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僕も僕で、自分の事を不幸だと思っていた。

――小学3年生の夏休み……

僕の両親の離婚が決定した。
僕の両親の間に、元々愛などなかった。
子供が出来たと言う責任だけで仕方なく一緒に居るような夫婦。
離婚は時間の問題だったんだと思う。
それでも幼い僕にはそんなこと理解できる筈もなく、僕は『嫌だ』と泣き喚いた。

「お母さんとお父さん、はなれちゃうなんてやだあ!
 ずっといっしょにいてよおぉ……!!」

そう言って泣いたら、母に『我儘を言うな』『うるさい』と頬を打たれた。
母が僕の頬を打つのは、よくあることだった。
母は泣いてる僕が『うるさい』から、泣きやませる為に僕を打つけど、
幼い僕は打たれた頬が痛くて、打たれた事が悲しくて、いつも更に泣いてしまう。
更に泣くともう一度『うるさい』と怒鳴られ、打たれる。
でも僕は学習しないバカなガキだったので、また更に泣いちゃうんだ。
それの繰り返し。
離婚の時もそうだった。
両親はどちらも僕みたいなバカなガキを引き取りたくはなかったみたい。


「貴方が引き取るって言ってたじゃない!」

「再婚が決まったんだ。だから連れていけない」

「私だって無理よ。生活に余裕ないの」

「だから養育費や学費は出すって言ってるだろ」

「そういう問題じゃない!」

「連れ子が居るなら結婚はしないって言われてるんだ!」

「私だって再婚したいのに!」

そんな風に僕を押し付け合い、言い争う両親が怖くて、僕はずっと泣いていた。
泣いている僕を慰めて、優しく抱き締めてくれる誰かは居なかった。
だから僕はずっと一人で泣き喚き続けた。
誰かに頭を撫でて欲しかったけど、そんな誰かは居なかった。
自分を産んでくれた親が、得体の知れない化け物みたいに思えた。
その時の記憶は、何よりも恐ろしいものとして僕の頭に刻みつけられている。
今でも夢に見て、その度に飛び起きてトイレで嘔吐する。
僕の心に残った、大きな傷だった。
僕はその傷を癒したくて、梓くんを求めたけど……
梓くんには、僕を癒してる余裕なんかなかったんだよね。
同じように、僕にだって梓くんを癒す力なんてないよ。

そして結局僕は、今はおばあちゃんとおじいちゃんの家で暮らしている。
喧嘩の末に一度はお母さんに引き取られたのだけど、
お母さんはすぐに僕という邪魔者を自分の両親へ押しつけた。
つまり僕は捨てられたのだった。
ゴミだったから捨てられた。
要らなかったから捨てられた。
ゴミを捨てるのは、人間としてごく普通の事だ。
僕だって食べ終わったプリンの容器を、いつまでも取っておいたりしないもんね。
僕は食べ終わったプリンの容器よりも価値のないものなので、捨てられるのは当然と言えた。
僕は捨てられてから一度も、お母さんとは会っていない。
お父さんとも会っていない。

……今更、会いたくもない。

会ったって、何を話せばいいのか分からない。
でも『産まれて来てごめんなさい』と謝るくらいはしたいかもしれない。
だけど謝ったところで、許して貰えるだろうか。
おばあちゃんとおじいちゃんは僕に優しいけど、結局は『他人』だった。
僕は他人に迷惑をかけないように、精一杯良い子に振舞った。
そんな毎日は、息が詰まる。
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