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4.ドワーレ公爵
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「ドワーレ公爵が来ている?」
「はい。姫に会って話したいと。どうされますか?」
「…きっとシャルルのことよね。いいわ。通して。」
シャルルの父、ドワーレ公爵が訪ねてきたのは、
ローズマリーが亡くなって二か月が過ぎた頃だった。
シャルルはあの件以来学園には来ておらず、屋敷に閉じこもっていた。
もうすぐ卒業パーティがあるが、シャルルが出席できるとは思えなかった。
シャルルがそんな状況なのは監視からの報告で知っているが、
ドワーレ公爵が私に何の用があるのかはわからなかった。
国王である父の従弟ではあるが、それほど王宮にくる人ではない。
わざわざ私に会いに王宮まで来たのだと思うが…。
「ミラージュ王女、久しぶりだね。
さすがトワイア王国の薔薇とも呼ばれるだけあって、ますます綺麗になったね。」
シャルルとそっくりな金髪水色の目のドワーレ公爵はつかみどころがない。
王弟だったドワーレ公爵の父は武芸に優れた人だったのだが、
ドワーレ公爵は先代公爵夫人に似て柔らかな貴公子という感じだ。
今も穏やかな微笑みを絶やさずにいるのだが、
あんなことがあったというのにあまり影響がなさそうな顔をしている。
こういう鈍感なところがやっぱり苦手だと思う。
もちろん、そんなことを顔に出したりはしないけれど。
「ドワーレ公爵も変わりないようね。
あまり王宮に来ない公爵が私を訪ねてくるだなんて、
今日はどうしたのかしら?」
「実は相談があって…。」
相談?まともに話したこともないような私に?
困ったことがあるなら、まずは父か宰相に言うべきだと思うのだけど…。
とりあえずは聞くけれど、こんな成人したばかりの王女に相談なんて。
「なにかしら。」
「シャルルと婚約してくれないか?」
「はぁ?」
私がシャルルと婚約?
何の冗談と思うけれど、公爵はそのまま話し続けている。
え?本気で言っているの!?
「陛下は良いと言ってくれなくてね。
でも、ミラージュ王女が良いと言えば考えてくれるんじゃないかな。」
「…ねぇ、ドワーレ公爵。
今、シャルルがなんて言われているか知ってる?
婚約者を大事にせずに追い詰めて殺した令息よ。
そんなところに王女が降嫁すると思っているの?」
「その噂は知っているよ。
だからこそ、ミラージュ王女に頼んでいるんだ。
シャルルは落ち込んでしまって、食事も満足に取らない。
これでは他の婚約者を探すどころじゃない。
ミラージュ王女ならシャルルを支えて立ち直らせることができるだろう?」
良い案に違いないといった笑顔でシャルルとの婚約を申し出る公爵に、
侍従や護衛、侍女たちからまで殺気が飛んでくる。
それには全く気が付きもせずにのんきに話し続ける公爵に呆れてしまう。
それにしても…自分たちのしたことにまだ気が付かないとは。
こみあげてくる怒りを抑えようと、ぎゅっと手を握り締める。
「…何のために、なの?」
「え?」
「私は何度も忠告したわ。
見かねてローズマリーを助けたのは数回どころじゃなかった。
あまりにもひどすぎて、とても見ていられなかった。
そのひどすぎて、の中にはドワーレ公爵あなたがたも含まれているのよ。
公爵も公爵夫人も使用人たちも、誰一人ローズマリーを助けようとしなかった。
ああなる前にシャルルを諫めていたら、令嬢たちの家に抗議していたら、
公爵が力になってあげていたら、こうならなかったかもしれないのに。」
「そ、それは…。」
「なのに私にシャルルを助けろっていうの?
ローズマリーを助けなかったくせに?」
「はい。姫に会って話したいと。どうされますか?」
「…きっとシャルルのことよね。いいわ。通して。」
シャルルの父、ドワーレ公爵が訪ねてきたのは、
ローズマリーが亡くなって二か月が過ぎた頃だった。
シャルルはあの件以来学園には来ておらず、屋敷に閉じこもっていた。
もうすぐ卒業パーティがあるが、シャルルが出席できるとは思えなかった。
シャルルがそんな状況なのは監視からの報告で知っているが、
ドワーレ公爵が私に何の用があるのかはわからなかった。
国王である父の従弟ではあるが、それほど王宮にくる人ではない。
わざわざ私に会いに王宮まで来たのだと思うが…。
「ミラージュ王女、久しぶりだね。
さすがトワイア王国の薔薇とも呼ばれるだけあって、ますます綺麗になったね。」
シャルルとそっくりな金髪水色の目のドワーレ公爵はつかみどころがない。
王弟だったドワーレ公爵の父は武芸に優れた人だったのだが、
ドワーレ公爵は先代公爵夫人に似て柔らかな貴公子という感じだ。
今も穏やかな微笑みを絶やさずにいるのだが、
あんなことがあったというのにあまり影響がなさそうな顔をしている。
こういう鈍感なところがやっぱり苦手だと思う。
もちろん、そんなことを顔に出したりはしないけれど。
「ドワーレ公爵も変わりないようね。
あまり王宮に来ない公爵が私を訪ねてくるだなんて、
今日はどうしたのかしら?」
「実は相談があって…。」
相談?まともに話したこともないような私に?
困ったことがあるなら、まずは父か宰相に言うべきだと思うのだけど…。
とりあえずは聞くけれど、こんな成人したばかりの王女に相談なんて。
「なにかしら。」
「シャルルと婚約してくれないか?」
「はぁ?」
私がシャルルと婚約?
何の冗談と思うけれど、公爵はそのまま話し続けている。
え?本気で言っているの!?
「陛下は良いと言ってくれなくてね。
でも、ミラージュ王女が良いと言えば考えてくれるんじゃないかな。」
「…ねぇ、ドワーレ公爵。
今、シャルルがなんて言われているか知ってる?
婚約者を大事にせずに追い詰めて殺した令息よ。
そんなところに王女が降嫁すると思っているの?」
「その噂は知っているよ。
だからこそ、ミラージュ王女に頼んでいるんだ。
シャルルは落ち込んでしまって、食事も満足に取らない。
これでは他の婚約者を探すどころじゃない。
ミラージュ王女ならシャルルを支えて立ち直らせることができるだろう?」
良い案に違いないといった笑顔でシャルルとの婚約を申し出る公爵に、
侍従や護衛、侍女たちからまで殺気が飛んでくる。
それには全く気が付きもせずにのんきに話し続ける公爵に呆れてしまう。
それにしても…自分たちのしたことにまだ気が付かないとは。
こみあげてくる怒りを抑えようと、ぎゅっと手を握り締める。
「…何のために、なの?」
「え?」
「私は何度も忠告したわ。
見かねてローズマリーを助けたのは数回どころじゃなかった。
あまりにもひどすぎて、とても見ていられなかった。
そのひどすぎて、の中にはドワーレ公爵あなたがたも含まれているのよ。
公爵も公爵夫人も使用人たちも、誰一人ローズマリーを助けようとしなかった。
ああなる前にシャルルを諫めていたら、令嬢たちの家に抗議していたら、
公爵が力になってあげていたら、こうならなかったかもしれないのに。」
「そ、それは…。」
「なのに私にシャルルを助けろっていうの?
ローズマリーを助けなかったくせに?」
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