狂い狂って狂わせて

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――5月15日


浬に誘われて一緒に風呂に入る。
浬の母は今日もいない。
なんでも好きな事ができる。
とは言っても朝には帰ってくるだろうから、あまり長居はできないが。

湯船に二人で入ると、流石に少し窮屈だ。
時折浬の柔らかな肌に、腕や足がぶつかってドキドキした。
不健康な程に細く白い肌が眩しい。

「何見てんだよ」

「え、いや……っ」

浬が俺を挑発的に睨み付け、少し距離を詰める。
しなやかな指が、俺の頬に延ばされる。
腕には相変わらず、生々しいリストカットの痕があった。
綺麗な肌をこんな風に傷つけて、勿体ないな。

息が掛かりそうな程の距離に浬が居る。
こうして見ると、浬は驚くほどに美人だった。
完璧すぎる程に整った顔立ち。
キメ細やかな肌。綺麗な色の瞳。
そして、いやらしく俺の頬や耳の辺りを撫でるしなやかな指……
その全てが俺を魅了し、胸を高鳴らせる。


「空也。覚えてる?」

「な……に、を……?」

「オレと空也が、初めてえっちな事した時のこと」

「…………っ」

浬の言葉を聞いて、身体が強張る。

「その反応は、ちゃんと覚えてるんだね?」

「…………」

俺の浬に対する気持ちが恋だと気付いたのは、小学校高学年の時。
クラスメイトと好きな女の子の話題になった時、自分の中にある違和感に気が付いた。
俺は女の子に興味がない。

――浬が好きなんだ、と。

周りの友達が女の子に持つような性的興奮や興味を、浬に対して抱いている。
その事に気が付いた。……気付いてしまった。
高学年にもなれば、その手の知識も徐々に見に付いてくる。
俺が浬に向けた想いは、純粋な好意だけではなかった。

芽生え始めたばかりの、性欲。

性欲は人間の本能なのに、どうしてこんなに汚い物のように感じるのだろう。

……相手が浬だから?

俺の欲望の対象が、同年代の女性だったのなら、俺はこんなに苦しまなくて済んだのか。
そんな事を、浬に恋をしていると気付いたあの日から今日までずっと、考え続けている。
だけどいくら考えても、答えはでなかった。
幼い頃の浬は、うちに泊まる事も多かった。
母親が夜、家に帰って来ないのだから、仕方がない。
浬がうちに泊まる時、必ずと言っていいほど一緒に風呂に入った。
恋という自覚がなかった頃から既に、浬の裸に妙に興味を持っていた事を覚えている。
思い出すだけで死にたくなるが、身体を洗ってやる時にわざと触ったりしていた。
子供の性欲というのは自覚がない分、ストレートで恐ろしい。



「シたっていうか、されたのかな……」

「…………っ」

浬が俺の耳に口を寄せ、息を吹きかけながら囁く。
風呂のお湯で火照った身体が、更に熱くなる。


「ごめん……」

「なんで謝るの? 悪いコトをした、とでも思ってんの?」


俺より五歳年下で、まだ大人の事は何も知らなかった無垢な浬……
そんな浬を、俺が汚した。

子供ながらに立派に勃起したソレを、

浬が何も分からないのを良い事に、握らせて擦らせた。

「痛いから直してほしい」なんて適当な事を言って、触らせて、舐めさせた。
浬と風呂に入る度にして貰うその行為に、幼い俺はすっかり夢中になっていた。
キスをして、触り合って、自分の中の欲望を満たした。
言い訳染みているけれど、当時の俺には本当に悪気はなかったんだ。
ただ浬が好きで、浬と気持ちいい事がしたかった。それだけだった。
俺が中学に上がる時に「いけない事をしている」という自覚が湧いて来て、浬と風呂に入るのを辞めた。
背徳感と罪悪感が混じり合った感情をオカズにして、一人で抜くようになった。
そして色々していた俺達だけど、前戯だけで、決して挿入はしなかった。
最後までする事になるのは、もう少し後の事だ。
これは、罪悪感があったからではない。
幼い俺が単純に、男同士でのやり方が分からなかったというだけの事だ。
浬が女だったなら、きっと最後までしていたのだと思う。
我ながら最低で、思い出すと吐き気がする。



