4 / 42
4.助ける
しおりを挟む
「俺が助けようか?」
「え?」
「俺ならシャハルから守ってやれるよ。
どうする?」
頭の上から降ってくるような声に、くすぐったさを感じる。
あの王子から守ってくれる?本当に?
「…そしたら帰らなくてもいいの?」
「うん、誰にも文句が言えないようにしてやれるよ。」
「どうやって?」
「俺の婚約者になればいい。今すぐに。」
「は?」
「そんな驚くなよ。婚約者を探すために来たんだろう?
俺は大公で宰相の息子だから、それなりに身分は上だ。
シャハルとも対等に話せるし、あいつは俺より弱いから文句も言ってこない。」
「…でも。」
「留学期間は卒業までの1年だろう?
その間、婚約者として過ごして、俺と結婚してもいいと思ったら結婚すればいい。
無理だと思ったら白紙にして帰ればいい。無理強いはしないと約束するよ。」
「…そんなことできるの?」
「できるよ。俺ならね。
この国でシャハルのすることに文句を言える奴は数人しかいない。
その中で独身の令息は俺だけだ。
他の奴ともし婚約できても、シャハルは邪魔してくるだろう。
…それに、このままレミアスに帰ったとしても、
シャハルが婚約を申し込んできたら断れないんじゃないか?」
「うっ。」
「陛下を通して申し込まれたら、もう無理だろう。
あきらめてシャハルと婚約するか?」
「それは嫌。それだけは嫌だわ。」
「だろう?じゃあ、俺にしとけよ。俺で何か問題あるか?」
問題?初対面で婚約を決めていいのかって問題はないの?
顔をあげて目を合わせると、目が私を心配しているように感じた。
同じ銀髪で紫目なのに、あの王子とは何もかもが違うように見える。
こんな初対面なのに、本当に頼ってもいいの?
思わず目を伏せると、抱きしめられていることを思い出して、顔が熱くなる。
この人と婚約?1年考えてみて、問題なかったら結婚するってこと?
「俺じゃダメか?」
少し低い声でささやかれて、もう耐えきれなくなってしまった。
「わかったわ…あなたと婚約するから、お願い…もう離して?」
「よし。じゃあ、くわしいことは後で話すから、このまま移動するよ。」
「え?」
そう言うとジルは本を仕舞って眼鏡をかけると、
私を抱き上げたまま立ち上がり、すたすたと歩き始めた。
軽々とお姫様抱っこで運ばれてしまい、軽く悲鳴をあげそうになる。
「え?え?何?どうして?」
「馬車まで運ぶから、少しだけ我慢して。馬車に行ったら降ろすから。
人に見つからないように校舎の裏を通って行くから、ちょっと危ないんだ。
お姫さまには歩かせられないよ。」
どうやら令嬢の靴では歩きにくい場所を通って行くらしい。
話しかけようとしたら、授業中だから静かにと言われ黙るしかなかった。
「え?」
「俺ならシャハルから守ってやれるよ。
どうする?」
頭の上から降ってくるような声に、くすぐったさを感じる。
あの王子から守ってくれる?本当に?
「…そしたら帰らなくてもいいの?」
「うん、誰にも文句が言えないようにしてやれるよ。」
「どうやって?」
「俺の婚約者になればいい。今すぐに。」
「は?」
「そんな驚くなよ。婚約者を探すために来たんだろう?
俺は大公で宰相の息子だから、それなりに身分は上だ。
シャハルとも対等に話せるし、あいつは俺より弱いから文句も言ってこない。」
「…でも。」
「留学期間は卒業までの1年だろう?
その間、婚約者として過ごして、俺と結婚してもいいと思ったら結婚すればいい。
無理だと思ったら白紙にして帰ればいい。無理強いはしないと約束するよ。」
「…そんなことできるの?」
「できるよ。俺ならね。
この国でシャハルのすることに文句を言える奴は数人しかいない。
その中で独身の令息は俺だけだ。
他の奴ともし婚約できても、シャハルは邪魔してくるだろう。
…それに、このままレミアスに帰ったとしても、
シャハルが婚約を申し込んできたら断れないんじゃないか?」
「うっ。」
「陛下を通して申し込まれたら、もう無理だろう。
あきらめてシャハルと婚約するか?」
「それは嫌。それだけは嫌だわ。」
「だろう?じゃあ、俺にしとけよ。俺で何か問題あるか?」
問題?初対面で婚約を決めていいのかって問題はないの?
顔をあげて目を合わせると、目が私を心配しているように感じた。
同じ銀髪で紫目なのに、あの王子とは何もかもが違うように見える。
こんな初対面なのに、本当に頼ってもいいの?
思わず目を伏せると、抱きしめられていることを思い出して、顔が熱くなる。
この人と婚約?1年考えてみて、問題なかったら結婚するってこと?
「俺じゃダメか?」
少し低い声でささやかれて、もう耐えきれなくなってしまった。
「わかったわ…あなたと婚約するから、お願い…もう離して?」
「よし。じゃあ、くわしいことは後で話すから、このまま移動するよ。」
「え?」
そう言うとジルは本を仕舞って眼鏡をかけると、
私を抱き上げたまま立ち上がり、すたすたと歩き始めた。
軽々とお姫様抱っこで運ばれてしまい、軽く悲鳴をあげそうになる。
「え?え?何?どうして?」
「馬車まで運ぶから、少しだけ我慢して。馬車に行ったら降ろすから。
人に見つからないように校舎の裏を通って行くから、ちょっと危ないんだ。
お姫さまには歩かせられないよ。」
どうやら令嬢の靴では歩きにくい場所を通って行くらしい。
話しかけようとしたら、授業中だから静かにと言われ黙るしかなかった。
87
お気に入りに追加
1,520
あなたにおすすめの小説
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】
須木 水夏
恋愛
大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。
メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。
(そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。)
※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。
※ヒーローは変わってます。
※主人公は無意識でざまぁする系です。
※誤字脱字すみません。
婚約者の断罪
玉響
恋愛
ミリアリア・ビバーナム伯爵令嬢には、最愛の人がいる。婚約者である、バイロン・ゼフィランサス侯爵令息だ。
見目麗しく、令嬢たちからの人気も高いバイロンはとても優しく、ミリアリアは幸せな日々を送っていた。
しかし、バイロンが別の令嬢と密会しているとの噂を耳にする。
親友のセシリア・モナルダ伯爵夫人に相談すると、気の強いセシリアは浮気現場を抑えて、懲らしめようと画策を始めるが………。
冷徹義兄の密やかな熱愛
橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。
普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。
※王道ヒーローではありません
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
婚約破棄でみんな幸せ!~嫌われ令嬢の円満婚約解消術~
春野こもも
恋愛
わたくしの名前はエルザ=フォーゲル、16才でございます。
6才の時に初めて顔をあわせた婚約者のレオンハルト殿下に「こんな醜女と結婚するなんて嫌だ! 僕は大きくなったら好きな人と結婚したい!」と言われてしまいました。そんな殿下に憤慨する家族と使用人。
14歳の春、学園に転入してきた男爵令嬢と2人で、人目もはばからず仲良く歩くレオンハルト殿下。再び憤慨するわたくしの愛する家族や使用人の心の安寧のために、エルザは円満な婚約解消を目指します。そのために作成したのは「婚約破棄承諾書」。殿下と男爵令嬢、お二人に愛を育んでいただくためにも、後はレオンハルト殿下の署名さえいただければみんな幸せ婚約破棄が成立します!
前編・後編の全2話です。残酷描写は保険です。
【小説家になろうデイリーランキング1位いただきました――2019/6/17】
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる