ピエロと伯爵令嬢

白湯子

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プロローグ

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目の前にそびえ立つ、高い高い柵。

一生懸命背伸びしても、助走をつけて飛んでも決して越えることができない。

僕がもっと大きくなれば、この柵を越えることが出来るだろうか。

僕の問いかけに誰も答えない。

何故なら、ここには僕しか居ないからだ。

年末にこんな町外れに来るものなど居ない。

きっと、人々は賑やかに盛り上がっているパレードへと行ってしまっているだろう。


高い柵に囲まれた立派なお屋敷から、拙く音を奏でているピアノの音色が聞こえた。

きっとあの子だ。

僕は柵と柵の間に腕を通してみたが、肝心の体が入らず、諦めて身を引いた。

ここで、勘違いをしないでほしい。

僕は決して肥満児ではなく、ごく平均な体型をしている。

僕が入れないということは、あの子は出れないということになる。


あの子が居るであろう部屋を見上げれば、視界には必ず、あの忌々しい柵が邪魔をする。

まるで、あの子を外から隠すかのように。


「下手くそ。」

僕の声はあの子に届くことなく、冷たい空気の中へ消え失せる。

冬の寒さに晒された柵を掴めば、あっという間に僕の指先から体温を奪っていった。

冷たい柵。

僕には、あの子を閉じ込めるための冷たい檻のように見えるのであった。



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