まいすいーとえんじぇる

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――2日目……

「莉子さん」

「…………」

「莉子さん」

「…………」

「朝ですよ。学校は行かなくていいんですか?
 莉子さんは学生ではないのですか」

「ん~……まだ眠いよ」

傍らにあった携帯で時間を確認する。
まだ朝の七時だった。私には早すぎる。

「どうせ一週間で死んじゃうんだから、学校なんかいいよ」

「お母さんは何も言わないのですか。お友達は心配しないのですか」

「元々行ったり行かなかったりだからね。最近はもう親にも愛想つかされてる」

「友達……いるにはいるけど、別に。
 表面上友達ごっこしてるだけで、ほんとは全然仲良くない奴らばっかだし」

布団を被り、独りごとのように愚痴をこぼした。

「私っていつもそうなんだよ。何処へ行っても馴染めない。
 誰とも本当の意味で仲良くなれないの。
 だから、もう、どーでもいいよ。早く死にたい。
 寿命、一週間もいらないよ。
 もう死んじゃっていいよ」

「莉子さんて、悲しい人ですね」

「私、二度寝するから。起きたらゲームして遊ぼう」

「げーむ……?」

「あ、ゲーム分からない系?」

「…………」

「はぁ~~……よし」

眠い目を擦り、勢いを付けてベッドから上半身を起こす。


「遊ぶか」

「はぁ……」





二人対戦の格闘ゲーム。
ろくに説明もせずにコントローラーを握らせて、ボコボコにしてやる。

「やっぱ楽しいね。初心者をボコボコにすんのは」

「酷いです!
 手加減してください!
 せめてもっとちゃんと遊び方を説明してください!」

「やだよ。これがやりたくて早く起きたんだから」

「なんか莉子さんが周りに馴染めない理由、分かった気がします」

「はは」

「笑ってる場合じゃないですよ」

「いいじゃんよ。オンライン対戦じゃあ周りが強すぎていつも負けてばっかなんだから、たまには勝たせておくれよ」

「げーむの事はどうでもいいんです」

「はは」

馴染めない理由なんか自分でも分かっている。気付いている。
だけどどうせもう死ぬんだ。
今更どうこうしても遅い。
それなら最期の日まで、この天使ちゃんを面白おかしく弄ってやろうじゃないか。
そこまで考えて、この天使というオカルトな存在をすんなり受け入れ順応している自分に少し吃驚した。
いくら考えるのが面倒だからって、これでいいのか私。
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