サイハテイネイブラー

粒豆

文字の大きさ
上 下
5 / 14

4

しおりを挟む
――光の家から引き上げて、自分の家に帰る。

玄関を開けた途端にカレーの匂いが漂ってくる。
今夜はカレーなんだ。


ボクは自分の家が嫌いだ。
妹はもう幼いと言うほど子供ではなくなってしまって、ボクの世話を必要としない。
父は日中は仕事で、夜にほんの少し顔を会わせるだけだ。
昔のようにボクや妹に暴力を振るう事はなくなった。
家の事は全部花実さんがやってくれる。
この家には、ボクのやる事が何もないんだ。
昔はあれだけ忙しかったのに、今はとても暇なんだ。
ボクはそれを何故だか凄く不安に思ってしまう。


――家族の世話をする事だけが、自分の存在理由だった。


それなのに、今はどうだ?
この家にボクの仕事はもうない。
ボクの役目は終わったんだ。
親戚や近所の人達に『かわいそう』だと言われる事はなくなった。
だけどその代わり『いつも偉いのね』と褒められる事もなくなってしまった。
それがどうしようもなく悲しくて、不安になる。
ああ、気が狂いそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君が死んだ夏、銀色の猫。

粒豆
BL
中学二年生の夏、生まれて初めて人の死というものを経験した。 中学時代の俺の唯一の友人は、大人になれずに死んでしまった。 ――もう戻れないあの夏、俺は友達を殺した。

蒼い春も、その先も、

Rg
BL
高校二年生の春。 自傷癖のある朝比奈穂希は、校内一の優等生として有名な佳澄椿と出会う。 穂希は自分に自傷癖があること、そして自傷をやめようと思っていることを打ち明けるが、椿の反応は穂希の想像とは少し違うものだった。 自身の傷に対する椿の言動に違和感を覚える日々を過ごしていたそんなある日、彼に『君のことを好きになってしまった』と告げられる。 ※自傷行為常習の穂希くんが主人公なので、痛々しい描写多々あります。苦手な方、ご注意を!

馬鹿な先輩と後輩くん

ぽぽ
BL
美形新人×平凡上司 新人の教育係を任された主人公。しかし彼は自分が教える事も必要が無いほど完璧だった。だけど愛想は悪い。一方、主人公は愛想は良いがミスばかりをする。そんな凸凹な二人の話。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 作者は飲み会を経験した事ないので誤った物を書いているかもしれませんがご了承ください。 本来は二次創作にて登場させたモブでしたが余りにもタイプだったのでモブルートを書いた所ただの創作BLになってました。

振り向けば

糸坂 有
BL
優等生の奥山学は、ある時クラスメイトが不良に絡まれている現場に遭遇する。それを助けたことがきっかけで、学はなぜか、不良・長岡陸に勉強を教える羽目になる。

【完結】日成らず君となる

セイヂ・カグラ
BL
菊川灯治は無口な人間だった。 高校ニ年生の秋、1年上の先輩のバイクに乗った。先輩は推薦合格で都会の大学に行くらしい。だから最後の思い出作り。やけに暑い秋だった。  メリバBLです。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

幸せのカタチ

杏西モジコ
BL
幼馴染の須藤祥太に想いを寄せていた唐木幸介。ある日、祥太に呼び出されると結婚の報告をされ、その長年の想いは告げる前に玉砕する。ショックのあまり、その足でやけ酒に溺れた幸介が翌朝目覚めると、そこは見知らぬ青年、福島律也の自宅だった……。 拗れた片想いになかなか決着をつけられないサラリーマンが、新しい幸せに向かうお話。

林檎を並べても、

ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。 二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。 ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。 彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。

処理中です...