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11.落ちたのは恋
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公爵家に住まいを移す前にローズマリーは死のうとしている。
そのことにレイは気が付いた。
この婚約を子爵家のほうから解消することができないのはわかっている。
だけど、ローズマリーが死んだほうがましだと思っているのに、
命を助けてたとしても心を殺して嫁げというのは…。
それは、本当にローズマリーを助けたことになるのだろうか。
悩んだ結果、レイは自分の任務をすべて投げ出し、
俺も一緒に死ぬから来世で一緒になろうとローズマリーに想いを告げた。
二人が心中しようとしていることに監視が気がついてくれなかったら、
そのまま橋の上から二人は飛び降りて死んでいただろう。
気が付いた監視はすぐさま私のところへと報告に飛んできた。
さすがに心中するとは思っていなかったから驚いたが、
ローズマリーが死を選ぶ可能性はあると思っていた。
そうさせないために護衛と監視をつけていたのだが、
まさか護衛のレイとこうなるとは思わず、頭を抱えてしまった。
王女としては、公爵家のことに口を出すのも手を出すことも許されない。
シャルルに何度も警告をしていたのも幼馴染として許される範囲だ。
ぎりぎりまで迷ったが、シャルルが警告を聞いてくれることは無かった。
結局は知らなかったことにもできず、人目を避けて子爵家へと向かった。
子爵夫妻とローズマリーの兄にすべてを打ち明けたところ、
ローズマリーをそこまで追い詰めたことに三人とも泣き出してしまった。
自分たちがローズマリーを守ってやれなかったからだと。
公爵家の申し出があった時に、何としてでも断るべきだったと言い出した。
最初から身分が違いすぎて苦労するのはわかっていたようだ。
他に婚約者をたてて断ることも考えていたらしい。
結果的に公爵家の押しの強さに負けてしまったことを、ずっと後悔し続けていた。
このままローズマリーを死なせるくらいなら爵位を返上して、
他国へ家族全員で逃げてもいいと言い出したが、
それは公爵家の顔をつぶしてしまうことになり、
我が国と揉めることを厭って他国でも受け入れてもらえない可能性が高かった。
私が領主になる辺境伯で預からせてもらえないかと申し出ると、
子爵は涙を流したまま頭を深く下げられて託された。
「ミラージュ様、どうかよろしくお願いいたします」と。
こうして、ローズマリーとレイは私が預かることになった。
誰にも気が付かれないようにこっそりと辺境伯領へ送り届け、
二人を平民として生活できるようにした。
あの日、ローズマリーが飛び降りたと証言したのは、
姉のようにローズマリーを可愛がってきた侍女と私の手の者が扮した護衛だ。
あの日の裏側を知る者は、すべてローズマリーの味方だった。
シャルルや公爵家の仕打ちを十年も耐え続けてきたローズマリーが、
ついに限界をむかえてしまったのだと、真実を知っても口をつぐんだ。
どれだけシャルルが後悔して泣き叫んだとしても、
死を選ぶほどローズマリーを追い詰めていたのは事実だ。
私たちが手を出さなければ、ローズマリーは本当に死んでいたのだから。
もっと早く、最初から素直に好きだと言っていれば、
あの砂糖菓子のような笑顔はシャルルのものになったかもしれないのに。
「そういえば、リュカはもう侍従じゃないんだから、
こんな風に迎えに来なくてもいいのよ?」
「いや、俺の仕事はミラージュの補佐だろう?
今まで通り侍従の仕事もするつもりだぞ。」
「領主の仕事も騎士団の指揮も、私だけじゃなくリュカもすることになるのよ?
