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4.助ける

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「俺が助けようか?」

「え?」

「俺ならシャハルから守ってやれるよ。
 どうする?」

頭の上から降ってくるような声に、くすぐったさを感じる。
あの王子から守ってくれる?本当に?


「…そしたら帰らなくてもいいの?」

「うん、誰にも文句が言えないようにしてやれるよ。」

「どうやって?」

「俺の婚約者になればいい。今すぐに。」

「は?」

「そんな驚くなよ。婚約者を探すために来たんだろう?
 俺は大公で宰相の息子だから、それなりに身分は上だ。
 シャハルとも対等に話せるし、あいつは俺より弱いから文句も言ってこない。」

「…でも。」

「留学期間は卒業までの1年だろう?
 その間、婚約者として過ごして、俺と結婚してもいいと思ったら結婚すればいい。
 無理だと思ったら白紙にして帰ればいい。無理強いはしないと約束するよ。」

「…そんなことできるの?」

「できるよ。俺ならね。
 この国でシャハルのすることに文句を言える奴は数人しかいない。
 その中で独身の令息は俺だけだ。
 他の奴ともし婚約できても、シャハルは邪魔してくるだろう。
 …それに、このままレミアスに帰ったとしても、
 シャハルが婚約を申し込んできたら断れないんじゃないか?」

「うっ。」

「陛下を通して申し込まれたら、もう無理だろう。
 あきらめてシャハルと婚約するか?」

「それは嫌。それだけは嫌だわ。」

「だろう?じゃあ、俺にしとけよ。俺で何か問題あるか?」

問題?初対面で婚約を決めていいのかって問題はないの?
顔をあげて目を合わせると、目が私を心配しているように感じた。
同じ銀髪で紫目なのに、あの王子とは何もかもが違うように見える。
こんな初対面なのに、本当に頼ってもいいの?
思わず目を伏せると、抱きしめられていることを思い出して、顔が熱くなる。
この人と婚約?1年考えてみて、問題なかったら結婚するってこと?

「俺じゃダメか?」

少し低い声でささやかれて、もう耐えきれなくなってしまった。

「わかったわ…あなたと婚約するから、お願い…もう離して?」

「よし。じゃあ、くわしいことは後で話すから、このまま移動するよ。」

「え?」

そう言うとジルは本を仕舞って眼鏡をかけると、
私を抱き上げたまま立ち上がり、すたすたと歩き始めた。
軽々とお姫様抱っこで運ばれてしまい、軽く悲鳴をあげそうになる。

「え?え?何?どうして?」

「馬車まで運ぶから、少しだけ我慢して。馬車に行ったら降ろすから。
 人に見つからないように校舎の裏を通って行くから、ちょっと危ないんだ。
 お姫さまには歩かせられないよ。」

どうやら令嬢の靴では歩きにくい場所を通って行くらしい。
話しかけようとしたら、授業中だから静かにと言われ黙るしかなかった。
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