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――5月16日
街で、浬の買い物に付き合う。
今日はよく晴れていて、温かい。
「くーちゃん、もうすぐ誕生日だね」
「そうだっけ……」
「20日だろ? なんで自分の誕生日忘れちゃうワケ?」
「ごめん」
「21歳か~。
いいなぁ、オレも早く成人したいなぁ」
「なんで? 若い方がいいじゃん」
「子供はラブホとか入れないじゃん。アダルトグッズも買えないし。
それに何より、大人の人とセックスするのが犯罪みたいに言われるのが嫌なんだよ」
「…………」
「別に恋愛なんか自由じゃんね。くーちゃんがショタコンとか言われたら嫌だなー」
「…………あ、うん」
「あ、オレ、大人になったらAVに出たいな」
「は……?」
「あ、勿論オレが主役のヤツね。ゲイ向けの。
AVを見た沢山の変態が、オレでシコるんだよ。それってサイコーだよ!」
――なんか矛盾してないか?
ショタコンと言われたら嫌なのに、自分で変態と言うのはいいのか。
基準が分からないな。
「大人になったら今よりいっぱい、愛して貰えるのになー。
あ、でも、オレのコトが好きな人は、子供が好きなのかな……」
「大人でも子供でも、浬は浬だろ。俺は変わらずずっと、お前の事が好きだよ」
「くーちゃん…… ありがとう。嬉しい。20日、お祝いするね」
「ああ、ありがとう」
「でもオレ、お金ないから、いっぱいセックスしよう!」
「う、うん……」
「何されたい? なんでもしたげる。
SM?スカトロ? オレ、くーちゃんならなんでもいいよ!」
「うん……」
お金がないという事は、援交みたいな事はしていないのかな。
その事に、少しだけ安心感を覚える。
浬と腕を組みながら、特に目的もなく街をふらついた。
時折、周りの人達が浬に向かって「あの子かわいい」等と言っている声が耳に入る。
ナンパの如く声を掛けて来る奴も居て、歩いていただけなのにどっと疲れた。
浬と歩くと、無駄に目立ってしまう。
「ねぇ、くーちゃんはさ、オレと歩くの嫌じゃない?」
「え、なんで?」
「だってどう見ても釣り合ってないでしょ」
「…………え」
「くーちゃんって地味じゃん。全然格好良くない」
「え……あ、ああ、うん、ごめん。
浬が嫌なら、離れて歩くよ」
「あ、別に嫌みで言ってるワケじゃないんだよ? オレは別に気にしないしね」
「……そうか?」
「ただくーちゃんが気にしてたら嫌だなって思っただけ」
「浬がいいなら、俺も大丈夫だよ」
「はぁ……空也っていっつもそう。
浬がいいなら~とか浬が大丈夫なら~って、自分の意見はないワケ?オレはお前に質問してんだよ」
「え……ごめん」
「ああ、もう、いいからさ、喉乾いた。お茶買って来て」
「……うん」
そこらへんの自販機で二人分のお茶を買って、浬の元に帰る。
「…………あ」
浬が、知らない誰かと話をしていた。
スーツを着ている、仕事中のサラリーマンといった感じの男だ。
「はぁ!? お前がぶつかって来たんだろ!?」
「いやテメェだろうがよ、先にぶつかってきたのは!」
「知らねーよハゲ! 死ね!」
「な……!? このクソガキ!」
――浬が絡まれている。
さっさと謝れば済む物の、浬の性格からして謝るなんていう選択肢は存在しないのだろうな。
浬の口の悪さも相まって、相当厄介な事になっていそうだ。
相手の男は、体格がよく厳つくて、見るからにやばそうだ。
「とにかく、謝るのはそっちだろ!? 土下座して靴舐めたら許してやるよ。
言っとくけどさー、オレ、ヤクザと繋がりあるからね」
浬はやはり謝る気はないようで、相手の神経を逆なで続ける。
――助けなければ。迷っている場合じゃない。
考えている暇はない。
「か、浬!」
「あ、くーちゃん」
「すみません……!」
浬と男の元に飛び出して行き、男に勢いよく頭を下げる。
「な、なに謝ってんだよ! 悪いのはそのおっさんだって!」
「浬、ちょっと黙ってろ」
「は…………!?」
「本当にすみませんでした」
「チッ……もいいよ。めんどくせぇ」
そう言うと、男は早歩きで去って行った。
こういう時は、どちらが悪いとかは関係なくて、さっさと謝ってしまうべきなんだ。
心のこもっていない薄っぺらい謝罪で済むのなら、安いものじゃないか。
「クソうざい! なんで謝るかなぁ!?」
「ごめん……」
「空也っていつも謝ってばっかり!
オレ、お前のそういうトコが嫌いなんだって、いつも言ってるよね!?」
「…………だってさ……」
「うるさい! もう喋んなくていい!