私が動けない時はリュカが代理になるんだから。
領主の勉強したり、騎士団に顔出したりしなきゃだめよ。」
「ミラージュが動けない時?」
「ほら…出産とか、その前後とか…。」
リュカとの結婚式を間近に控え、
そういうことが現実に見えてくると口に出すのが恥ずかしい。
思わず口ごもってしまったら、リュカにうれしそうに笑われた。
「そっか。そういうことか。
ミラージュがそんな可愛いこと言うなら、すぐにそうなりそうだな。
急いで勉強するよ。大丈夫、ちゃんと代わりになれるように頑張るよ。」
「…もう。」
これ以上話すのは恥ずかしくて顔を隠そうとしたら、
その両手をとられて、そのまま唇が重なる。
いつもよりも長く甘いくちづけに、されるがままに受け入れる。
こんな風にいつでも私に気持ちを見せてくれるリュカに、
王都での苦労もすべて消えていく気がした。
そのことにレイは気が付いた。
この婚約を子爵家のほうから解消することができないのはわかっている。
だけど、ローズマリーが死んだほうがましだと思っているのに、
命を助けてたとしても心を殺して嫁げというのは…。
それは、本当にローズマリーを助けたことになるのだろうか。
悩んだ結果、レイは自分の任務をすべて投げ出し、
俺も一緒に死ぬから来世で一緒になろうとローズマリーに想いを告げた。
二人が心中しようとしていることに監視が気がついてくれなかったら、
そのまま橋の上から二人は飛び降りて死んでいただろう。
気が付いた監視はすぐさま私のところへと報告に飛んできた。
さすがに心中するとは思っていなかったから驚いたが、
ローズマリーが死を選ぶ可能性はあると思っていた。
そうさせないために護衛と監視をつけていたのだが、
まさか護衛のレイとこうなるとは思わず、頭を抱えてしまった。
王女としては、公爵家のことに口を出すのも手を出すことも許されない。
シャルルに何度も警告をしていたのも幼馴染として許される範囲だ。
ぎりぎりまで迷ったが、シャルルが警告を聞いてくれることは無かった。
結局は知らなかったことにもできず、人目を避けて子爵家へと向かった。
子爵夫妻とローズマリーの兄にすべてを打ち明けたところ、
ローズマリーをそこまで追い詰めたことに三人とも泣き出してしまった。
自分たちがローズマリーを守ってやれなかったからだと。
公爵家の申し出があった時に、何としてでも断るべきだったと言い出した。
最初から身分が違いすぎて苦労するのはわかっていたようだ。
他に婚約者をたてて断ることも考えていたらしい。
結果的に公爵家の押しの強さに負けてしまったことを、ずっと後悔し続けていた。
このままローズマリーを死なせるくらいなら爵位を返上して、
他国へ家族全員で逃げてもいいと言い出したが、
それは公爵家の顔をつぶしてしまうことになり、
我が国と揉めることを厭って他国でも受け入れてもらえない可能性が高かった。
私が領主になる辺境伯で預からせてもらえないかと申し出ると、
子爵は涙を流したまま頭を深く下げられて託された。
「ミラージュ様、どうかよろしくお願いいたします」と。
こうして、ローズマリーとレイは私が預かることになった。
誰にも気が付かれないようにこっそりと辺境伯領へ送り届け、
二人を平民として生活できるようにした。
あの日、ローズマリーが飛び降りたと証言したのは、
姉のようにローズマリーを可愛がってきた侍女と私の手の者が扮した護衛だ。
あの日の裏側を知る者は、すべてローズマリーの味方だった。
シャルルや公爵家の仕打ちを十年も耐え続けてきたローズマリーが、
ついに限界をむかえてしまったのだと、真実を知っても口をつぐんだ。
どれだけシャルルが後悔して泣き叫んだとしても、
死を選ぶほどローズマリーを追い詰めていたのは事実だ。
私たちが手を出さなければ、ローズマリーは本当に死んでいたのだから。
もっと早く、最初から素直に好きだと言っていれば、
あの砂糖菓子のような笑顔はシャルルのものになったかもしれないのに。
「そういえば、リュカはもう侍従じゃないんだから、
こんな風に迎えに来なくてもいいのよ?」
「いや、俺の仕事はミラージュの補佐だろう?
今まで通り侍従の仕事もするつもりだぞ。」
「領主の仕事も騎士団の指揮も、私だけじゃなくリュカもすることになるのよ?
私が動けない時はリュカが代理になるんだから。
領主の勉強したり、騎士団に顔出したりしなきゃだめよ。」
「ミラージュが動けない時?」
「ほら…出産とか、その前後とか…。」
リュカとの結婚式を間近に控え、
そういうことが現実に見えてくると口に出すのが恥ずかしい。
思わず口ごもってしまったら、リュカにうれしそうに笑われた。
「そっか。そういうことか。
ミラージュがそんな可愛いこと言うなら、すぐにそうなりそうだな。
急いで勉強するよ。大丈夫、ちゃんと代わりになれるように頑張るよ。」
「…もう。」
これ以上話すのは恥ずかしくて顔を隠そうとしたら、
その両手をとられて、そのまま唇が重なる。
いつもよりも長く甘いくちづけに、されるがままに受け入れる。
こんな風にいつでも私に気持ちを見せてくれるリュカに、
王都での苦労もすべて消えていく気がした。
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