7 / 11
7(END)
しおりを挟む
「お前、本当にあの時の恩返しってだけで俺を助けたの?」
「ふふ、どうかなー?
ボクは気まぐれだからね。キミみたいなダメ人間を飼うのも楽しいかなって思ったのさ」
「変なやつ…… ほんとに変だよ……」
「犬や猫もいいけれど、人間を飼うのも楽しそうじゃない?
実際キミがウチに来てくれてボクは楽しいよ」
「でもさ、やっぱりこんなの不健全だよな…… 異常だよ。
結婚できるわけじゃないから俺は主夫にもなれねーし。
そもそも恋人同士でも愛人でもなければ、血の繋がりも縁もないのに、
それなのに借金代わりに払って貰って生活の面倒見て貰ってさ。
これじゃほんとにペットだよ…… 俺人間なのに……
シムカって人の言う通り、俺達めちゃくちゃ気持ち悪いんじゃないかな……」
「…………」
「なあ、恋、俺やっぱり………………って、んぅ!?」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
少し経ってから、キスされたのだと気付いた。
唇に唇を押しつけるだけの、軽いキス。
そのキスは深くなることはなく、すぐに恋は俺から離れた。
「な、なにすんだああああああ!?」
「ん? なんとなくそういう雰囲気かなって」
「おえええええっ! 気色悪ぃ!!」
「酷いリアクションだな……
でも、ほら、見てごらんよ」
「え……?」
「誰もボクらのコトなんか気にしてないだろ?」
男同士で街中でキスをしたと言うのに、俺達を気に止める人は誰も居なかった。
道行く人は、好き勝手に騒いだり、早足で歩いたりして、皆が皆、通行人としての役目を果たしている。
そして俺も、この街を構成する一般人の中のひとりでしかなくって。
東京の雑踏の一部でしかなくって。
あーあ、俺はなんてちっっぽけなんだろうか。
なんだか全てがどうでもよくなってきた。
「ボクらの関係が一般論で見たら気持ち悪かろうと、ボクらがソレでいいならいいんじゃないかな?
勿論、キミがボクに身体を渡したほうが気が楽なのならボクはキミとセックスをしてもいいよ。
愛人やセフレという関係の記号が欲しいのなら、そのほうが落ち着くのなら、そうしよう」
「昼間にも言ったけどそれはいいです! 結構です!」
「ふーん、そう。
じゃあたまにさ、今朝みたいにボクの『遊び』に付き合ってよ」
「え゛……あの血、混ぜるやつ……?」
「うん、そう。僕へのお返しはそれでいいよ」
……やっぱコイツ、キチガイだ。
「…………ねえ、キミは、死にたい?」
「…………分からない。何度も死のうって思ったよ。
このまま生きてても仕方ないって。音楽で生きていけないなら…… 才能がないなら……
死んだほうがマシだって思った。でも死ぬの怖いよ。
だからと言って生きてるのも嫌でさ、はは、我儘だな、俺……」
「じゃあもしさ、キミが本気で死ぬコトを決めた時にはさ…………」
「…………ボクにキミを殺させておくれよ」
「………………いいよ」
「アリガトウ。その頃にはきっとボクも生きるコトに飽きてるだろうから、
そしたら一緒に死のうよ。腹を引き裂いて割ってキミとボクの腸をリボン結びにするのさ。
なんだか赤い糸で結ばれてるみたいでロマンチックだろ? きっとキモチイイよ。
ボクらの間に運命の赤い糸はないのだろうけど。
そうして血も肉も内臓もどちらのものか分からなくなるまでぐちゃぐちゃになって交わって溶けてひとつになろう」
「……うん、いいよ」
「じゃあそれまでボクと一緒に生きてくれ。
ボクもソレを楽しみに、頑張ってこのウルサイ街で雑踏を構成する一人として生きてゆくから」
「ああ」
「約束だよ? ゆーびきりげんまーん♪」
「……約束だ」
差し出された小指に、自分の指を絡ませる。
恋を照らすネオンの光は、俺には眩しすぎた。
「ふふ、どうかなー?
