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3章 魔術師科二階の学年

6.お義父様

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「まぁ、それもそうか。
 で、どう思う?アヤヒメ様は婚約者になりそうか?」

あれから何度か廊下や図書室でお会いすることはあった。
その時には必ず隣にはジングラッド様が騎士のようにそばにいて、
アヤヒメ様を守っているように見えた。

「私の勘ですけど…ジングラッド様がアヤヒメ様を好いているように思えます。
 アヤヒメ様もジングラッド様を愛称で呼ばれていましたし、仲は良さそうです。
 アヤヒメ様はまだ夜会にも出られていないそうです。
 第一王子様とは話す機会もあまりないのではないでしょうか?」

「ふむ…イストーニア国の第三王子か。
 そっちのほうも調べているんだが、わからないんだよな…。
 やり直し前はいなかったのか?」

「…やり直し前はサウンザード国に来ていませんでしたが、
 ビクトリア王女の嫁ぎ先はイストーニア国の予定でした。
 相手がどの王子になるのかは決まっていなかったようですけど…。」

ビクトリア様の嫁ぎ先!ジングラッド様は十五歳。ビクトリア様は十三歳。
相手としておかしくない年齢だ。
だけど、どうしてこの国の魔術師科に通っているのか…?

「今度ジングラッド様と話す機会があったら聞いてみます。
 ビクトリア王女と関係があるのなら、知っておくべきでしょう。」

「そうだな…俺も調べてはみる。
 ところで、ビクトリア王女だが、今年も療養先からは戻ってこないそうだ。」

「学園の入学まで戻らないつもりでしょうか?」

あの悪評が広まった後、ビクトリア王女は病弱ということにされ、
少し離れた王領で療育されることになった。
病弱ということにして、人前に出さないようにすることで、
噂を少しずつ消すつもりらしい。
確かにビクトリア王女の噂は少しずつ聞かないようになっている。
だけど、それは王都にいないからであって、
思い出せは皆が「あぁ、あの王女ね」と眉をひそめる。
悪女の印象は少しも薄れていなかった。
あと二年。いないことで評判が変わるとは思えなかったが、
それくらいしか手が無かったのだろう。


「十五歳の入学を終えても、夜会にはしばらく出さないそうだ。
 学園は仕方ないにしても、夜会にも出ていたら病弱じゃなくなってしまうからな。
 一年くらいはおとなしくさせるつもりだろう。」

十五歳の夜会に出席しない。それを聞いて少しだけ安心する。
誰かはわからなかったが、
王女が最初に出席した夜会で襲われた令嬢がいたと聞いた。
少なくともその令嬢が被害にあうことはないだろう。

「今年はいいですが、来年になれば第二王子が入学してきます。
 俺とエミリアも貴族科と一緒の授業がいくつかあります。
 関わらないようにするつもりですが…。
 もし父上のほうに護衛や学友の話が来たとしたら断ってください。
 ほとんど授業は一緒になりませんし、休み時間も違います。
 校舎も違うので、無理だとでも言ってください。」

「あぁ、わかった。
 そうだな…そろそろ第二王子の入学に向けてご学友の選抜があるか。
 うちに声がかかったとしても辞退しておこう。」

「よろしくお願いします。
 あと…無いと思いたいですが万が一のことを考えて、
 エミリアにお茶会の招待が来ないようにしてもらえますか?」

「お茶会?」

「第一王子主催のお茶会です。
 アヤヒメ様が婚約者にならないとわかれば、
 婚約者候補を決めるお茶会が開かれるでしょう。
 エミリアは婚約していても呼ばれる可能性があります。
 …俺たちは婚約の儀式をしていますので、それで断ってください。」

「…なるほど。それはリンクスにも言っておくよ。
 たしかにその状況なら、うちにも話が来るだろう。
 公爵家次男の婚約を解消しろと。
 …大丈夫だ。必ず断ってやる。」

「お願いします。」

「公爵様、ありがとうございます。」

「エミリアちゃん、そろそろお義父様って呼んでくれないか?
 レイニードを婿に出すけど、俺の娘になるのは変わりないんだからな。」

「はい。お義父様。」

「うんうん。困ったらすぐに言うんだよ。」

うれしそうに笑い、眉を下げたまま私とレイニードの頭をポンポン軽くたたく。
お父様だけじゃなくお義父様も味方に付いてくれるのが頼もしくて、
力強い大きな手のひらに温かさを感じた。



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