64 / 167
3章 魔術師科二階の学年
21.強くなりたい
しおりを挟む
「もちろんです。アヤヒメ先輩のように…私もなりたいです。」
「じゃあ、まずは我慢しない。
嫌だったら嫌だっていうところから始めましょう?」
「…頑張ります。」
「ふふふ。そうねぇ、じゃあ一つジンガ国の話をしましょうか。」
とびきりの笑顔になったアヤヒメ先輩は、
面白がるように私にジンガ国の情報を教えてくれた。
「ジンガ国の王族は多いのだけど、無条件で王族に残れるのは王妃の子だけなの。
側妃の子は、強い魔術師を他国から連れて帰って婚姻しなければならない。
今、ジンガ国には私の一つ上に第二妃の娘がいて、二つ下に第四妃の娘がいるわ。
連れて帰る条件は、強い魔術師の男性、その一点なのだけど、
どちらの王女も貴族出身じゃなければ嫌だと言ってるそうなの。
では、問題です。貴族出身の強い魔術師…そんなにいると思う?」
「いないはずです。
この国もしばらく魔術科に貴族はいなかったと聞いています。」
「そうよね。
比較的魔力のある貴族が多いサウンザード国でもそんな状態だもの。
他の国はもっと少ないのが現状でしょうね…。
で、そんな中、公爵家次男で家を継ぐ必要もなく、
どう考えても強い魔術師になるのがわかっていて、
容姿も剣の腕も素晴らしくいいレイニードの価値は?」
「え?」
「この国の婚約の儀式をしていても、心を奪えばいいのよね?
だったら、自分に自信がある王女たちはどう行動すると思う?」
「…私を気にせずに、レイニードを誘惑してくると思います…。」
「そうするでしょうね。
で、私がサウンザード国に来ている以上、
ジンガ国にエミリアやレイニードの情報は流れているわ。
…いつ王女たちがレイニードをねらって留学して来てもおかしくないってこと。」
「…。」
狙われているのは私だけじゃなかった。
まさかレイニードも狙われる可能性が高いなんて…。
目の前にいるアヤヒメ先輩の異母姉妹…きっと美しい王女様に違いない。
そんな王女様たちが留学してきて、レイニードに近付いてきたら…。
「ね、エミリア。本当にそんなことになってもいいの?」
「…。」
「今なら、私が止められるかもしれないけど…?」
「…本当ですか?」
「それは…エミリア次第ね。どうしたいの?」
ビクトリア王女の自信満々な笑顔が思い出される。
その腕がレイニードの腕に添えられて…。
あのようなことが、また起きるなんて…そんなの…。
「…嫌です。たとえ、アヤヒメ先輩の姉妹で美しい王女様だったとしても…。
レイニードの隣にいるのは…私です!」
「よく言えたわね。最初の一歩、踏み出せたんじゃないかしら。
そう、嫌なことは嫌だって言うのよ?
ちゃんとレイニードとも向き合って、
過去の嫌だったこと全部言ってしまって、
一回くらい殴っておけばいいわ!」
「…殴るのはやめておきます…。」
「ふふ。そう、そうよ。
ちゃんと自分の意見を言えるようになったじゃない。
私がこの学園にいられるうちに、強いエミリアが見れるのを楽しみにしているわ。」
「アヤヒメ先輩…ありがとうございます。」
久しぶりにすっきりとした気持ちだった。
何か、自分の中で区切りがついたような…そんな気がした。
「じゃあ、まずは我慢しない。
嫌だったら嫌だっていうところから始めましょう?」
「…頑張ります。」
「ふふふ。そうねぇ、じゃあ一つジンガ国の話をしましょうか。」
とびきりの笑顔になったアヤヒメ先輩は、
面白がるように私にジンガ国の情報を教えてくれた。
「ジンガ国の王族は多いのだけど、無条件で王族に残れるのは王妃の子だけなの。
側妃の子は、強い魔術師を他国から連れて帰って婚姻しなければならない。
今、ジンガ国には私の一つ上に第二妃の娘がいて、二つ下に第四妃の娘がいるわ。
連れて帰る条件は、強い魔術師の男性、その一点なのだけど、
どちらの王女も貴族出身じゃなければ嫌だと言ってるそうなの。
では、問題です。貴族出身の強い魔術師…そんなにいると思う?」
「いないはずです。
この国もしばらく魔術科に貴族はいなかったと聞いています。」
「そうよね。
比較的魔力のある貴族が多いサウンザード国でもそんな状態だもの。
他の国はもっと少ないのが現状でしょうね…。
で、そんな中、公爵家次男で家を継ぐ必要もなく、
どう考えても強い魔術師になるのがわかっていて、
容姿も剣の腕も素晴らしくいいレイニードの価値は?」
「え?」
「この国の婚約の儀式をしていても、心を奪えばいいのよね?
