まいすいーとえんじぇる

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――3日目……

「ふぁ~あ……」

重い身体を無理やりベッドから起こし、大きくのびをする。
朝は昔から苦手だ。

「今日は学校は?」

「行かんよ」

「外は出るけどね」

「はあ」




財布と携帯だけ持って、部屋着のまま外へ出る。
当然の如くアンヘルは、街中の視線を集めていた。


「なにあれコスプレ?」

「わ~かわい~……」

「と、思ったけど顔はそこまで可愛くないな」

通行人は好き勝手に、アンヘルへの感想を口に出す。


「…………なんだか凄く居心地が悪いです」

「まあそんな奇をてらった格好じゃね」

「奇をてらってるわけじゃないです!」

「そ、それより、何処へ行くんですか?」

「デパートだよ。ちょっと買いたいものがあってね」

「でぱーと……」







「ほう。ここが、でぱーと……ですか」

「うん」

「なんか見たい店ある?」

「あ、いえ、何があるのかよく分からないので……」

「そっか」

「じゃ、私のおすすめのとこ案内したげるね」

「わあ、うぃんどーしょっぴんぐってやつですね。
 ちょっと興味があったんで、楽しみです。
 付き合ってやってもいいですよ」

「上から目線だけど、まあいいか」





フラフラ歩いて、ゲームコーナーへやってきた。
そこでアンヘルと格闘ゲームをしていた。

「ああっ、ちょ……やああっ!」

「ぐへへ」

アンヘルが絶妙に下手なので、弄んでやるのが楽しい。
爽快感があって気持ちいい。癖になりそうだ。

「これうぃんどーしょっぴんぐじゃないですよね!?」

「一回このアーケードやってみたかったんだけどさ、知らない人とやるの怖いから……
 あとゲーセンって基本みんな強いし。

「初心者をボコボコにしてるだけじゃ、いつまで経っても上手くならないと思いますが」

「別にいいよ。中途半端に上手くなっても意味ないじゃん。
 プロゲーマーになれるくらい強くなれるならなりたいけどさ」

「ほんと莉子さんてクズですよね」

「あーね」

「あーね、じゃないですよ。
 莉子さんは、何かに本気で取り組んだりした事ないんですか?」

「うーん、どうだろうね」

「莉子さん、天使の存在や死を受け入れてる割に冷静だし……変ですよ。
 そもそも私の存在や自分の死の運命を信じてないのなら分かりますけど、信じた上で諦めてる」

「どうでもいいと思ってる」

「何故ですか?
 貴女程の若さなら……まだ……」

「うん、まあそういう人もいるっしょ。
 別に私だけじゃないと思うよ。人間ってそんなもんだよ」

「そう……なんです、かね」

「そうそう。っていうかアンヘルの事はまだ半信半疑だしね。
 さ、気を取り直してもうワンゲームやろうよ」

「も、もう……」



――…………
――……

「ふぃー、結構楽しかったね」

「楽しくないですよ」

「あのあとも莉子さんばっかり何勝もして……」

「はは、ごめんね」

「まあいいですけど。
 それより、最後に買ってたものはなんですか?」

「内緒。明日になれば分かるよ」

「はあ……」


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