「はっ……あっ……ぁ」

「ん……む……空也って昔から変態だったよね」

「ん……っ」

耳を甘噛みされ、声が漏れる。
風呂場中に自分の変な声が響いて、羞恥心が込み上げてくる。

「普通、オレみたいなガキに興奮する?
 しないでしょ。趣味悪過ぎ」

「ごめん……ごめんな……」

「別に。空也だけが変なワケじゃないし。
 オレの周りって、昔から空也みたいなヤツばっか。
 みんなオレのコト変な目でみてくんの。笑っちゃうよね」

「…………」

「ね、身体洗ってあげる」

「え…………」

「昔、くーちゃんがよくオレのコト洗ってくれたでしょ?
 今日は俺が洗ってやるよ」

「…………」








「わあっ、冷たいよ、浬っ……!」

「うっさいなー、我慢しろって」

冷たいボディソープを背中に直接垂らされる。
掌でボディソープを背中中に塗りたくられ、冷たかった液体が徐々に体温に馴染んでいく。

「ん……っ」

どこかいやらしい手つきに、無意識に吐息が漏れた。

「昔のくーちゃんってこんな感じだったよね。
 どさくさに紛れてこんな風にさ……」

「んっ……!?」

背中を這っていた浬の手が胸に回され、ソープ塗れの手で胸の突起をきゅっと摘まむ。
ぬるぬるとしたボディソープを肌に馴染ませるように愛撫されて、声を抑えられなくなった。


「あっ……は、浬ッ……」

「洗うふりして、乳首とかお尻とか触ってきたよね。あ、ここもだったかな?」

「んん……っ、あ、痛っ……い、痛、いって……ッ」


ペニスに延ばされた浬の手が、尿道部分に添えられ、指でぐりぐりと穴を刺激される。
尿道にボディソープが入り込んだのか、先端がピリピリと痛んだ。


「痛いのも好きなんでしょ?」

「…………っ、……ッ、うん」

「じゃ、いいよね」

「あぁあっ!」

先端を摩る浬の指の速度が速められる。
同時に乳首も弄られて、凄く気持ちいい。



「あ……あっ、浬……んぁっ」

「子供の性欲って不思議だよね」

「ん……ごめっ……浬ッ」

「こないだお母さんにオナニー見せてたってヤツの話聞いてさ、爆笑しちゃった。なんでそんなコトしちゃうんだろーね。
 オレは空也が居たお陰で、母さんに見せなくて済んだのかな……。
 だとしたら空也の性癖もたまには役に立つって事になるね」

「…………っ、あっ……」

浬の右手が今度は尻の方へ移動して、ぬるぬるした指先で肛門を撫でる。


「ちっちゃい頃はココを使うなんて全然知らなかったなぁ。
 空也も知らなかったでしょ。知ってたら絶対最後までヤってたもんね」

「ん……ああぁッ」


ボディソープをローション代わりに、ずぷりと指を挿入される。
腸内に入り込んできた浬の細い指が、中で蠢いている。


「んっ、あっ……あっ、あ、ん……」

「俺が女だったら絶対入れてたでしょ?ねぇ、そうでしょ?」

「んぅ、う、うん……っ、ごめ……んッ……」

「ねえ、何回謝る気なの?」

「んッ……」

「次謝ったら挿れてやんないよ?」

「ん、うん……っ」


俺の中をぐちゃぐちゃに掻き回す指が時折良い所を刺激して、今にもイキそうだった。
ここでやめられるなんてそんなの嫌だ。耐えられない。


「あっ、浬、も、もうイきそ……だから……あっ、はぁッ……っ」

「はいはい」

「あぁっ……!」

指がずるりとアナルから引き抜かれる。
とろとろに慣らされた肛門に、浬の性器があてがわれ、

「うあぁッ」

そのまま間髪入れずに一気に挿入される。
風呂場の冷たい壁に手を付いて、後ろから浬に腰を打ちつけられる。


「あはっ、ケツまんこぐちゃぐちゃ。石鹸で腹壊しそうだけどまあいいよね」

「う、うん……大丈夫……あっ、うあっ……ッ!」


浬に腰を揺すられる。
身体中にビリビリとした電流のような刺激が走って、たまらなく気持ちいい。


「ん、んんっ……あ、あっ」

「ん……はっ、気持ちいね」

「うん……っ」

浬のペニスはそれほど大きくもなければ、長くもない。年相応というか、普通だ。
行為自体も乱暴で自己中で、決して上手くはないと思う。
だけどこんなに感じるのは、俺が浬を愛しているから。
それ以外の理由は思いつかない。
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