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3.嫌がらせ
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「ほら、地味女がまた一人でいるわよ。」
「本当ね~氷の騎士様に相手されない上に、誰にも相手されないなんて。
可哀そうで見てられないわぁ。」
「私だったら恥ずかしくて婚約解消を願い出ますのに。」
「本当よねぇ。ビクトリア王女が公爵家に嫁がれるのが一番自然ですわ。
それが無理でも、あの地味女より私の方がよっぽどマシですのに。」
「やだぁ。私もよ。氷の騎士様ならいくらでもお相手しますのに。ねぇ?」
すぐ近くまで来て笑うくらいなら、
はっきり言いに来ればいいのにとは思うけど、ケンカを買ってもいいことはない。
確かに私はレイニードに相手にされていないのだから。
こんなに放っておくというか、
何もしないのであれば婚約解消してくれたらいいのにと何度も思っている。
もう侯爵家を継ぐのはエリザベスに任せて、
私は今からでも魔術師になる勉強をしようかとも思う。
でもそれを言い出すと、魔力が無くて苦労した父が悲しむと思って言えなかった。
夜会に来ても話す相手も無く、友人を作ろうにも、
ビクトリア王女の恋を邪魔する者として有名になってしまった私は、
話しかける相手すらいなかった。
もし話しかけたとしても、無言で逃げられてしまうだろう。
ビクトリア王女は本性を知らない令嬢たちに崇拝されている。
王女の恋の邪魔をする相手ともなれば、彼女たちは一致団結して排除しようとする。
私が直接的な危害を避けられているのは、
レイニードに相手にされていないこともあるが、
これでも侯爵家の長女だといういうことだろう。
さすがに私より身分の高い公爵家の令嬢たちは王女の本性を知っているようで、
私に敵意を向けてきたりはしなかった。
その代わり、王女に関わりたくないからと、私とも関わりたくないようだ。
結果、やっぱり誰とも友人になれなくて、今日も一人で壁際にたたずんでいた。
「はぁぁぁ。もう帰ろうかしら。」
遠くの方でレイニードがビクトリア王女と話しているのが見えた。
ここまで王女の笑い声が聞こえそうな、そんな笑顔だった。
肩を出した真っ青なドレスが細身で長身の体によく似合っている。
そのドレスにかかるつややかな金髪がきらめいて、思わずため息が出そうになる。
自分の髪をちらりと見ると、銀色の髪が手入れされず、まるで白髪のようだ。
ビクトリア王女はレイニードの腕にもたれかかっているが、
レイニードの顔は冷たいままだ。
どんな令嬢のそばにいても冷たい態度、つまらなそうな表情。
昔はそんなことなかったのに。いつから彼は変わってしまったのだろう。
「俺はエミリアを守る騎士になるよ。」
そう言って婚約を結んだのは嘘だったのだろうか。よく笑う少年だったのに。
母親たちがお茶を飲む傍らで、一緒に本を読んで遊んでいたのは、もう遠い記憶だ。
ライニードと三人で、ずっと笑って過ごしていたのに。
思い出したらよけいに辛くなって、そっと夜会の会場を出た。
侯爵家の馬車で先に帰って、
レイニードとエリザベスにはもう一度王宮に馬車を迎えに来させればいい。
私一人で帰ったところで、誰も心配しないだろう。
馬車乗り場の方へ歩き出したら、腕をつかまれた。
驚いて振り返ると、にやにやと笑う令息たちがいた。
見ると、休憩室のある通路をこえたところだった。
しまった。そう思った時には遅かった。
「エミリアちゃんじゃーん。遊びに来てくれたの?