だったら、自分に自信がある王女たちはどう行動すると思う?」
「…私を気にせずに、レイニードを誘惑してくると思います…。」
「そうするでしょうね。
で、私がサウンザード国に来ている以上、
ジンガ国にエミリアやレイニードの情報は流れているわ。
…いつ王女たちがレイニードをねらって留学して来てもおかしくないってこと。」
「…。」
狙われているのは私だけじゃなかった。
まさかレイニードも狙われる可能性が高いなんて…。
目の前にいるアヤヒメ先輩の異母姉妹…きっと美しい王女様に違いない。
そんな王女様たちが留学してきて、レイニードに近付いてきたら…。
「ね、エミリア。本当にそんなことになってもいいの?」
「…。」
「今なら、私が止められるかもしれないけど…?」
「…本当ですか?」
「それは…エミリア次第ね。どうしたいの?」
ビクトリア王女の自信満々な笑顔が思い出される。
その腕がレイニードの腕に添えられて…。
あのようなことが、また起きるなんて…そんなの…。
「…嫌です。たとえ、アヤヒメ先輩の姉妹で美しい王女様だったとしても…。
レイニードの隣にいるのは…私です!」
「よく言えたわね。最初の一歩、踏み出せたんじゃないかしら。
そう、嫌なことは嫌だって言うのよ?
ちゃんとレイニードとも向き合って、
過去の嫌だったこと全部言ってしまって、
一回くらい殴っておけばいいわ!」
「…殴るのはやめておきます…。」
「ふふ。そう、そうよ。
ちゃんと自分の意見を言えるようになったじゃない。
私がこの学園にいられるうちに、強いエミリアが見れるのを楽しみにしているわ。」
「アヤヒメ先輩…ありがとうございます。」
久しぶりにすっきりとした気持ちだった。
何か、自分の中で区切りがついたような…そんな気がした。
147
お気に入りに追加
6,586
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
あなたが運命の相手、なのですか?
gacchi
恋愛
運命の相手以外の異性は身内であっても弾いてしまう。そんな体質をもった『運命の乙女』と呼ばれる公爵令嬢のアンジェ。運命の乙女の相手は賢王になると言われ、その言い伝えのせいで第二王子につきまとわられ迷惑している。そんな時に第二王子の側近の侯爵子息ジョーゼルが訪ねてきた。「断るにしてももう少し何とかできないだろうか?」そんなことを言うくらいならジョーゼル様が第二王子を何とかしてほしいのですけど?
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
この野菜は悪役令嬢がつくりました!
真鳥カノ
ファンタジー
幼い頃から聖女候補として育った公爵令嬢レティシアは、婚約者である王子から突然、婚約破棄を宣言される。
花や植物に『恵み』を与えるはずの聖女なのに、何故か花を枯らしてしまったレティシアは「偽聖女」とまで呼ばれ、どん底に落ちる。
だけどレティシアの力には秘密があって……?
せっかくだからのんびり花や野菜でも育てようとするレティシアは、どこでもやらかす……!
レティシアの力を巡って動き出す陰謀……?
色々起こっているけれど、私は今日も野菜を作ったり食べたり忙しい!
毎日2〜3回更新予定
だいたい6時30分、昼12時頃、18時頃のどこかで更新します!
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる