サイハテイネイブラー

粒豆

文字の大きさ
上 下
13 / 14

12

しおりを挟む
――…………


――1ヶ月後。



ボクは精神病院に居た。

「光、お見舞いに来たよ」
「…………」
「ひかる……」
「…………」

声を掛けても、光はなにも答えない。


あの日、光は自殺しようとした。
普段から飲んでいた睡眠導入剤を大量に服薬して、死のうとしたらしい。
まあ結局導入剤くらいでは死ぬ事は出来ず、死ぬほど苦しい思いをしただけだったみたいだけど……

自殺未遂は鬱病の悪化が原因と診断され、光は精神病院に入院させられた。
それからの光はまるで廃人みたいだった。
ほとんど何も喋らなくて、目も虚ろで一人では何もできない。
ボクはほぼ毎日光の世話をする為に病院に通っていた。
パートで忙しい光の母親の代わりに、ボクが光の面倒を見ているのだ。
この病院は小さく看護師も足りてない。
ボクの存在は病院にとっても有り難かったらしく、先生や看護師からも『えらいのね』『いつもありがとうね』と言われた。


「光、大好きだよ……」


前を向こうとしていた光の鬱病がどうして急に悪化したのかは分からない。
それでもボクは今、とても幸せだった。
大好きな光の世話が出来る毎日はこれ以上ないという程充実している。


「光、あのね、ボクね……
 今まで生きて来た中で、今が一番幸せだよ……」

話しかけても、何も返って来ない。
だけどそれでいい。
ボクが感じていた不安も、恐怖も、今はもうない。
……ボクは今、幸せだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君が死んだ夏、銀色の猫。

粒豆
BL
中学二年生の夏、生まれて初めて人の死というものを経験した。 中学時代の俺の唯一の友人は、大人になれずに死んでしまった。 ――もう戻れないあの夏、俺は友達を殺した。

蒼い春も、その先も、

Rg
BL
高校二年生の春。 自傷癖のある朝比奈穂希は、校内一の優等生として有名な佳澄椿と出会う。 穂希は自分に自傷癖があること、そして自傷をやめようと思っていることを打ち明けるが、椿の反応は穂希の想像とは少し違うものだった。 自身の傷に対する椿の言動に違和感を覚える日々を過ごしていたそんなある日、彼に『君のことを好きになってしまった』と告げられる。 ※自傷行為常習の穂希くんが主人公なので、痛々しい描写多々あります。苦手な方、ご注意を!

馬鹿な先輩と後輩くん

ぽぽ
BL
美形新人×平凡上司 新人の教育係を任された主人公。しかし彼は自分が教える事も必要が無いほど完璧だった。だけど愛想は悪い。一方、主人公は愛想は良いがミスばかりをする。そんな凸凹な二人の話。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 作者は飲み会を経験した事ないので誤った物を書いているかもしれませんがご了承ください。 本来は二次創作にて登場させたモブでしたが余りにもタイプだったのでモブルートを書いた所ただの創作BLになってました。

振り向けば

糸坂 有
BL
優等生の奥山学は、ある時クラスメイトが不良に絡まれている現場に遭遇する。それを助けたことがきっかけで、学はなぜか、不良・長岡陸に勉強を教える羽目になる。

【完結】日成らず君となる

セイヂ・カグラ
BL
菊川灯治は無口な人間だった。 高校ニ年生の秋、1年上の先輩のバイクに乗った。先輩は推薦合格で都会の大学に行くらしい。だから最後の思い出作り。やけに暑い秋だった。  メリバBLです。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

幸せのカタチ

杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。 拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

処理中です...