いつもそっけなくされるから、そろそろ本気出そうと思ってたんだよね~。
休憩室、空いてるからさ。遊ぼうかぁ。」
つかまれている腕から伝わってくる体温にぞっとする。
こんなやつらに好き勝手にされたくはない。
令息たちが5人ほど、こちらに向かって来るのが見えた。
まずい。このままここにいたら逃げられない。
一瞬だけ魔力を放出して光を出し、腕を振りほどいた。
踵の高い靴で来なくて良かったと思いながら走って逃げると、
令息たちがすぐに追いかけてきていた。
「本当ね~氷の騎士様に相手されない上に、誰にも相手されないなんて。
可哀そうで見てられないわぁ。」
「私だったら恥ずかしくて婚約解消を願い出ますのに。」
「本当よねぇ。ビクトリア王女が公爵家に嫁がれるのが一番自然ですわ。
それが無理でも、あの地味女より私の方がよっぽどマシですのに。」
「やだぁ。私もよ。氷の騎士様ならいくらでもお相手しますのに。ねぇ?」
すぐ近くまで来て笑うくらいなら、
はっきり言いに来ればいいのにとは思うけど、ケンカを買ってもいいことはない。
確かに私はレイニードに相手にされていないのだから。
こんなに放っておくというか、
何もしないのであれば婚約解消してくれたらいいのにと何度も思っている。
もう侯爵家を継ぐのはエリザベスに任せて、
私は今からでも魔術師になる勉強をしようかとも思う。
でもそれを言い出すと、魔力が無くて苦労した父が悲しむと思って言えなかった。
夜会に来ても話す相手も無く、友人を作ろうにも、
ビクトリア王女の恋を邪魔する者として有名になってしまった私は、
話しかける相手すらいなかった。
もし話しかけたとしても、無言で逃げられてしまうだろう。
ビクトリア王女は本性を知らない令嬢たちに崇拝されている。
王女の恋の邪魔をする相手ともなれば、彼女たちは一致団結して排除しようとする。
私が直接的な危害を避けられているのは、
レイニードに相手にされていないこともあるが、
これでも侯爵家の長女だといういうことだろう。
さすがに私より身分の高い公爵家の令嬢たちは王女の本性を知っているようで、
私に敵意を向けてきたりはしなかった。
その代わり、王女に関わりたくないからと、私とも関わりたくないようだ。
結果、やっぱり誰とも友人になれなくて、今日も一人で壁際にたたずんでいた。
「はぁぁぁ。もう帰ろうかしら。」
遠くの方でレイニードがビクトリア王女と話しているのが見えた。
ここまで王女の笑い声が聞こえそうな、そんな笑顔だった。
肩を出した真っ青なドレスが細身で長身の体によく似合っている。
そのドレスにかかるつややかな金髪がきらめいて、思わずため息が出そうになる。
自分の髪をちらりと見ると、銀色の髪が手入れされず、まるで白髪のようだ。
ビクトリア王女はレイニードの腕にもたれかかっているが、
レイニードの顔は冷たいままだ。
どんな令嬢のそばにいても冷たい態度、つまらなそうな表情。
昔はそんなことなかったのに。いつから彼は変わってしまったのだろう。
「俺はエミリアを守る騎士になるよ。」
そう言って婚約を結んだのは嘘だったのだろうか。よく笑う少年だったのに。
母親たちがお茶を飲む傍らで、一緒に本を読んで遊んでいたのは、もう遠い記憶だ。
ライニードと三人で、ずっと笑って過ごしていたのに。
思い出したらよけいに辛くなって、そっと夜会の会場を出た。
侯爵家の馬車で先に帰って、
レイニードとエリザベスにはもう一度王宮に馬車を迎えに来させればいい。
私一人で帰ったところで、誰も心配しないだろう。
馬車乗り場の方へ歩き出したら、腕をつかまれた。
驚いて振り返ると、にやにやと笑う令息たちがいた。
見ると、休憩室のある通路をこえたところだった。
しまった。そう思った時には遅かった。
「エミリアちゃんじゃーん。遊びに来てくれたの?
いつもそっけなくされるから、そろそろ本気出そうと思ってたんだよね~。
休憩室、空いてるからさ。遊ぼうかぁ。」
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こんなやつらに好き勝手にされたくはない。
令息たちが5人ほど、こちらに向かって来るのが見えた。
まずい。このままここにいたら逃げられない。
一瞬だけ魔力を放出して光を出し、腕を振りほどいた。
踵の高い靴で来なくて良かったと思いながら走って逃げると、
令息たちがすぐに追いかけてきていた。
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