っていうかオレ帰る!買い物とかいう気分じゃなくなったし。
誕生日も祝ってやんないから!」
「…………うん」
「フンッ……大嫌いだ!!」
「…………痛っ!?」
俺の頬を思いっきり打つと、浬は走ってどこかへ行ってしまった。
俺の選択は間違っていたのかな。
だけど腕力も度胸もなければ、頭もよくない俺には、ああやって謝るくらいしか解決法が思いつかない。
あの男を格好良くやっつけて、逆に浬に謝罪させるくらい出来たらいいのだけど……
そんなのは夢のまた夢の話だ。
街で、浬の買い物に付き合う。
今日はよく晴れていて、温かい。
「くーちゃん、もうすぐ誕生日だね」
「そうだっけ……」
「20日だろ? なんで自分の誕生日忘れちゃうワケ?」
「ごめん」
「21歳か~。
いいなぁ、オレも早く成人したいなぁ」
「なんで? 若い方がいいじゃん」
「子供はラブホとか入れないじゃん。アダルトグッズも買えないし。
それに何より、大人の人とセックスするのが犯罪みたいに言われるのが嫌なんだよ」
「…………」
「別に恋愛なんか自由じゃんね。くーちゃんがショタコンとか言われたら嫌だなー」
「…………あ、うん」
「あ、オレ、大人になったらAVに出たいな」
「は……?」
「あ、勿論オレが主役のヤツね。ゲイ向けの。
AVを見た沢山の変態が、オレでシコるんだよ。それってサイコーだよ!」
――なんか矛盾してないか?
ショタコンと言われたら嫌なのに、自分で変態と言うのはいいのか。
基準が分からないな。
「大人になったら今よりいっぱい、愛して貰えるのになー。
あ、でも、オレのコトが好きな人は、子供が好きなのかな……」
「大人でも子供でも、浬は浬だろ。俺は変わらずずっと、お前の事が好きだよ」
「くーちゃん…… ありがとう。嬉しい。20日、お祝いするね」
「ああ、ありがとう」
「でもオレ、お金ないから、いっぱいセックスしよう!」
「う、うん……」
「何されたい? なんでもしたげる。
SM?スカトロ? オレ、くーちゃんならなんでもいいよ!」
「うん……」
お金がないという事は、援交みたいな事はしていないのかな。
その事に、少しだけ安心感を覚える。
浬と腕を組みながら、特に目的もなく街をふらついた。
時折、周りの人達が浬に向かって「あの子かわいい」等と言っている声が耳に入る。
ナンパの如く声を掛けて来る奴も居て、歩いていただけなのにどっと疲れた。
浬と歩くと、無駄に目立ってしまう。
「ねぇ、くーちゃんはさ、オレと歩くの嫌じゃない?」
「え、なんで?」
「だってどう見ても釣り合ってないでしょ」
「…………え」
「くーちゃんって地味じゃん。全然格好良くない」
「え……あ、ああ、うん、ごめん。
浬が嫌なら、離れて歩くよ」
「あ、別に嫌みで言ってるワケじゃないんだよ? オレは別に気にしないしね」
「……そうか?」
「ただくーちゃんが気にしてたら嫌だなって思っただけ」
「浬がいいなら、俺も大丈夫だよ」
「はぁ……空也っていっつもそう。
浬がいいなら~とか浬が大丈夫なら~って、自分の意見はないワケ?オレはお前に質問してんだよ」
「え……ごめん」
「ああ、もう、いいからさ、喉乾いた。お茶買って来て」
「……うん」
そこらへんの自販機で二人分のお茶を買って、浬の元に帰る。
「…………あ」
浬が、知らない誰かと話をしていた。
スーツを着ている、仕事中のサラリーマンといった感じの男だ。
「はぁ!? お前がぶつかって来たんだろ!?」
「いやテメェだろうがよ、先にぶつかってきたのは!」
「知らねーよハゲ! 死ね!」
「な……!? このクソガキ!」
――浬が絡まれている。
さっさと謝れば済む物の、浬の性格からして謝るなんていう選択肢は存在しないのだろうな。
浬の口の悪さも相まって、相当厄介な事になっていそうだ。
相手の男は、体格がよく厳つくて、見るからにやばそうだ。
「とにかく、謝るのはそっちだろ!? 土下座して靴舐めたら許してやるよ。
言っとくけどさー、オレ、ヤクザと繋がりあるからね」
浬はやはり謝る気はないようで、相手の神経を逆なで続ける。
――助けなければ。迷っている場合じゃない。
考えている暇はない。
「か、浬!」
「あ、くーちゃん」
「すみません……!」
浬と男の元に飛び出して行き、男に勢いよく頭を下げる。
「な、なに謝ってんだよ! 悪いのはそのおっさんだって!」
「浬、ちょっと黙ってろ」
「は…………!?」
「本当にすみませんでした」
「チッ……もいいよ。めんどくせぇ」
そう言うと、男は早歩きで去って行った。
こういう時は、どちらが悪いとかは関係なくて、さっさと謝ってしまうべきなんだ。
心のこもっていない薄っぺらい謝罪で済むのなら、安いものじゃないか。
「クソうざい! なんで謝るかなぁ!?」
「ごめん……」
「空也っていつも謝ってばっかり!
オレ、お前のそういうトコが嫌いなんだって、いつも言ってるよね!?」
「…………だってさ……」
「うるさい! もう喋んなくていい!
っていうかオレ帰る!買い物とかいう気分じゃなくなったし。
誕生日も祝ってやんないから!」
「…………うん」
「フンッ……大嫌いだ!!」
「…………痛っ!?」
俺の頬を思いっきり打つと、浬は走ってどこかへ行ってしまった。
俺の選択は間違っていたのかな。
だけど腕力も度胸もなければ、頭もよくない俺には、ああやって謝るくらいしか解決法が思いつかない。
あの男を格好良くやっつけて、逆に浬に謝罪させるくらい出来たらいいのだけど……
そんなのは夢のまた夢の話だ。
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