まいすいーとえんじぇる

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「じゃあ、私は事故で死んじゃうのね」

私は少女と共に帰宅した。
家に入ってすぐに自分の部屋に閉じこもる。


この少女が浮いていたのは事実。
背中の羽や頭のわっかは玩具のようだけど、ドッキリか何かだとは思えない。
仮に私が芸能人か何かだったのならドッキリだったのかもしれないけど、残念ながら私は一般人だ。
残る説は彼女が頭のおかしい電波ちゃんという事。
私は幻覚を見るほど病んではいないので、私がおかしいという説はなしだ。


「はい、そうです」

「それ以外の事は分かんないの?
 場所とか、細かい時間とか」

「はい、分かりません」

「ふぅん」

「死ぬまでの間、僭越ながら貴女を監視させて貰います」

「まあ構わないけど。どうせ暇だし。
 アンタなんか面白いし……」

「ひゃっ」

彼女に背から生えている羽に手を伸ばし、そっと撫でてみる。
ふわふわしていて、生温かい。


「あっ……ちょ……やっ」

「おーベタだね。やっぱり羽は敏感なんだ。
 キモイオタクに媚びた萌えキャラみたい」

「や、やめてくださいっ」

「でもよく見たら顔はそんなに可愛くないよね。
 目つき悪いし、隈できてる……」

「失礼な!!」

「気にしてるんだから顔の事はほっときやがれです」

「うわ、出たよ。敬語なのに口の悪いキャラ……
 いるいるこういうキャラ。深夜アニメにわんさかいる」

「さっきからホントに失礼な人ですね。
 事故で死ぬ前に私が貴女をぶっ殺してさしあげましょーか?」

「こわっ。物騒だな」

「天使は意外と気が短く凶暴だという事を覚えておいてください」

「ま、なんでもいいけどさ、人って死ぬ時必ずアンタみたいな天使に付き纏われるの?」

「いえ、違います」

「普通は天使は人の目には見えませんから」

「え、なにそれ。
 じゃ、私が特別なんだ? 霊感が強いのか?」

「いえ。逆です。
 私の天使としての力がクソなせいで、姿を消す事ができないのです」

「うわー、まじか。それはちょっと困るな。
 あんた、一週間私の家にいるんでしょ?
 お母さんにバレないようにしないと……ふふ……」

「困るといいつつ、なんでちょっと嬉しそうなんです?」

「いや、昔ね、お母さんに内緒で猫を拾って来た事があって……そんで、押し入れで……」

「猫と一緒にしないでください!」

「はは、すまんね」

「もう」

本当に天使でも、ただの異常者でもなんでもいい、そう思った。
深く考えるのもあれこれ悩むのも何もかもが面倒臭い。
生きるのって、面倒くさい。
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