狂い狂って狂わせて

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動物園自体は空いていたけど、帰りの電車は打って変わって混んでいた。
おそらく学生の下校と、それからサラリーマンやOLの退勤と重なったのだろう。

「浬、大丈夫か……?」

車内はぎゅうぎゅうに人が詰まっている。
俺は背が高いお陰でそこまで苦には感じないが、浬くらいだとやはり苦しいのだろうか。
眉間に皺を寄せ、俺の胸にぎゅっとしがみ付いている。
後ろの人に押されて、俺と浬は完全に密着しきっている。

「んっ……はぁ……」

「か、浬…………?」

「はぁ……く……」

浬は頬を火照らせ、息を荒くしていて、なんというか苦しいというよりは……


「あんっ……」

「わっ……」


電車が急激に揺れると同時に、浬が高い声をあげる。


「く、くーちゃん……っ」

「浬……?」

俺の服を握って、上目使いで見つめてくる。
涙がたっぷり溜まった瞳は色っぽくて、不覚にもドキドキした。


「くーちゃん、オレ…………痴漢されてる……」

「えぇ……!? え、ちょ……えぇ……」

「ひゃ……ど、どうしよ……あっ」

「…………っ」


俺の胸にしがみ付きながら、小さく喘ぐ浬。
車内はぎゅうぎゅうで、身動き一つとれない。どうする事もできない。


「あ……あっ……くーちゃんっ」

車内が揺れた瞬間、浬の足が俺の股間を刺激する。
半起ちのそこを、ぐりぐりと程よい力加減で押される。
揺れに紛れて、わざとやっているような気がしなくもない。

「…………んっ」

「くーちゃん、なんで勃ってるの?」

「…………!?
 あ、ご、ごめ……浬っ、次の駅で、降りよう」

「…………うん」






人混みを掻き分けて、なんとか電車から降りた。

「はぁ……はぁ……浬、大丈夫か?」

「うん。っていうかそっちこそ、大丈夫?」

浬が、楽しそうに、不敵に笑っている。
この駅で降りるまで、浬は俺の股間を執拗に弄び続けた。
先走りで下着がぐちゃぐちゃになって気持ち悪い。


「痴漢って嘘……?」

「うん。これがしたくて今日、誘ったんだよ」

「そ、そんな……」


先程の「楽しかった」と言って笑っていた浬はなんだったんだろう。
演技だったのだろうか。
なんだか少し、裏切られた気分だ。


「あの動物園の駅からこの時間帯の下りの電車、すっごい混むんだよ。
 どう? 結構楽しかったでしょ?」

「た、楽しくないよ……」

「嘘だ~。気持ち良かったくせにっ」

「…………っ」

「あとね、この駅のトイレ、発展場なんだって!」

「は、発展場……!?」

「凄いよね、発展場だよ? 発展場! 寄って行こうよ!
 誰か居たら捕まえて3Pしようよ!」

「はぁ……!?」

「ね、行こうよ! きっと楽しいよ!」

「…………」

「ね、行くよね? 行こうよ!」

「…………う、うん」

中途半端に浬に遊ばれた俺の身体は未だ火照ったままで、このままでは帰れそうにない。
俺は黙って、頷くしかなかった。

俺はいつも浬の言いなりで、自分の意見がない。
浬に依存されなくなるのが怖くて、浬の機嫌を損ねまいとしている。
本当に飼い主に従順なペットみたいだ。
もしかしたら本当に依存しているのは、浬じゃなくて俺なのかもしれない。




「うわ、何ココ……暗っ」

「電気、壊れてるのか……」

浬と話しているうちにいつの間にか日が暮れてしまって、トイレの中も外も真っ暗だった。
証明が壊れているらしく、トイレそのものの古さも相まってなんとも不気味な雰囲気だ。
此処が発展場というのはどうやら本当らしく、トイレ中に雄の臭いが充満していた。

「超精液の臭いすんね。あっはは、たまんねー。
 誰もいないっぽいのはちょっと残念だけど、まあ貸し切りってコトで」






「…………ん……あ、浬ッ……」

狭い個室で後ろから浬に突かれて、身を捩って快感に耐えた。
肌を打ちつける音と、ぐちゃぐちゃという卑猥な音がトイレ中に響いている。

「空也、気持ちい?」

「はぁっ……あ……」

「気持ちいいって言って。
 言ってくんなきゃわかんないっ」

「んっ……はっ……気持ちい、よ……浬っ……」


浬に抱かれていると、本当は俺が浬を抱きたいと思っている事が嘘のように思えてくる。
浬と他の男とのセックスに興奮したのは事実だけど、実際に俺が抱きたいという欲望は昔より薄れたように思う。
どんな形であれ、浬と繋がる事によって欲望が満たされているというわけだろうか。


「んあぁっ」


腸内を掻き回されながら、同時に前も弄られる。
先端を乱暴に擦られて、声を抑えるのも忘れて快感に耐えた。
発展場とはいえ、いつ誰が入ってくるか分からないのに。
声も卑猥な音も、全く抑えられる気がしない。


「くーちゃん、いつもより興奮してる?
 外でヤるの好きなの?」

「んっ……あっ、す、好き……ぁああぁあっ!?」


浬のペニスがぐりぐりと一際感じる部分を責め立てる。
おかしくなりそうな程の快感に全身が支配される。

「あっ、あっはは……くーちゃんのケツまんこ……凄い、ぎゅうぎゅう絞めつけてきて、超エロイよっ!
 そんなにオレが好き? それともチンコが好きなの?」

「ああっ、浬ッ!浬、が……っ、か、浬……好き、好きだよ……あっ、あぁッ」

「ん……オレも、好きだよっ……空也が、世界で一番ッ……」

「んっ……んぅ……っ!」


好き、と言われると、胸が熱くなる。
浬に必要とされる事が嬉しくてたまらない。


「ああっ、ああぁ……!」

「ん、ん……っ、はぁっ……」

ペニスがドクドクと大きく脈打って、俺の汚い精液がトイレの壁や床に向かってぶちまけられる。
それと同時に、腸内に熱いものが注ぎ込まれるのを感じる。


「あ……あッ……」

浬の精子……。
浬が俺なんかで、ちゃんと気持ちよくなってくれているのが嬉しい。
きっと沢山の変態が欲しているであろう、浬の精液が俺の体内に入ってくる。
考えただけでゾクゾクする。
その事実だけで、絶頂に似た快感を得る事ができる。


「あっ、んあ……ひぁ……っ」


本当に再びイってしまいそうだ。
今この瞬間だけは、浬は俺だけのものなんだ。
浬を抱きたいと思う男や、実際に抱く男は沢山いるけれど、逆に浬に抱かれる事ができるのはきっと俺だけなんだ。
俺はやっぱり、特別なんだ。
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