16 / 167
16.エリザベス
しおりを挟む
図書室を出て廊下に出てみると、
こちらに向かって来ようとしているエリザベスと、
それを必死になって引き留めようとしているカミラがいた。
茶髪に茶目でまだ11歳の幼い顔したエリザベスを見て、
少しの懐かしさとともにできれば会いたくなかったと思う。
5年後には見事に育っていた大きな胸も、
今はまだ少女らしくほっそりとした体形だった。
確か再婚して引き取った時がこのくらいだった気がする。
「何をしているの?」
「あぁ、やっぱりいた!会いに来てあげたのに、侍女が止めるから。
もう!早く出てきなさいよ!…って、誰?」
突然やってきて、勝手に屋敷にあがりこんだと思われるのに、
いつも通り横柄な態度のエリザベスにため息が出そうになる。
どうして叔母様とエリザベスは身分が上の侯爵家相手にこんなことをするのだろう。
伯爵夫人と伯爵家令嬢だったころもそうだったけれど、
今はその身分すらないというのに。
再会の衝撃で言い返すこともできずにいると、
私の後ろから出てきたレイニードを見て、エリザベスは不機嫌そうな顔になる。
エリザベスがレイニード相手にこんな顔をするなんて?
そうか、エリザベスにとってはこれがレイニードと初めて会うことになるんだ。
公爵家のレイニードとして初めて会った前回とは違う…。
「誰って、君こそ誰だよ。失礼な女だな。」
これがやり直しでは初対面とはいえ、
レイニードにとっては何度も会って話もしていたエリザベスだ。
仲が良いとは思ってなかったけれど、それなりに交流していたと思う。
どうするのかと思ったが、その冷たい声は拒絶しているのがわかるほどだった。
「私?エリザベス・リンデよ。あなたは?」
「俺はレイニード・ジョランドだ。」
レイニードの冷たい態度が気に入らなかったのか、
睨みつけるかのような顔で挨拶したのに、レイニードの名前を聞いて、
エリザベスの顔つきが変わった。
いかにも清楚で真面目な女の子ですといった雰囲気に変わるのを見て、
嫌な記憶がよみがえった。
あぁそうだった。エリザベスってこういう子だった。
それがとても嫌でレイニードと話してほしくなかった。
たとえ私のことが嫌で婚約解消になったとしても、
エリザベスのこんな演技なんかに騙されてほしくなかった。
「あなたがレイニード様なのね。騎士になるって聞いたわ。
ねぇ、お茶でもして話してくださらない?騎士団に興味があるの!」
にっこり笑って近づいてくると、レイニードの腕を取ろうとする。
それをスッとかわして、レイニードは私の手を取った。
エリザベスから逃げたというよりも、私を守るような体勢にみえる。
「さわらないでくれないか?俺はエミリアの婿なんだ。
初対面で男にさわるようなふしだらな女とは、
たとえエミリアの親戚だとしても関わり合いたくないね。」
顔色一つ変えずにそう言ったレイニードに、エリザベスの顔は赤く染まった。
恥ずかしさと怒りでいっぱいなのだろう。
一瞬だけ悔しそうな顔をしたが、次の瞬間泣きそうな顔で、
「わ、わたしそんなつもりじゃ…レイニード様にお会いしたのがうれしくて…。
ごめんなさい!」
そう言うと、小走りで去って行った。
その後ろ姿を見送ってしまった後で気が付いた。
「…エリザベスがいるってことは、叔母様が来ている!?」
「っ!それはまずいな。行こう!」
こちらに向かって来ようとしているエリザベスと、
それを必死になって引き留めようとしているカミラがいた。
茶髪に茶目でまだ11歳の幼い顔したエリザベスを見て、
少しの懐かしさとともにできれば会いたくなかったと思う。
5年後には見事に育っていた大きな胸も、
今はまだ少女らしくほっそりとした体形だった。
確か再婚して引き取った時がこのくらいだった気がする。
「何をしているの?」
「あぁ、やっぱりいた!会いに来てあげたのに、侍女が止めるから。
もう!早く出てきなさいよ!…って、誰?」
突然やってきて、勝手に屋敷にあがりこんだと思われるのに、
いつも通り横柄な態度のエリザベスにため息が出そうになる。
どうして叔母様とエリザベスは身分が上の侯爵家相手にこんなことをするのだろう。
伯爵夫人と伯爵家令嬢だったころもそうだったけれど、
今はその身分すらないというのに。
再会の衝撃で言い返すこともできずにいると、
私の後ろから出てきたレイニードを見て、エリザベスは不機嫌そうな顔になる。
エリザベスがレイニード相手にこんな顔をするなんて?
そうか、エリザベスにとってはこれがレイニードと初めて会うことになるんだ。
公爵家のレイニードとして初めて会った前回とは違う…。
「誰って、君こそ誰だよ。失礼な女だな。」
これがやり直しでは初対面とはいえ、
レイニードにとっては何度も会って話もしていたエリザベスだ。
仲が良いとは思ってなかったけれど、それなりに交流していたと思う。
どうするのかと思ったが、その冷たい声は拒絶しているのがわかるほどだった。
「私?エリザベス・リンデよ。あなたは?」
「俺はレイニード・ジョランドだ。」
レイニードの冷たい態度が気に入らなかったのか、
睨みつけるかのような顔で挨拶したのに、レイニードの名前を聞いて、
エリザベスの顔つきが変わった。
いかにも清楚で真面目な女の子ですといった雰囲気に変わるのを見て、
嫌な記憶がよみがえった。
あぁそうだった。エリザベスってこういう子だった。
それがとても嫌でレイニードと話してほしくなかった。
たとえ私のことが嫌で婚約解消になったとしても、
エリザベスのこんな演技なんかに騙されてほしくなかった。
「あなたがレイニード様なのね。騎士になるって聞いたわ。
ねぇ、お茶でもして話してくださらない?騎士団に興味があるの!」
にっこり笑って近づいてくると、レイニードの腕を取ろうとする。
それをスッとかわして、レイニードは私の手を取った。
エリザベスから逃げたというよりも、私を守るような体勢にみえる。
「さわらないでくれないか?俺はエミリアの婿なんだ。
初対面で男にさわるようなふしだらな女とは、
たとえエミリアの親戚だとしても関わり合いたくないね。」
顔色一つ変えずにそう言ったレイニードに、エリザベスの顔は赤く染まった。
恥ずかしさと怒りでいっぱいなのだろう。
一瞬だけ悔しそうな顔をしたが、次の瞬間泣きそうな顔で、
「わ、わたしそんなつもりじゃ…レイニード様にお会いしたのがうれしくて…。
ごめんなさい!」
そう言うと、小走りで去って行った。
その後ろ姿を見送ってしまった後で気が付いた。
「…エリザベスがいるってことは、叔母様が来ている!?」
「っ!それはまずいな。行こう!」
108
お気に入りに追加
6,569
あなたにおすすめの小説
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
私、女王にならなくてもいいの?
gacchi
恋愛
他国との戦争が続く中、女王になるために頑張っていたシルヴィア。16歳になる直前に父親である国王に告げられます。「お前の結婚相手が決まったよ。」「王配を決めたのですか?」「お前は女王にならないよ。」え?じゃあ、停戦のための政略結婚?え?どうしてあなたが結婚相手なの?5/9完結しました。ありがとうございました。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
王命を忘れた恋
水夏(すいか)
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる