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第9章「愚者の記憶」
176話
しおりを挟むあの人が、魔力保持者じゃない…?
「…そ、そんな訳ないでしょ。」
あの人は私の前で幾度となく魔法を使ってみせていたのだ。そんな彼が魔力を持っていないだなんて、あり得ない。
そう思うのに、何故か私の心臓はドクリ、ドクリと嫌な音を立て始めていた。
「血は魔力、魔力は血。たとえ魔力保持者でなくとも、その体内に魔力を取り入れれば一時的に魔法は使えるのよ。」
そう言って少女は、先程摘み取った一輪のカモミールを私の手に握らせた。
白くて、小さい可憐な花。とてもあの人の血を吸って咲いた花とは思えない。
―――血。
血は魔力、魔力は血。
何度も聞いた言葉を心の中で繰り返した刹那、私の脳裏に記憶の砂嵐が起きた。
夢か現か、花畑でカモミールの花を食べていた彼。
まるで食い散らかしたようにカモミールの残骸が散乱していた彼の部屋。
思い出した光景は、少女の言葉を裏付けるに充分すぎた。
けれど、同時に違和感も覚える。
国の維持に欠かせない魔力保持者は年々減少の一途を辿っており、とても貴重な存在だ。その存在を残そうと国の研究機関が研究を進めている中、未だに彼等がこの事実に気付いていないなんて、そんなことが本当にあり得るのだろうか。
とっくの昔に発見されて、今頃人々の生活に浸透していてもおかしくはないと思うのだが…
「そんな単純な話じゃないからよ。」
少女はやれやれと呆れたように話す。
「魔力保持者と非魔力保持者とでは、そもそも身体のつくりが違うの。非魔力保持者が魔法を使えば、必ず強烈な反動を受けるわ。」
「反動…」
「貴女にも覚えがあるはずよ。」
「…。」
少女が言うように、私にはひとつ、身に覚えがあった。
以前、皇宮に滞在している際のこと。何の前触れもなく心臓が突然早鐘を打ち始めたことがあった。それはもう脂汗をかくほど激しく。身体中が燃えるように熱く、まるで沸騰した血液が血管内を駆け回っているようだった。
あの時の私は本気で死んでしまうと思った。それと同時に死にたくないと願った。こんな世界だけど死にたくなくて、こんな世界でも生きていたくて、何かにずっと手を伸ばしていた。
「……。」
呆然と手元にあるカモミールを見つめる私の脳裏には、頻繁に熱を出して寝込んでいた幼い頃の彼の姿が過ぎる。
あの人は魔法を使う度に、あの苦しみを味わっていたのか。
「どうして…?」
記憶を見て、全てを知ったはずなのに、未だにあの人のことが分からない。
「そこまでして、あの人は一体何をしようとしているの…?」
独り言のように呟いた言葉に、少女は首を横に振った。
「分からない。」
「…。」
少女が分からないのなら、もう永遠に分からない。
最後の手がかりを完全に失い、すっかり途方に暮れてしまった。これから私はどうすればいいのだろう。
立ち上がる気力さえ湧いてこない。
今まで、自分で選んだ道を自分の足で歩いてきたと思っていたが、実際は少女の言う通り、他人が引いてくれた道をただ歩いていただけだったということを堪らなく痛感した。
結局、私は1人では何もできない。誰かに手を引いてもらわないと歩けない。それなのに不満だけは、一丁前に溢れ出てくる。本当に、どうしようもない。こんな私が、あの人に偉そうなことを言えるような立場ではではなかったのだ。
「知りたいなら、本人に直接聞けば?」
「……。」
私は再びうんざりした。
少女は毎度の如く簡単に言ってくるが、それが出来るなら苦労はしない。
それに、あの人の目的を知りたいと思う理由もよく分かっていない。だって、あの人が何をしようとも私には関係ないからだ。
思わず眉をしかめた私と同じように、少女もまた眉をしかめた。
「人間って本当に面倒。何をするにも理由を求めている。」
「人間は複雑なのよ。ただ咲いて枯れるだけの植物には分からないでしょうけど。」
「複雑にしているのは貴女でしょう、エリザベータ。それに、ただ咲いて枯れるだけの何が悪いのよ。私は花として、そうやって普通に生きたいだけ。」
「私だって人間として普通に生きたいだけよ。」
「じゃあ生きれば?」
「だからそんな単純じゃーー」
「単純よ。」
少女はひんやりとした両手で私の頬を挟んだ。
「生きるのに意味なんていらないもの。」
「―――」
少女の言葉に一瞬、虚をつかれる。
すぐに反論しようと口を開いたが、何故か胸が詰まって何も言葉が出てこなかった。
「ねぇ、エリザベータ。貴女の口は何の為にあるの?耳は?目は?その何処にでも行ける足は?私が欲しいものを全て持っているのに、どうしてそれを使おうとしないの?」
「…」
「何でもできるのに、何にもしない。」
「わ、たしは…」
「正しくなければならない、美しくならなければならない。そんな建前で生きていた皇太子の婚約者は、300年前に死んでいるのよ。」
そんなことは、とっくの昔に知っている。
けれどーーー
「ーッ、」
何故か私の目からは、たった今気づいてしまったかのように、ポロポロと涙が溢れ出した。
自分の意思に反して、止まらない涙に困惑する。
少女に頬を両手で挟まれたままの私は、涙を拭うことも俯くこともできず、ただ少女に無様な泣き顔を晒すことしかできなかった。
「心は正直ね。貴女の代わりに、心はいつも泣いている。」
少女は憐れむような眼差しで私を見据えながら、言葉を紡ぎ続ける。
「自分が分からない。何をすればいいのかわからない。そりゃ、そうでしょう。貴女は今も昔も、自分の心に向き合っていないんだもの。いくら心が声を上げていても、貴女は気付かない。…いえ、気付かないフリをする。だって貴女は狡い人間だから。心と向き合ってしまったら、醜い自分が浮き彫りになってしまう。だから貴女は心と向き合わない。綺麗なままでいようとする。」
やめて、やめて、聞きたくない…!
全てを遮断するため耳を塞ごうとするが、少女はそれを許さない。
「貴女は考えて行動し続ける人間なの。花みたいに綺麗に咲いているだけじゃ生きられない。虫みたいに本能と反射だけでは生きられない。そうでしょう?」
分かっている。けれど、私は綺麗なままでいたかった。白くて可憐な花のようにただ咲いていたかった。
「残念だけど、それだけじゃ生きられない。」
少女は乱暴に私の涙を拭い、額と額同士をコツンと合わせた。
「綺麗な部分も醜い部分も全部ひっくるめて、今の貴女なんだもの。」
憐れみ。蔑み。怒り。
それらを含んだ瞳の奥に微かに滲む、こちらを案ずるようなーーーモニカの眼差しを見つけた瞬間、フッと身体から力が抜けた。
…そうだ。モニカはいつも、こんな目で私を見ていた。当時は何故そんな目で見てくるのか分からなかったが、今ならわかる。彼女は、私が無理をしていたことに気付いていたからだ。ずっと理想の自分を演じ続けていた私を、彼女だけは心配してくれていた。それに気付いたのが、300年経った今頃なんて、やりきれない気持ちいでいっぱいになる。
良いところも悪いところも、モニカは見てくれた。私という存在を受け入れてくれていた。
一方、あの人は私に理想を押し付けるだけで、私自身を見ようとはしていなかった。
私は。
私自身は、2人をちゃんと見ていなかった。
モニカのことは数いる侍女の1人として。
あの人には幼い頃に見た幻影を重ねて。
少女の言う通り、私と彼は全く同じ過ちを犯してしまった。けれど私はそれを認めたくなくて、彼だけを批判した。私だけは綺麗なままでいたかったから。
そこまで考えて、ふと私は自分の矛盾を見つけた。
私は許せないと思った。
理想ばかり押し付けて、私を見てくれなかった彼を。
けれど私は彼に見られたくなくて隠していた。
本当の自分を。
「ーーーあ…」
この時、私は初めて心の声をまともに聞いたような気がした。
そうか。
私が、今の私がしたいことはーーー
「…それでいいのよ。」
心の中で呟いた言葉に、少女はにっと満足げな笑みを浮かべる。
そして
「心に従って。」
少女がそう言った瞬間、彼女の身体とカモミールの花畑が淡い光を放ち始めた。
突然のことに私は驚いて目を見開く。一体どうしたのか、そう少女に尋ねようとしたが、少女も何が起きたのか分からないといったように目を見開いていた。
私の頬から離した両手をまじまじと見つめる少女。
しばらくの間、そうやって何かを考え込んでいた少女が、やがてポツリと呟いた。
「…呪いじゃなかったのね。」
「え?ーッ、」
突然、どこからか吹いた強い風が、カモミールの白い花びらを舞い上がらせた。
次々と茜色の空に吸い込まれていく花びらを私は唖然と見上げる。
「永遠が終わったのよ、エリザベータ。」
空から少女に視線を戻すと、少女は憑き物がとれたかのように穏やかな表情を浮かべていた。
「…どういう意味?」
「永遠のカタチが変わったの。」
答えになっていない。
もっと詳しく教えて欲しいと言えば、少女は意地悪な笑み浮かべて「自分で考えてみなさい。」と言った。
考えてみても、やっぱり分からない。唯一、私がわかることはーーー
「…消えてしまうの?」
「消えないわ。ただ本来のカタチに戻るだけだけ。」
そう言いながら少女は私の手に何か小さいものを握らせた。
冷たくて硬い、手に馴染んだ感触。
まさかそんなと思いながら握った手を開いた私は、思わず息を呑んだ。
「どうしてこれが…」
手の平の中には、古びた金属製の鍵がひとつ。
おそらく、いや、きっと。これは300年前、私が牢獄の中で飲み込んだ、机の引き出しの鍵。
「私が持っていても意味がないから。」
そう言って少女はニコリと微笑む。いつも意地悪なことばかり言ってきた少女が、こんな風に笑えることに、私は心底驚いた。
「失礼ね。」
私の心境などお見通しである少女は、いつものように顔を顰めた。その人間臭い仕草に私は思わず苦笑いを浮かべる。これで心がないだなんて。心を持っている人間より、少女の方がよっぽど人間らしいじゃないか。
