サイハテイネイブラー

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――『すぐに治る』という言葉通り、光は十分ほどで落ち着いた。


「もう大丈夫?」
「あ、ああ……」
「良かった……」
「お、俺、ふ、不安症、で…………」
「……うん」
「ダ、ダメなんだ……学校行こうとするとすぐさっきみたいになっちゃって……
 だ、だから、お、おれ……」
「うん、ごめんね。
 ボクが外に連れ出したりしなければ、キミは辛い思いをせずに済んだのにね」
「え……ち、ちが……お前の、せいじゃ……ない…………」
「ひか、る…………」
「あ、いや、その……あ……ぁ……こ、こっちこそ、ごめん……」


――ごめん……?



「び、吃驚しただろ……見苦しいとこ見せて、悪かったな……」
「…………あ、謝らないでよ!」
「え……」
「なんで謝るんだよ!!」


ボクは感情のままに光を怒鳴り付けた。


「謝らなくていいんだ、光はそのままでいいんだ。
 前の光だったらボクに謝ったりしなかった!
 なのになんで……どうして謝ったりするんだ!」
「な、なに言ってんだお前……」
「あ、ごめん……取り乱した……」
「…………だ、大丈夫か?」


――やっぱり光は……『成長』してる…………

以前の光ならボクへ謝るなんて事は絶対にしなかった。
絡まれた事をボクのせいにして怒鳴り散らすのが光だろう?
『お前のせいだ!』って怒鳴っていいのに……。
なんなら殴ってくれたって構わないのに……。
それなのに、どうして?


ボクが……光を変えてしまった……?


――そうだ。告白なんかしたからだ。

愛に飢えている光を、ボクが愛してしまったから。
愛を与えてしまったから、だから光は、変わってしまったんだ。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
なんとかしないと。


――早くなんとかしないと、光が自立してしまう。


……って、ボクは何を考えているんだ?
自立するのは良い事じゃないか。
今日外に出た事だって成長だ。立派な事だ。
良い事なんだ。
応援してあげるべきだ。
光が前へ進もうとしているのなら、ボクは背中を押してあげるべきなんだ。
それなのに、どうしてボクはこんなに取り乱しているんだ。
何を不安に思う事がある?
どうして素直に喜べないんだ?
ボクは頭がどうにかなってしまったのか。
……自分で自分が分からない。
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