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――5月11日 自宅
パソコンで浬のSNSを開く。
我ながら悪趣味だが、俺は頻繁に浬のSNSをチェックしている。
浬は毎日SNSに自分の写真を載せている。
その写真はどれも、きわどいポーズで肌を露出している過激なものばかりだった。
俺は浬のこの行為が、心配で仕方がない。
一応顔は隠しているようだが、身近な人物が見たら浬だと丸わかりだ。
おまけに、浬に毎日しつこく話掛けている男が何人かいる。
浬はそれを嫌がるどころか、寧ろ喜んで相手をしている。
中学生が誰だか分からない相手とネット上で交流を持つなんて、心配でないわけがない。
趣味をチャットで語りあうような交流とは訳が違う。
この何人かの男達は、あきらかに浬の事を変な目で見ている。
危険極まりない。
SNSを眺めていたら、突然携帯が鳴りだした。
着信音は浬だけ専用の物に設定してあるので、すぐに誰だか分かる。
「もしもし」
『くーちゃん?』
「ん……どうした?」
『あのね、怒られた。母さんに』
「なんで?」
『昨日、夜中にくーちゃんを呼んだから』
『迷惑かけるなって怒られた』
「そうなのか……」
『ねぇ、オレってくーちゃんに迷惑かけてるの?』
『呼ばれるの、嫌?』
「嫌じゃねーよ。迷惑なんかじゃないから、大丈夫だから」
『そっか……そうだよね……』
『でも、酷いよね』
『リスカについては何も言わない癖に、くーちゃんに迷惑かけるなって怒るんだよ?』
『やっぱりオレって嫌われてるのかな?死んだほうがいい?』
「違うよ。嫌ってるわけじゃない」
『そうなのかな……』
「そうだよ」
『…………』
「あっ」
無機質な機械音を鳴らして、唐突に電話が切れる。
様子を見に行ったほうがいいのだろうか。
俺に「来い」と言っているのだろうか。
――浬とのやり取りは、まるでクイズだ。
浬の「して欲しい事」「言って欲しい言葉」を、当てるクイズ。
それを見つけ出して実行する事で、浬の俺に対する「依存度」が上がる。
好感度なんて生易しいもんじゃない。
浬の俺に対する気持ちは、好意なんかじゃない。依存だ。
そうして浬は、正気を保ち、命を繋ぐんだ。
迷った末に浬の家まで行く。
インターフォンを鳴らしたら、浬の母親が出てきて、ここへ来た事を後悔した。
「空也くん、いつもごめんね」
「あ、いえ……」
少し派手だけど、若くて美人の母。
目鼻立ちのくっきりした顔立ちは勿論、強気な雰囲気までもが浬によく似ている。
「また浬が呼んだのね? 本当にごめんね」
「いや、今日は俺が勝手に来ただけで……」
「気を使わなくていいのよ。さっき電話してるの聞こえたんだから」
「や、本当ですってば……」
もしかして浬は、母親が来たから電話を切っただけだったのだろうか。
だとしたら俺は、間違った選択をしてしまった事になる。
「とにかく、甘やかさなくていいからね」
「は、はあ……」
パソコンで浬のSNSを開く。
我ながら悪趣味だが、俺は頻繁に浬のSNSをチェックしている。
浬は毎日SNSに自分の写真を載せている。
その写真はどれも、きわどいポーズで肌を露出している過激なものばかりだった。
俺は浬のこの行為が、心配で仕方がない。
一応顔は隠しているようだが、身近な人物が見たら浬だと丸わかりだ。
おまけに、浬に毎日しつこく話掛けている男が何人かいる。
浬はそれを嫌がるどころか、寧ろ喜んで相手をしている。
中学生が誰だか分からない相手とネット上で交流を持つなんて、心配でないわけがない。
趣味をチャットで語りあうような交流とは訳が違う。
この何人かの男達は、あきらかに浬の事を変な目で見ている。
危険極まりない。
SNSを眺めていたら、突然携帯が鳴りだした。
着信音は浬だけ専用の物に設定してあるので、すぐに誰だか分かる。
「もしもし」
『くーちゃん?』
「ん……どうした?」
『あのね、怒られた。母さんに』
「なんで?」
『昨日、夜中にくーちゃんを呼んだから』
『迷惑かけるなって怒られた』
「そうなのか……」
『ねぇ、オレってくーちゃんに迷惑かけてるの?』
『呼ばれるの、嫌?』
「嫌じゃねーよ。迷惑なんかじゃないから、大丈夫だから」
『そっか……そうだよね……』
『でも、酷いよね』
『リスカについては何も言わない癖に、くーちゃんに迷惑かけるなって怒るんだよ?』
『やっぱりオレって嫌われてるのかな?死んだほうがいい?』
「違うよ。嫌ってるわけじゃない」
『そうなのかな……』
「そうだよ」
『…………』
「あっ」
無機質な機械音を鳴らして、唐突に電話が切れる。
様子を見に行ったほうがいいのだろうか。
俺に「来い」と言っているのだろうか。
――浬とのやり取りは、まるでクイズだ。
浬の「して欲しい事」「言って欲しい言葉」を、当てるクイズ。
それを見つけ出して実行する事で、浬の俺に対する「依存度」が上がる。
好感度なんて生易しいもんじゃない。
浬の俺に対する気持ちは、好意なんかじゃない。依存だ。
そうして浬は、正気を保ち、命を繋ぐんだ。
迷った末に浬の家まで行く。
インターフォンを鳴らしたら、浬の母親が出てきて、ここへ来た事を後悔した。
「空也くん、いつもごめんね」
「あ、いえ……」
少し派手だけど、若くて美人の母。
目鼻立ちのくっきりした顔立ちは勿論、強気な雰囲気までもが浬によく似ている。
「また浬が呼んだのね? 本当にごめんね」
「いや、今日は俺が勝手に来ただけで……」
「気を使わなくていいのよ。さっき電話してるの聞こえたんだから」
「や、本当ですってば……」
もしかして浬は、母親が来たから電話を切っただけだったのだろうか。
だとしたら俺は、間違った選択をしてしまった事になる。
「とにかく、甘やかさなくていいからね」
「は、はあ……」
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