狂い狂って狂わせて

粒豆

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――5月13日 駅前


大学の帰りに、偶然浬と知らない男が歩いているのを目撃してしまった。
いつもなら無視して帰るのだが、尾行してみる事にした。
最初は少しだけ、と思っていたのだが浬が気付かないのを良い事に俺の尾行は長く続いていた。
二人は腕を組みながら、楽しそうに歩いていた。
同性であり、更に相手がかなり年上だという事もあって、恋人同士と言うよりは親子のように見える。
楽しそうに街を歩いていた二人は、暫くして人気のない公園へやってきた。

二人は茂みの側のベンチに座ると、すぐさまお互いの唇に噛み付いた。
深くて濃厚な、恋人同士がするキス。
舌を絡めあっているのが、遠くからでも分かる。

――こんなトコで……!
――せめてトイレでやれよ……!

浬はどう見ても未成年なのに、誰かに見られでもしたらどうするんだ。
そうでなくても、こういう事をするならもっと隠れてやるべきだ。
浬も相手の男も、どうかしている。
そしてすぐに立ち去るべきなのに、足が動かせない俺もどうかしている。
浬と男の行為は徐々にエスカレートしていて、このまま見ていて良い筈がないのに……
なのに、それなのに、俺は何故だかあの二人から目が離せなくなっていた。
男を誘惑し、男に抱かれ、絶妙な色気を放つ浬。
その魅力にとり憑かれて、俺は頭がおかしくなってしまったのか。
身体が熱を帯びて、言う事を聞かない。
浬と見知らぬ男とのセックスなんか見たくない。
そう思う筈なのに、目が離せない。

「あ……っ……」

気が付けば無意識に、俺の利き手は下半身に伸びていた。

「ぁ……っ……」

人が来るかもしれないのに、手が止められなかった。
どうしよう。これじゃ変態だ。

「…………!」

一瞬、浬と目が合ったような気がしてゾクリとする。
浬の目は、綺麗だけど、勝気で挑発的で少し怖い。
だけどその怖さが、色っぽくて癖になる。
浬の色気は、魅力というより最早魔力だ。
そんな事を本気で考えてしまうあたり俺も、相当イカレているのかもしれない。

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