君が死んだ夏、銀色の猫。

粒豆

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5 中学二年生

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それから俺は、夏生を避けるようになった。
あからさまに拒絶するのも怖かったので、やんわりと距離を取り始めた。
塾や習い事の日数を増やして、夏生と遊ぶ時間を減らした。
勉強や習い事だと言えば夏生は、深く詮索してくる事はなかった。
夏生は俺が他の人と親しくするのは怒るけれど、俺の習い事の邪魔はあまりしなかった。
たまに『つまんない』と独り言のように軽い文句を言われたりはしたけれど。
だけど『辞めろ』だとかは言われなかった。
やんわりと距離を取り続けておけば、夏生はそのうち俺に飽きるだろう。
俺に飽きて、誰か別の人に依存する。
夏生は気まぐれで、飽きっぽいから、きっとそうなる。
すぐに他の『友達』を見つけるだろう。
そう思っていたけれど、それは甘かった。

あっという間に時が過ぎて、俺たちは中学二年生になった。
夏生も俺も背が伸び、声がどんどん低くなっていく。
人間が子供で居られる期間は限られている。
13~14歳という年ごろは、丁度子供が大人へと変わり始める期間だ。
その時期にしかない刹那的な美しさみたいなものがあり、
中学二年正になった夏生は恐ろしいほどに綺麗だった。
少年特有の骨っぽく長い手足に、男にしてはまだ少し高い声、男にも女にも見える顔。
これから夏生は、まだまだ成長していくはず、だったのだろう。

距離を置いてはいたものの、俺と夏生の奇妙な関係は完全には切れていなかった。
学年が上がり、夏生と同じクラスになってしまった。
俺は習い事や夏生との関係に疲れ果てていて、嫌だと感じる事すら億劫だった。
その時の俺にあったのは、諦めと憂鬱感。
それから倦怠感と、無気力感、虚無感。
俺は、とにかく疲れていた。
夏生を拒絶する気力も、もうなくて惰性で彼と関わり続けた。
意味もなく、だらだらと日々を過ごしていた。
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