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25.魔術師協会

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連れて来られたのは、小さな応接室のようなところだった。
応接室にしては小さすぎるので、
こんなふうに面接をする場所なのかもしれない。

二人掛けのソファに座るようにすすめられ、座るとお茶が出された。
…侍女もいなかったし、目の前にも何もなかったはずなのに。
驚いていると、リシャエルさんは面白そうに笑った。

「本当に魔術とは縁のないところで育ってきたんだね。
 さっき、ここには使用人はいないって言っただろう?
 魔術師協会の魔術師はここにいたりいなかったりする。
 誰一人いないってこともあるんだ。
 で、こういうのは全部魔術でしてしまうから、使用人は必要ない。

 でも、いいね、二人とも。反応が素直で良いと思うよ。
 素直だと覚えが早いから。」


「魔術書は読み始めましたが、ほとんど使ったことはありません。」

「そうなんだ?エンドソン家なら修練場もあるでしょう?
 エンドソン家の修練場もエミーレ様が作ったものだから、
 多少失敗しても周りに影響でないはずだ。
 練習するのにもってこいの場所だよ。」

「そうなんですか。」

エミーレ様が作った図書室と修練場。
たくさんの魔術書だけでなく、練習する場所までそろっている。
エンドソン家から魔術師が多くうまれたのは、その環境のおかげもあるんだろう。

「まず…魔術師の歴史から話そう。
 昔、といってもエミーレ様が生まれる少し前のあたり、
 魔術師には人権が無かった。」

「え?」

「魔力の強いものは魔力の強いものと強制的に夫婦にされ、
 子どもを作ることを強制された。まるで家畜の交配のように。
 夫婦になったのに子が産まれなかった場合は、また強制的に離縁させられ、
 違うものと夫婦にさせられた。
 そんな風に作られた子どもは、親から取り上げられ、
 魔術師になるように育てられた。
 王族がいいように魔術師を支配していたんだ。」

「…そんなことが。」

「もちろん魔術師たちはその制度に逆らった。
 力を持った魔術師が数人でその制度をぶっ壊してね。
 新しい魔術師の地位と人権を手に入れた。

 その時の魔術師たちの一人がエミーレ様だ。
 エミーレ様は魔術師ではなく、一人の貴族と恋に落ちて結婚した。
 魔術師だけでは制度を壊すことは難しかっただろう。
 おそらくエンドソン侯爵の力もあったのだと思うよ。」

遠い昔の話だけど、自分の祖先が恋に落ちて、
その恋を成就させるために自分たちの地位を確立させた。
今とは違って人権も無かった魔術師が、しかも女性が。
どれほど大変なことだっただろう。


「その後、人権と地位を手に入れた魔術師だったが、
 あいかわらず王族たちの横暴さは変わらなかった。
 魔術師を国から守るためにできたのが、この魔術師協会だ。
 130年前からは、
 六か国法によって魔術師協会は王族でも手出しできないことになっている。
 破れば、他の五か国から痛い仕打ちがあるからね。」

六か国法、この国を含む近辺の六か国が同盟を結んだ際に決めた法だ。
これを勝手に破るようなことがあれば、
他の五国から戦争を仕掛けられてもおかしくない。
その六か国法に魔術師協会の独立も含まれているという。
国が魔術師の力を悪用して戦争を仕掛けられないようにするためらしい。
騎士団への登用や婚姻の強要なども禁止事項になっている。
神父様が魔術師協会に頼ったのも、それがあるからだろう。

「で、説明終わり。
 魔術師協会の推薦状を出すからには、
 卒業後は魔術師協会に所属してもらうことになる。
 そのために魔術師の歴史を説明しておかなきゃいけないんだ。
 知らないで入ってこられても困るからね。
 魔術師協会に所属するってことで、二人ともいいんだね?」

「はい。」「はい、よろしくお願いします。」

「うん、わかった。
 じゃあ、検査をしよう。
 ついてきて。」

部屋の奥に扉がついていて、リシャエルさんがそこに入って行った。
レイニードと一緒に中に入ると、薄暗い小部屋のような場所だった。

「この水晶にふれてくれる?」

リシャエルさんが示した先には、教会の水晶よりも大きな水晶が置かれている。
私の力では抱きかかえても持ち上げられないかもしれない。
その水晶にレイニードがふれると、赤色に光った。

「うわっ。」
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