が側妃をもてるのなら、王配だって一人じゃなくてもいいはずよね。
まずはレイニード。ライニードもついでにそばにおいてもいいかも。
銀色の髪をもって生まれたら、きっと美しい子になるに違いないもの。
115
お気に入りに追加
6,586
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
あなたが運命の相手、なのですか?
gacchi
恋愛
運命の相手以外の異性は身内であっても弾いてしまう。そんな体質をもった『運命の乙女』と呼ばれる公爵令嬢のアンジェ。運命の乙女の相手は賢王になると言われ、その言い伝えのせいで第二王子につきまとわられ迷惑している。そんな時に第二王子の側近の侯爵子息ジョーゼルが訪ねてきた。「断るにしてももう少し何とかできないだろうか?」そんなことを言うくらいならジョーゼル様が第二王子を何とかしてほしいのですけど?
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】やり直しですか? 王子はいらないんで爆走します。忙しすぎて辛い(泣)
との
恋愛
目覚めたら7歳に戻ってる。
今度こそ幸せになるぞ! と、生活改善してて気付きました。
ヤバいです。肝心な事を忘れて、
「林檎一切れゲットー」
なんて喜んでたなんて。
本気で頑張ります。ぐっ、負けないもん
ぶっ飛んだ行動力で突っ走る主人公。
「わしはメイドじゃねえですが」
「そうね、メイドには見えないわね」
ふふっと笑ったロクサーナは上機嫌で、庭師の心配などどこ吹く風。
ーーーーーー
タイトル改変しました。
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる