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13.図書室

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侯爵家の図書室は二つあり、魔術書のみが集められている図書室は屋敷の奥にある。
その横を通り抜けていけば中庭に出る、その少し手前の壁に扉があった。

「ここが図書室?」

「うん、今はお祖父さまが封印しちゃったから誰も入れないの。
 この鍵をかざして魔力を流したら封印は解かれるって言ってた。」

父親から受け取った首飾りの先についた古い鍵をかざし、魔力を流し込む。
図書室の取っ手すらない扉と重なるように、もう一つの扉が浮かび上がってくる。
その真ん中に鍵を差し込むところがあった。
そこにゆっくりと鍵を差し入れて回す。
カチャリと音がして、鍵の付いたもう一つの扉は消え去った。

「開いたかな?」

図書室の扉には今まで無かった取っ手がついていた。
その取っ手をまわすと、扉は内側に開いていった。
ふらっと吸い込まれるように二人とも図書室の中に入り込むと、
目の前に広がった世界に驚いた。

「うわぁ。何ここ。
 こんなに広い図書室があるなんて信じられないよ。」

「私も知らなかったわ。こんなに広いなんて。
 うちの中にこんな広い空間あるわけないわ。これが魔術?」

「そうか、魔術で空間を広げているんだ。」

どこまでも広く続く空間に、数えきれないほどの本棚が点在している。
その近くには必ずと言っていいほどソファとテーブルが備え付けられていて、
どこでも好きな所で本が読めるようになっていた。
窓はないはずなのに澄んだ風が吹いて、日中の日陰に似た感じの明るさになっている。

「これはすごいね。
 まずは初級者向けの魔術書から勉強しなきゃいけないけど、
 どの本棚を探せばいいかな。」

レイニードがそう言うと、遠くから一つの本棚が動いて近づいてくる。
すぐ近くまでくると動きは止まり、いくつかの本が取り出しやすいように飛び出ていた。

「…レイニード、これって呼べば本棚が来てくれるってこと?」

「…そうみたいだな。もう驚き過ぎて声も出ないよ。」

いくつかの本を取り出すと、「魔術の仕組み」「魔術とは」「属性の理解」など、
初級者が最初に読む本のようだ。
レイニードが本を取り出して、私に一冊渡してくれる。

「とりあえず、おススメされた本を読むことから始めようか。」

「うん。」

近くのソファに座って各自で読み進めていると、あっという間に時間は過ぎていった。
今まで興味があったのにおさえてつけていた世界が、
もう好きなだけふれられると思うと時間がいくらあっても足りなかった。
もっと読みたいと思うのに時間が来て、図書室の外から声がかけられた。

「エミリア様~レイニード様~
 そろそろ旦那様が帰ってきますから、出てきてください。」

「わかったわ~。」

「今のはカミラか。図書室の中には入れないのかな?」

「うん、魔力が無いと中に入ってこれないって聞いたわ。
 あー楽しかったのに今日はここまでか…。」

「仕方ないよ。また明日こよう?」


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