私の心の中の声を読み取った少女は案の定、複雑な表情を浮かべる。
あぁ、ほら。
「貴女にも心はあるわ。」
「…。」
また間髪入れずに否定してくると思ったが、今回は違った。
何度か睫毛を瞬かせた少女は、呆れたように笑い、そして静かに瞼を閉じた。
「やっと眠れる。」
その呟きが合図だったかのように、もう一度強い風がサァーと吹いた。
舞い上がる白い花びら。
少女の身体も、いくつもの花びらとなって、空に吸い込まれていった。
「…。」
気付けば、辺り一面に咲いていたカモミール畑は消えていた。
眼前に広がる木々があるだけで何もない寂しげな雪景色に、今まで夢でも見ていたんじゃないかと思ってしまう。けれど手の平の中にある一輪のカモミールの花と古びた鍵が、夢ではなかったことを証明してくれた。
カモミール畑があったはずの場所を、じっと見つめる。
何だか胸にぽっかりと穴が開いてしまったような気分だった。
少し寂しいが、悲しくはない。少女は言っていた。本来のカタチに戻るだけだと。季節が巡れば、きっと芽が出て花は咲く。
そう。
この世界に永遠なんてものは必要なかったのだ。
確かに命は儚い。けれど必ず何処かで受け継がれて、巡っていく。
限られた命の中、奇跡のような今という瞬間を、私は精一杯生きてみたい。
冷たい空気を吸い込んだ私は、勢いよく立ち上がった。
少しふらついてしまったが、ちゃんと1人で立てている。
ずっと手に持っていた鍵と花をコートのポケットに仕舞おうとした途端、鍵が粉々に砕け散った。元々古かった鍵が、更に300年もの月日が流れてしまったのだ。ずっと持っていてくれた少女には悪いが、老朽化が進んでいてもおかしくはない。
「…。」
粉々になった鍵を、私は積雪の上に撒いた。
これで、あの引き出しに自分の弱さ醜さを隠すことが出来なくなった。
隠せないのなら、持っていくしかない。
例えそれがどんなに重くて背負えなくても。
「全部引き摺って連れて行く。」
醜くたって構わないーーーとまでは言えないし、自分の気持ちもあやふやのままだけど、少しだけ自分の心を信じてみようと思う。
先程まで辺りを茜色に染め上げていた夕日が暗がりに飲まれつつある中、私は一輪のカモミールの花をポケットに仕舞い、公爵邸に向けて走り出した。
*****
雪に何度も足を取られ転びながらも、私は完全に陽が落ちる前に、森を下りることができた。
肩で息をする私は、酷い有様だった。
髪は山からおりてきた山姥の如く乱れ、雪に濡れた服は何度も枝に引っかかり所々ほつれてしまっている。
きっと顔も引っ掻き傷が出来ているだろう。淑女としてあるまじき格好であるが、今はそんなことに構っている暇はない。
運よく近くに停まっていた辻馬車を見つけた私は、御者に行き先を伝えながら、お行儀悪く飛び乗った。
車内の壁に手をつき中腰になった私は目を瞑り、肩で息をする。完全な運動不足だ。
「ご機嫌よう、エリザベータ嬢。」
突然、車内に響く、気取った、若い、青年の、声。
背後で閉まった扉の音と同時に、私は思い出した。
あの人の言葉を。
―――『最近、辻馬車のフリをした強盗が多発していると、僕言いましたよね?』
顔から血の気が引く。
中腰のまま、錆びついた機械仕掛けの人形のように、向かいの席に首を回せば
そこには足を組んだ青年が一人
ゾッとするほど穏やかな笑みを浮かべていた。
「トミー =キッシンジャー…」
カラカラに乾いた口で彼の名前を呟いた瞬間、背後から伸びてきた手に口を塞がれた。
彼に気を取られていた私は、背後の扉が開かれ、忍び寄る影に気付かなかったのだ。
その事に気付いた時には既に遅く、ツンとした薬品のような匂いを嗅いだ記憶を最後に、私の意識は途絶えてしまった。
第9章「愚者の記憶」完
下の方に落書きがあるので閲覧注意です。
テオエリ(現パロ)
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