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3章 魔術師科二階の学年

12.祖父と祖母

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「ジョセフお祖父さまとユリミアお祖母さま?」

「エミリア…大きくなったのね。
 最後に会ったのは、あなたが産まれた半年後だったかしら。
 もう14年も過ぎたのね…ごめんなさい。
 もう少しこまめに帰ってくるべきだったわ。」

お母様よりももっと小柄で薄茶色の髪をまとめているお祖母さまは、
私の方が身長が高いのに気がついて残念そうに笑った。
最後に会ったのが生後半年では…さすがに何も覚えていない。
会えてうれしい気持ちはあるけど、二人の喜びに同調できるほどでもない。
再会を喜んでいる二人にどうしていいかわからないでいると、
初対面のレイニードが前に出て挨拶をする。

「エミリアのお祖父さまとお祖母さまでしたか。
 レイニード・ジョランドと申します。
 エミリアの婿としてエンドソン家に入ります。
 お二人は…もしかして魔術師なのでしょうか?」

「そうだ。俺たちは今はジンガ国で仕事をしている。
 侯爵家の仕事をリンクスに継がせた後は魔術師として生きようと思ってな。
 エミリアが産まれたことで代替わりしてすぐにジンガ国へと移った。
 お前たちが魔術師科に入ると言うから、ローブを送ったんだが使っているか?
 ああいう魔術具を作って売る店をしているんだ。
 主に俺が素材を集めてきて、ユリミアが作っている。」

「あのローブ!お祖父さまとお祖母さまが作ったんですか!
 お父様にはいつかわかるって言われてましたが…知らなかったです。
 あのローブ、とても便利で助かってます。ありがとうございます!」

「俺にまで作っていただいて…。ありがとうございます。」

「それは良かった…が、お前たちはもったいないな。」

「もったいない、ですか?」

「ああ。図書室は使っているようだが、修練場はほとんど使われていないな。
 剣の練習をしているとは聞いたが、修練場を使いこなせていない。
 それに、あのローブも戦闘時も役に立つように作ってある。
 便利、などという言葉で終わるようなものではない。
 レイニード、修行する気はあるのか?」

「…っ!あります!お願いします!」

「よし、じゃあ、お前は俺についてこい。」

図書室から勢いよく出ていくお祖父さまに、レイニードは一緒についていった。
修行する…?修練場で?

「お祖母さま、私も行った方がいいですよね?」

「行っても構わないけど、エミリアは剣を使えるの?
 それよりもエミリアはエミリアのできる修行をした方が良いと思うわ。」

「私にできる修行?」

「多分、私に似たのであれば、あまり攻撃魔術は得意じゃないでしょう?」

「…はい。」

「ちょっと、本を呼んでみて。適正のものよ来い、と言えばいいわ。」

「え?わかりました。本棚、私の適正なものよ来い!」

いろんな棚が動いて、今の私が身に着けるのに最適な魔術書が集まってくる。
お祖母さまはその本の種類を一つずつ確認するように見ている。

「思ったよりも優秀ね。何冊か上級の魔術書まであるわ。
 いくつかはもう上級魔術書を読み終えているのもあるのね。
 思ったとおり、薬物鑑定、調合、錬金、空間術、物質変換。
 私と同じ才能があるようだわ。」

「お祖母さまと同じですか?」

「ええ。そうよ。
 彼は剣を扱うようだし、ジョセフに任せればいい魔剣の使い手になるでしょう。
 でも、エミリアはそうじゃない。剣を持って今から修行しても意味はない。
 だとしたら、他のことで身を護る方法を身に着けるべきだわ。
 知識は…身を護ることも相手を倒すこともできる。
 何より、危険を察知して逃げることもできるの。
 戦うことだけではなく、逃げること、逃げる方法も覚えるべきだわ。」

「逃げる方法…。逃げてもいいのでしょうか?」

「エミリアが相手に捕まってしまったら、レイニードは戦えなくなるでしょう。
 あなたが弱点なのは事実です。
 それを認めた上で、レイニードを戦わせるようにしなければ。
 あなたを守るためにレイニードは戦うのでしょう?」

「…はい。」

私を守るために戦う。それに甘えていいのか迷う気持ちもある。
自分が弱いから、レイニードに守られないと一人で立つこともできない。

「それでいいのよ。」

「え?」

「レイニードは騎士なのでしょう?
 騎士とは、誰かを守るために存在するのですよ。
 あなたは、そのまま守られていてもいいのです。」

「でも…。」

「でもね、守られつつ、エミリアもレイニードを守りたい、そう思わない?」

「…っ!」

「私が教えてあげるわ。
 エミリアの才能を伸ばして、レイニードを守れるようになりましょう?」

「お祖母さま!お願いします!」

「ふふっ。頑張りましょうね?」
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