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28.事実と思惑
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「え。カミーラ様が教室に?」
大公家の控室で昼食の準備をしていてくれたミトに報告すると、同じように驚いていた。
「…もしかして、リア様を追いかけてきたんでしょうか?」
「ミト、どうしてそう思うんだ?リアを追いかけてくる理由があるのか?」
「…これは私の考えなのですが、カミーラ様はリア様を憎んでいるように思います。
レミアスでの学園や公爵家でも何かにつけて嫌がらせをされていました。
その都度、公爵さまやフレデリック様からは注意されていたようですが…。
リア様が婚約されたことでまた邪魔をしに来たのではないかと。」
「それだけ大っぴらにリアに嫌がらせしていたってこと?」
「そうです。レミアスの学園内には侍女である私はついていけません。
レミアスの学園では学生以外の立ち入りが禁止されています。
カミーラ様は同じクラスの令息たちをいいように使っているようでした。
子爵家と男爵家の令息たちです。平民の商家の者も何名かおりました。
嫌がらせは直接的じゃないものが多かったので、処罰するのも難しかったのです。」
「…同じクラスの令息か。なるほどね。
リア、この学園ではそんなことは起きないから大丈夫だと思う。」
ミトからの説明を聞いて考え込んでいるようだったジルがそう言うので、
どうしてそう思うのか不思議になった。この学園ではってどういうことなんだろう。
「どうして、この学園では大丈夫なの?」
「あの義妹の目は魅了眼だ。
だけど、魅了眼っていうのは自分よりも魔力量が少ない者にしか効かない。
おそらく取り巻きになっていた男爵家や子爵家の者は魔力が少ないか無いのだろう。
だけど、この学園は伯爵位以上の者しかいないし、
レミアスよりも魔力量が多い者ばかりだ。
あれ以上騒いでいたとしても取り巻きは増えないよ。」
「…カミーラって、魅了眼だったの。」
おかしいと思っていた。
どうして公爵家の者に下位貴族の令息が嫌がらせをするのだろうと。
下手なことをしてバレたら本人の退学だけでは済まない。
それほどまでカミーラの言うことに従う理由は何だろうと思っていた。
だけど、理由がわかってしまえば納得する。
公爵家の者や王族たちはもちろん、
学園でも高位貴族の者はカミーラに近付かないようにしていた。
どちらかといえばあの言動を嫌がっていたようにも見えた。
「魅了眼はシャハルには効くと思うけど、シャハルはリアに近付けない。
シャハルが他の者に命令するにしても、俺はそれを止めることができるしね。
あと数日でレミアスから迎えが来るだろうから、それまで俺から離れないで。」
「わかったわ。
…なんだかカミーラが怖かったのが、理由がわかってしまったら平気みたい。」
魔力量の問題なのだとしたらジルは平気だろう。
ジルとの間を邪魔されることは無いとわかって、ようやくほっとすることができた。
「あぁ、でも一応陛下に報告に行こうか。
魅了眼は放っておくと災厄を招くと言われているからね。
レミアスに帰す前に魔力封じの腕輪をはめることになるかもしれない。」
「そうなの…でもそうよね。レミアスではよく騒ぎを起こしていたわ。
カルヴァインで同じようなことが起きれば処罰しないわけにはいかない。
ここは他国なのだから、レミアス王家としても許すことは無いと思う。」
「うん、じゃあ、午後の授業が終わったらそのまま王宮へ報告に行こう。」
「シャハル様~聞いてました?
お義姉様ってば無理やり呼んだのに知らないふりしてました。
どうしていつも意地悪されるのかしら。」
「カミーラが可愛いから意地悪したくなるのだろう。」
「もう…悲しいです。もしかしたら無理やり帰されちゃうかもしれません。」
「それは困るな…。」
せっかく公爵家の令嬢を捕まえたのに、レミアスに帰されたら困る。
リアージュとのこともあり、すぐに婚約話を陛下に願い出ることもできずにいたが、
連れ帰られることがあったら計画が全て台無しだ。
ここは少し無理をした方が良いか?
