狂い狂って狂わせて

粒豆

文字の大きさ
上 下
9 / 13

9

しおりを挟む
――5月16日

街で、浬の買い物に付き合う。
今日はよく晴れていて、温かい。


「くーちゃん、もうすぐ誕生日だね」

「そうだっけ……」

「20日だろ? なんで自分の誕生日忘れちゃうワケ?」

「ごめん」
「21歳か~。
 いいなぁ、オレも早く成人したいなぁ」

「なんで? 若い方がいいじゃん」

「子供はラブホとか入れないじゃん。アダルトグッズも買えないし。
 それに何より、大人の人とセックスするのが犯罪みたいに言われるのが嫌なんだよ」

「…………」

「別に恋愛なんか自由じゃんね。くーちゃんがショタコンとか言われたら嫌だなー」

「…………あ、うん」

「あ、オレ、大人になったらAVに出たいな」

「は……?」

「あ、勿論オレが主役のヤツね。ゲイ向けの。
 AVを見た沢山の変態が、オレでシコるんだよ。それってサイコーだよ!」


――なんか矛盾してないか?
ショタコンと言われたら嫌なのに、自分で変態と言うのはいいのか。
基準が分からないな。

「大人になったら今よりいっぱい、愛して貰えるのになー。
 あ、でも、オレのコトが好きな人は、子供が好きなのかな……」

「大人でも子供でも、浬は浬だろ。俺は変わらずずっと、お前の事が好きだよ」

「くーちゃん…… ありがとう。嬉しい。20日、お祝いするね」

「ああ、ありがとう」

「でもオレ、お金ないから、いっぱいセックスしよう!」

「う、うん……」

「何されたい? なんでもしたげる。
 SM?スカトロ? オレ、くーちゃんならなんでもいいよ!」

「うん……」

お金がないという事は、援交みたいな事はしていないのかな。
その事に、少しだけ安心感を覚える。


浬と腕を組みながら、特に目的もなく街をふらついた。
時折、周りの人達が浬に向かって「あの子かわいい」等と言っている声が耳に入る。
ナンパの如く声を掛けて来る奴も居て、歩いていただけなのにどっと疲れた。
浬と歩くと、無駄に目立ってしまう。

「ねぇ、くーちゃんはさ、オレと歩くの嫌じゃない?」

「え、なんで?」

「だってどう見ても釣り合ってないでしょ」

「…………え」

「くーちゃんって地味じゃん。全然格好良くない」

「え……あ、ああ、うん、ごめん。
 浬が嫌なら、離れて歩くよ」

「あ、別に嫌みで言ってるワケじゃないんだよ? オレは別に気にしないしね」

「……そうか?」

「ただくーちゃんが気にしてたら嫌だなって思っただけ」

「浬がいいなら、俺も大丈夫だよ」

「はぁ……空也っていっつもそう。
 浬がいいなら~とか浬が大丈夫なら~って、自分の意見はないワケ?オレはお前に質問してんだよ」

「え……ごめん」

「ああ、もう、いいからさ、喉乾いた。お茶買って来て」

「……うん」







そこらへんの自販機で二人分のお茶を買って、浬の元に帰る。

「…………あ」

浬が、知らない誰かと話をしていた。
スーツを着ている、仕事中のサラリーマンといった感じの男だ。


「はぁ!? お前がぶつかって来たんだろ!?」

「いやテメェだろうがよ、先にぶつかってきたのは!」

「知らねーよハゲ! 死ね!」

「な……!? このクソガキ!」


――浬が絡まれている。
さっさと謝れば済む物の、浬の性格からして謝るなんていう選択肢は存在しないのだろうな。
浬の口の悪さも相まって、相当厄介な事になっていそうだ。
相手の男は、体格がよく厳つくて、見るからにやばそうだ。


「とにかく、謝るのはそっちだろ!? 土下座して靴舐めたら許してやるよ。
 言っとくけどさー、オレ、ヤクザと繋がりあるからね」


浬はやはり謝る気はないようで、相手の神経を逆なで続ける。

――助けなければ。迷っている場合じゃない。

考えている暇はない。

「か、浬!」

「あ、くーちゃん」

「すみません……!」

浬と男の元に飛び出して行き、男に勢いよく頭を下げる。

「な、なに謝ってんだよ! 悪いのはそのおっさんだって!」

「浬、ちょっと黙ってろ」

「は…………!?」

「本当にすみませんでした」

「チッ……もいいよ。めんどくせぇ」

そう言うと、男は早歩きで去って行った。
こういう時は、どちらが悪いとかは関係なくて、さっさと謝ってしまうべきなんだ。
心のこもっていない薄っぺらい謝罪で済むのなら、安いものじゃないか。


「クソうざい! なんで謝るかなぁ!?」

「ごめん……」

「空也っていつも謝ってばっかり!
 オレ、お前のそういうトコが嫌いなんだって、いつも言ってるよね!?」

「…………だってさ……」

「うるさい! もう喋んなくていい!
 っていうかオレ帰る!買い物とかいう気分じゃなくなったし。
 誕生日も祝ってやんないから!」

「…………うん」

「フンッ……大嫌いだ!!」

「…………痛っ!?」

俺の頬を思いっきり打つと、浬は走ってどこかへ行ってしまった。
俺の選択は間違っていたのかな。
だけど腕力も度胸もなければ、頭もよくない俺には、ああやって謝るくらいしか解決法が思いつかない。
あの男を格好良くやっつけて、逆に浬に謝罪させるくらい出来たらいいのだけど……
そんなのは夢のまた夢の話だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

監禁した高校生をめちゃくちゃにする話

てけてとん
BL
気に入ったイケメン君を監禁してめちゃくちゃにする話です。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

温泉でイこう!~イきまくり漏らしまくりの超羞恥宴会芸~

市井安希
BL
男子大学生がノリでエッチな宴会芸に挑戦する話です。 テーマは明るく楽しいアホエロ お下品、ハート喘ぎ、おもらし等

体育倉庫で不良に犯された学級委員の話

煉瓦
BL
以前撮られたレイプ動画を材料に脅迫された学級委員が、授業中に体育倉庫で不良に犯される話です。最終的に、動画の削除を条件に学級委員は不良の恋人になることを了承します。 ※受けが痛がったりして結構可哀想な感じなので、御注意ください。

潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話

あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは マフィアのボスの愛人まで潜入していた。 だがある日、それがボスにバレて、 執着監禁されちゃって、 幸せになっちゃう話 少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に メロメロに溺愛されちゃう。 そんなハッピー寄りなティーストです! ▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、 雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです! _____ ▶︎タイトルそのうち変えます 2022/05/16変更! 拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話 ▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です 2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。   ▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎ _____

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

嫌がる繊細くんを連続絶頂させる話

てけてとん
BL
同じクラスの人気者な繊細くんの弱みにつけこんで何度も絶頂させる話です。結構鬼畜です。長すぎたので2話に分割しています。

処理中です...