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4章 三学年そして15歳

2.貴族科の授業

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授業が始まる前に貴族科の先生に説明を聞くようにと言われ、
レイニードと二人で貴族科の校舎に向かった。

久しぶりに見る貴族科の校舎。
ここに通った頃の記憶は、自分のことではないように思う。
一人で授業を受け、誰とも話さずに一日が終わった。
ただ苦痛な時間を繰り返していくだけの学園生活だった。

思い出したら寂しかった頃に少し引き戻されるようで黙ったら、
そんな私に気がついたレイニードに手を握られる。
魔術師科に入学してから二年…いつでもレイニードが隣にいてくれた。
ルリナとファルカも、先輩たちも。
もう一人だけでいたエミリアではない…
大丈夫だよ、その思いをこめてレイニードの手を握り返した。


貴族科の担当の先生は以前に習った先生と同じだった。
あの頃見慣れていたはずの先生だが、レイニードも私もこれが初対面となる。
私たちがこれから週に二回受ける授業について説明を受ける間、
何とも言えない気持ちでそれを聞いていた。

貴族としての必須科目の中で、魔術師科で受けたものを除いて、
貴族科の校舎まで来て授業を受けることになる。

六か国史と六か国地理、サウンザード国史に文学史、領地経営、
これが二人に共通する必須科目。
これに私は礼儀作法とお茶会、レイニードは武術の授業が追加される。

領地経営の授業が必須になるのは、嫡男と一人娘、その婿になる予定のもの。
そのため侯爵家の一人娘の私と、その婿になるレイニードも受ける必要があった。
以前も受けたのだが、この授業を受けるのはほとんどが令息だった。
そのため、この授業の時はかなり居心地の悪い思いをしていた。

以前はレイニードとはすべての授業でクラスが違っていた。
だけど今回はレイニードと一緒のクラスで受けることになる。
隣にレイニードがいるのであれば、何も問題は無かった。


「どれも一度習った科目だから大丈夫そうね。」

「成績は問題ないだろう。一度目の時だって出来ているのだから。」

レイニードの言うとおり、前の時は時間が有り余っていたというか、
私には勉強くらいしかできることがなかった。
そのため成績は優秀だった。
公爵家で厳しく育てられたレイニードも同じように優秀だった。
同じ授業を受けるのだし、成績の心配は何もなかった。
問題は、会いたくない人に会う可能性が高いということだ。

今年の貴族科一年には第二王子が入学している。
そして、男爵令嬢も。

「ねぇ、レイニード。
 あの男爵令嬢って、いつから王子と一緒に行動していたの?」

男爵令嬢のジュリア・ニール。
小柄だが存在感のある彼女は女神の加護があるのではと噂されていた。
黒髪に緑目で泣き黒子。男性なら守ってあげたくなるのだろう。
いつも彼女の周りには令息たちが複数人付き添っていた。
その一人が第二王子だったのだが、いつからそうなったのか気になっていた。


「ああ。確か…始まってすぐのサウンザード国史の時かな。
 隣に座ったかなんかで…そのまま昼食に行くことになって、
 気がついたら毎日王子の隣にいたな…。」

「誰も何も言わなかったの?」

「俺はただの護衛だから何も口は挟まない。
 王子の学友の誰かがやめたほうがいいって言った気はするけど、
 王子は自分に婚約者がいるわけでもないし、これくらいは良いだろうって。」

「…まぁ、王子に婚約者はいないけれど…。
 あの男爵令嬢は冷たい目で見られていたわね。」

「普通はそうだろうな。
 なんていうか、第二王子は…人の話を聞かないんだ。」

「あぁ、そういう感じなんだ。なるべく関わらないようにしないとね。」

「そうしよう。」

なんて相談をしていたのだが全く意味がなかった。
最初の授業の後で、すぐに第二王子と関わることになってしまったのだから。

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