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36.ジャニス王女
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「もう!こんな嘘つきな女がジルアークの婚約者なわけ無い!
この女を捕まえて王宮から追い出しなさい!早く!私の言うことが聞けないの!?」
近くにいた衛兵たちに指示を出そうとわめいているが、
この離宮にいる衛兵たちはジルの管理下の者だ。
陛下の指示なら聞くだろうが、
ジルよりも身分の下のジャニス王女の指示を聞くわけがない。
ましてやジルの婚約者であり他国の王女でもある私を捕まえるなどできるわけがない。
「ジャニス…お前、これほどまでに馬鹿だったんだな。」
いつもより二倍くらい低い声が聞こえた。
いつの間にかジルが部屋に入って来ていて、先ほどの会話も聞いていたようだ。
ジルの後ろに陛下とお義父様もいる。
「ジルアーク!嘘でしょう?婚約したなんて。
この女が言うのは全部嘘だわ!」
「ジャニス、俺の大切なリアを侮辱してただで済むと思うなよ?」
「えっ。」
「ジャニス…お前には失望した。
わがままだとは思っていたが、他国の王女にまで無礼な真似をするとは。
母親亡き後甘やかしすぎたのがいけなかったのだな…。」
「お父様!?何を言っているの?」
「衛兵、ジャニスを捕まえて部屋に戻せ。部屋の外に出るのは認めん。
もちろん今日の夜会にも出さない。しばらく謹慎しておけ。」
「どうして!」
「まだわからんのか。リアージュ王女に謝りもせず。
お前が友好国の王女にどれだけ無礼なことをしたと思ってるんだ!」
「…本当に王女でジルアークの婚約者なの?嘘じゃないの?
だって、ジルアークの運命の少女はいないって言ってたじゃない!」
「リアージュは石榴姫の孫だ。カルヴァイン国の王族の血筋でもある。
運命の少女なんだよ。そうじゃなくても俺の恋人に変わらないけどな。」
「そんな…嘘…ジルアークに恋人だなんて…うそよ。うそだって言って…。」
泣き崩れたジャニス王女を侍従の少年たちが支えて立たせようとする。
そのまま衛兵に囲まれ、侍従の少年ごと引きずるように外に出された。
ジャニス王女の泣き声がだんだん遠くなっていくのを聞いて、ため息をついた。
ため息が重なったような気がするのは、多分気のせいじゃない。
陛下がしょんぼりした雰囲気ですぐさま謝って来た。
「すまない。ここまでやらかすとは思ってなかった。」
「いえ、陛下。驚きはしましたが、特に何かされたわけじゃないので大丈夫です。」
「何もされていないと言っても、
衛兵に捕まえて追い出せとまで指示したからには無かったことにはできない。
しばらく謹慎させて反省を促したのちに、降嫁の話をすすめようと思う。
いいかげんジルアークのことはあきらめさせないとな。」
「そうですね。何言っても話を聞かないので、できるだけ遠ざけてください。
俺が王太子になっても宰相になっても、ジャニスは邪魔になるだけですから。」
「わかった。」
「じゃあ、陛下と父上は執務室に戻ってください。
リアの準備が終わりません。部屋から出てもらえますか。」
「ああ、そうか。すまん。では、また後でな。」
「リアージュ、また広間でな。」
陛下とお義父様が慌てて部屋から出ていく。
夜会の開始に間に合わないかもしれないと思いつつ、ミトに髪を結ってもらう。
その間もジルは心配だったのか隣にいて手を握っていてくれた。
心配だったジャニス王女との対面は最悪な結果で終わった。
この後会うことになるだろうカミーラのことを思うと気が重くなるのを感じた。
この女を捕まえて王宮から追い出しなさい!早く!私の言うことが聞けないの!?」
近くにいた衛兵たちに指示を出そうとわめいているが、
この離宮にいる衛兵たちはジルの管理下の者だ。
陛下の指示なら聞くだろうが、
ジルよりも身分の下のジャニス王女の指示を聞くわけがない。
ましてやジルの婚約者であり他国の王女でもある私を捕まえるなどできるわけがない。
「ジャニス…お前、これほどまでに馬鹿だったんだな。」
いつもより二倍くらい低い声が聞こえた。
いつの間にかジルが部屋に入って来ていて、先ほどの会話も聞いていたようだ。
ジルの後ろに陛下とお義父様もいる。
「ジルアーク!嘘でしょう?婚約したなんて。
この女が言うのは全部嘘だわ!」
「ジャニス、俺の大切なリアを侮辱してただで済むと思うなよ?」
「えっ。」
「ジャニス…お前には失望した。
わがままだとは思っていたが、他国の王女にまで無礼な真似をするとは。
母親亡き後甘やかしすぎたのがいけなかったのだな…。」
「お父様!?何を言っているの?」
「衛兵、ジャニスを捕まえて部屋に戻せ。部屋の外に出るのは認めん。
もちろん今日の夜会にも出さない。しばらく謹慎しておけ。」
「どうして!」
「まだわからんのか。リアージュ王女に謝りもせず。
お前が友好国の王女にどれだけ無礼なことをしたと思ってるんだ!」
「…本当に王女でジルアークの婚約者なの?嘘じゃないの?
だって、ジルアークの運命の少女はいないって言ってたじゃない!」
「リアージュは石榴姫の孫だ。カルヴァイン国の王族の血筋でもある。
運命の少女なんだよ。そうじゃなくても俺の恋人に変わらないけどな。」
「そんな…嘘…ジルアークに恋人だなんて…うそよ。うそだって言って…。」
泣き崩れたジャニス王女を侍従の少年たちが支えて立たせようとする。
そのまま衛兵に囲まれ、侍従の少年ごと引きずるように外に出された。
ジャニス王女の泣き声がだんだん遠くなっていくのを聞いて、ため息をついた。
ため息が重なったような気がするのは、多分気のせいじゃない。
陛下がしょんぼりした雰囲気ですぐさま謝って来た。
「すまない。ここまでやらかすとは思ってなかった。」
「いえ、陛下。驚きはしましたが、特に何かされたわけじゃないので大丈夫です。」
「何もされていないと言っても、
衛兵に捕まえて追い出せとまで指示したからには無かったことにはできない。
しばらく謹慎させて反省を促したのちに、降嫁の話をすすめようと思う。
いいかげんジルアークのことはあきらめさせないとな。」
「そうですね。何言っても話を聞かないので、できるだけ遠ざけてください。
俺が王太子になっても宰相になっても、ジャニスは邪魔になるだけですから。」
「わかった。」
「じゃあ、陛下と父上は執務室に戻ってください。
リアの準備が終わりません。部屋から出てもらえますか。」
「ああ、そうか。すまん。では、また後でな。」
「リアージュ、また広間でな。」
陛下とお義父様が慌てて部屋から出ていく。
夜会の開始に間に合わないかもしれないと思いつつ、ミトに髪を結ってもらう。
その間もジルは心配だったのか隣にいて手を握っていてくれた。
心配だったジャニス王女との対面は最悪な結果で終わった。
この後会うことになるだろうカミーラのことを思うと気が重くなるのを感じた。
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