「カミーラ嬢。レミアスに帰りたいか?」
「…私、せっかくシャハル様とお会いできたのに…会えなくなるのは嫌です。」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。俺もカミーラ嬢に会えなくなるのは嫌だ。
…この国では書類の婚約よりも優先されるものがあるんだ。
魔力交換をすれば、もう離れなくて済む。
どうだろうか?俺はカミーラ嬢と結婚したい。」
「…本当ですか?お義姉様じゃなく私を選んでくれるのですか?」
「俺はカミーラ嬢と結婚したいんだ。」
「嬉しいです!シャハル様と一緒にいられるなら、なんでもします!」
「そうか…じゃあ、奥の部屋に行こうか。」
「…はい。」
シャハルは午後の授業は休むと側近候補たちに伝え、王族の控室にこもった。
邪魔が入らないうちにカミーラを自分のものにし、魔力交換まで行うことにした。
シャハルが王太子でリアージュの婚約者だと誤解したままのカミーラは、
魔力交換をした後もそのまま思い違いをしていることに気が付かなかった。
大公家の控室で昼食の準備をしていてくれたミトに報告すると、同じように驚いていた。
「…もしかして、リア様を追いかけてきたんでしょうか?」
「ミト、どうしてそう思うんだ?リアを追いかけてくる理由があるのか?」
「…これは私の考えなのですが、カミーラ様はリア様を憎んでいるように思います。
レミアスでの学園や公爵家でも何かにつけて嫌がらせをされていました。
その都度、公爵さまやフレデリック様からは注意されていたようですが…。
リア様が婚約されたことでまた邪魔をしに来たのではないかと。」
「それだけ大っぴらにリアに嫌がらせしていたってこと?」
「そうです。レミアスの学園内には侍女である私はついていけません。
レミアスの学園では学生以外の立ち入りが禁止されています。
カミーラ様は同じクラスの令息たちをいいように使っているようでした。
子爵家と男爵家の令息たちです。平民の商家の者も何名かおりました。
嫌がらせは直接的じゃないものが多かったので、処罰するのも難しかったのです。」
「…同じクラスの令息か。なるほどね。
リア、この学園ではそんなことは起きないから大丈夫だと思う。」
ミトからの説明を聞いて考え込んでいるようだったジルがそう言うので、
どうしてそう思うのか不思議になった。この学園ではってどういうことなんだろう。
「どうして、この学園では大丈夫なの?」
「あの義妹の目は魅了眼だ。
だけど、魅了眼っていうのは自分よりも魔力量が少ない者にしか効かない。
おそらく取り巻きになっていた男爵家や子爵家の者は魔力が少ないか無いのだろう。
だけど、この学園は伯爵位以上の者しかいないし、
レミアスよりも魔力量が多い者ばかりだ。
あれ以上騒いでいたとしても取り巻きは増えないよ。」
「…カミーラって、魅了眼だったの。」
おかしいと思っていた。
どうして公爵家の者に下位貴族の令息が嫌がらせをするのだろうと。
下手なことをしてバレたら本人の退学だけでは済まない。
それほどまでカミーラの言うことに従う理由は何だろうと思っていた。
だけど、理由がわかってしまえば納得する。
公爵家の者や王族たちはもちろん、
学園でも高位貴族の者はカミーラに近付かないようにしていた。
どちらかといえばあの言動を嫌がっていたようにも見えた。
「魅了眼はシャハルには効くと思うけど、シャハルはリアに近付けない。
シャハルが他の者に命令するにしても、俺はそれを止めることができるしね。
あと数日でレミアスから迎えが来るだろうから、それまで俺から離れないで。」
「わかったわ。
…なんだかカミーラが怖かったのが、理由がわかってしまったら平気みたい。」
魔力量の問題なのだとしたらジルは平気だろう。
ジルとの間を邪魔されることは無いとわかって、ようやくほっとすることができた。
「あぁ、でも一応陛下に報告に行こうか。
魅了眼は放っておくと災厄を招くと言われているからね。
レミアスに帰す前に魔力封じの腕輪をはめることになるかもしれない。」
「そうなの…でもそうよね。レミアスではよく騒ぎを起こしていたわ。
カルヴァインで同じようなことが起きれば処罰しないわけにはいかない。
ここは他国なのだから、レミアス王家としても許すことは無いと思う。」
「うん、じゃあ、午後の授業が終わったらそのまま王宮へ報告に行こう。」
「シャハル様~聞いてました?
お義姉様ってば無理やり呼んだのに知らないふりしてました。
どうしていつも意地悪されるのかしら。」
「カミーラが可愛いから意地悪したくなるのだろう。」
「もう…悲しいです。もしかしたら無理やり帰されちゃうかもしれません。」
「それは困るな…。」
せっかく公爵家の令嬢を捕まえたのに、レミアスに帰されたら困る。
リアージュとのこともあり、すぐに婚約話を陛下に願い出ることもできずにいたが、
連れ帰られることがあったら計画が全て台無しだ。
ここは少し無理をした方が良いか?
「カミーラ嬢。レミアスに帰りたいか?」
「…私、せっかくシャハル様とお会いできたのに…会えなくなるのは嫌です。」
「そう言ってもらえて嬉しいよ。俺もカミーラ嬢に会えなくなるのは嫌だ。
…この国では書類の婚約よりも優先されるものがあるんだ。
魔力交換をすれば、もう離れなくて済む。
どうだろうか?俺はカミーラ嬢と結婚したい。」
「…本当ですか?お義姉様じゃなく私を選んでくれるのですか?」
「俺はカミーラ嬢と結婚したいんだ。」
「嬉しいです!シャハル様と一緒にいられるなら、なんでもします!」
「そうか…じゃあ、奥の部屋に行こうか。」
「…はい。」
シャハルは午後の授業は休むと側近候補たちに伝え、王族の控室にこもった。
邪魔が入らないうちにカミーラを自分のものにし、魔力交換まで行うことにした。
シャハルが王太子でリアージュの婚約者だと誤解したままのカミーラは、
魔力交換をした後もそのまま思い違いをしていることに気が付かなかった。
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