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5 夕焼けの教室
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――…………
――……
夕焼けに染まる教室で、クラスメイトが泣いていた。
学年が上がり、クラス変えが行われた直後のことだっただろうか。
とにかく、クラスメイト…… 水越くんが、泣いていたんだ。
窓際の自分の席に座って、項垂れて、目を擦り、嗚咽を漏らしていた。
僕はその時に、水越くんに声をかけた。
その時に、水越くんと初めて話をした。
「どうしたの? 泣いてるの?」
「――ッ!?」
水越くんは驚いたように身体をビクつかせ、目を見開いて僕を見た。
泣くのに夢中で、僕が教室に居るのに気づかなかったのだろう。
「なにかあったの?」
「き、君は……」
「あ、僕、稲葉……。同じクラスだけど、僕、影薄いから知らないかな? あはは」
「…………」
「えっと、誰かにいじめられでもした?」
「ぼ、僕は…………
…………僕は、汚されちゃったんだ」
「汚された?」
「もう僕を愛してくれる人は居ないんだ。こんな僕は誰からも愛されないんだ」
「……え、えっとぉ、辛かったんだね?」
「…………うん。
もう、自分がなんで生きてるのかも分からないんだ。愛されたい」
「愛されたい? 君は結構モテるんじゃないの。綺麗な顔してるし」
「そんなことない。誰も僕を愛してくれない」
「ふーん。じゃあ、僕が愛してあげよっか」
「え?」
「ふふ、なんてね」
「…………」
ああ、そうだった。思い出した。
僕は、そんな風に言ったんだ。
君は、その時の僕の言葉を本気にしてしまったんだね。
僕は、ちょっとした冗談のつもりだったのだけれど。
君は、僕のその言葉が、本気で嬉しかったんだね?
だから、僕を、好きになってしまったんだね。
――……
夕焼けに染まる教室で、クラスメイトが泣いていた。
学年が上がり、クラス変えが行われた直後のことだっただろうか。
とにかく、クラスメイト…… 水越くんが、泣いていたんだ。
窓際の自分の席に座って、項垂れて、目を擦り、嗚咽を漏らしていた。
僕はその時に、水越くんに声をかけた。
その時に、水越くんと初めて話をした。
「どうしたの? 泣いてるの?」
「――ッ!?」
水越くんは驚いたように身体をビクつかせ、目を見開いて僕を見た。
泣くのに夢中で、僕が教室に居るのに気づかなかったのだろう。
「なにかあったの?」
「き、君は……」
「あ、僕、稲葉……。同じクラスだけど、僕、影薄いから知らないかな? あはは」
「…………」
「えっと、誰かにいじめられでもした?」
「ぼ、僕は…………
…………僕は、汚されちゃったんだ」
「汚された?」
「もう僕を愛してくれる人は居ないんだ。こんな僕は誰からも愛されないんだ」
「……え、えっとぉ、辛かったんだね?」
「…………うん。
もう、自分がなんで生きてるのかも分からないんだ。愛されたい」
「愛されたい? 君は結構モテるんじゃないの。綺麗な顔してるし」
「そんなことない。誰も僕を愛してくれない」
「ふーん。じゃあ、僕が愛してあげよっか」
「え?」
「ふふ、なんてね」
「…………」
ああ、そうだった。思い出した。
僕は、そんな風に言ったんだ。
君は、その時の僕の言葉を本気にしてしまったんだね。
僕は、ちょっとした冗談のつもりだったのだけれど。
君は、僕のその言葉が、本気で嬉しかったんだね?
だから、僕を、好きになってしまったんだね。
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