ボクは気まぐれだからね。キミみたいなダメ人間を飼うのも楽しいかなって思ったのさ」
「変なやつ…… ほんとに変だよ……」
「犬や猫もいいけれど、人間を飼うのも楽しそうじゃない?
実際キミがウチに来てくれてボクは楽しいよ」
「でもさ、やっぱりこんなの不健全だよな…… 異常だよ。
結婚できるわけじゃないから俺は主夫にもなれねーし。
そもそも恋人同士でも愛人でもなければ、血の繋がりも縁もないのに、
それなのに借金代わりに払って貰って生活の面倒見て貰ってさ。
これじゃほんとにペットだよ…… 俺人間なのに……
シムカって人の言う通り、俺達めちゃくちゃ気持ち悪いんじゃないかな……」
「…………」
「なあ、恋、俺やっぱり………………って、んぅ!?」
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
少し経ってから、キスされたのだと気付いた。
唇に唇を押しつけるだけの、軽いキス。
そのキスは深くなることはなく、すぐに恋は俺から離れた。
「な、なにすんだああああああ!?」
「ん? なんとなくそういう雰囲気かなって」
「おえええええっ! 気色悪ぃ!!」
「酷いリアクションだな……
でも、ほら、見てごらんよ」
「え……?」
「誰もボクらのコトなんか気にしてないだろ?」
男同士で街中でキスをしたと言うのに、俺達を気に止める人は誰も居なかった。
道行く人は、好き勝手に騒いだり、早足で歩いたりして、皆が皆、通行人としての役目を果たしている。
そして俺も、この街を構成する一般人の中のひとりでしかなくって。
東京の雑踏の一部でしかなくって。
あーあ、俺はなんてちっっぽけなんだろうか。
なんだか全てがどうでもよくなってきた。
「ボクらの関係が一般論で見たら気持ち悪かろうと、ボクらがソレでいいならいいんじゃないかな?
勿論、キミがボクに身体を渡したほうが気が楽なのならボクはキミとセックスをしてもいいよ。
愛人やセフレという関係の記号が欲しいのなら、そのほうが落ち着くのなら、そうしよう」
「昼間にも言ったけどそれはいいです! 結構です!」
「ふーん、そう。
じゃあたまにさ、今朝みたいにボクの『遊び』に付き合ってよ」
「え゛……あの血、混ぜるやつ……?」
「うん、そう。僕へのお返しはそれでいいよ」
……やっぱコイツ、キチガイだ。
「…………ねえ、キミは、死にたい?」
「…………分からない。何度も死のうって思ったよ。
このまま生きてても仕方ないって。音楽で生きていけないなら…… 才能がないなら……
死んだほうがマシだって思った。でも死ぬの怖いよ。
だからと言って生きてるのも嫌でさ、はは、我儘だな、俺……」
「じゃあもしさ、キミが本気で死ぬコトを決めた時にはさ…………」
「…………ボクにキミを殺させておくれよ」
「………………いいよ」
「アリガトウ。その頃にはきっとボクも生きるコトに飽きてるだろうから、
そしたら一緒に死のうよ。腹を引き裂いて割ってキミとボクの腸をリボン結びにするのさ。
なんだか赤い糸で結ばれてるみたいでロマンチックだろ? きっとキモチイイよ。
ボクらの間に運命の赤い糸はないのだろうけど。
そうして血も肉も内臓もどちらのものか分からなくなるまでぐちゃぐちゃになって交わって溶けてひとつになろう」
「……うん、いいよ」
「じゃあそれまでボクと一緒に生きてくれ。
ボクもソレを楽しみに、頑張ってこのウルサイ街で雑踏を構成する一人として生きてゆくから」
「ああ」
「約束だよ? ゆーびきりげんまーん♪」
「……約束だ」
差し出された小指に、自分の指を絡ませる。
恋を照らすネオンの光は、俺には眩しすぎた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
それはきっと、気の迷い。
葉津緒
BL
王道転入生に親友扱いされている、気弱な平凡脇役くんが主人公。嫌われ後、総狙われ?
主人公→睦実(ムツミ)
王道転入生→珠紀(タマキ)
全寮制王道学園/美形×平凡/コメディ?
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる