シュガー君は甘すぎる

白湯子

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シュガー君とお昼

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大学のお昼休み、私は中庭に居た。


「はい、唯子ちゃん。今日のお弁当だよ。」
「……ありがとう……。」


何故かシュガー君は私の分のお弁当を作ってきてくれる。しかも、高校生の時からだ。

高校生の時、何気なく「シュガー君のお弁当美味しそうだね。」と言ったら、その次の日から休まず毎日お弁当を作ってきてくれる。何度も断ったが、「趣味だから全然苦じゃないんだ。」と笑顔で言われてしまうのだ。

せめて私も何かお返しをしなくてはと思い、お弁当を作るのだが料理の才能がないらしく、兄に人には食べさせちゃ駄目だよと釘を刺された。


シュガー君のお弁当は料理が趣味というだけあって、味、見た目、栄養バランス全てが完璧だ。心なしか髪、肌のツヤが良くなったような気がする。
……………女子力高い……………。


「ねぇ、美味しい?」


私が食べている様子を楽しそうに見るシュガー君。じっと見るのはシュガー君のクセらしく、未だに慣れない。そんなまじまじと食べている姿を見ないで欲しい。


「うん、美味しいよ。…シュガー君に料理学ぼうかな?」
「駄目。」
「え。」
「俺が好きで作っているんだから、唯子ちゃんは何もしなくていいの。」
「でも……。」
「唯子ちゃんは俺のお弁当嫌い?食べたくない?」
「と、ととととんでもない!」
「だったらいいじゃない?」
「……………。」


(……人間ダメになりそう……。)


甲斐甲斐しく世話してくれるシュガー君に苦笑いするしかない。
シュガー君から料理を学ぶのは諦めた方がいいらしい。私は黙々とお弁当を食べながら、どうやって料理を勉強しようかと考えた。


「あ、唯子ちゃん。口にご飯粒付いているよ。」


自分の口を指さして教えてくれるシュガー君。私は恥ずかしくなり、慌てて顔に付いているであろうご飯粒を探す。


「あー、違う違う。反対だよ。」


シュガー君は私に手を伸ばし私の口に付いていたご飯粒を取り、あろう事か自身の口に運び入れた。
その流れるような自然の動作に固まる私ににっこりと微笑む。


「うん、甘い。」


その言葉にはっとした。顔に熱が集まっていくのがわかる。
この友人は簡単に恥ずかしいことをやってのけるのだ。


「唯子ちゃん。どうしたの?」


不思議そうに首をコテン傾げるシュガー君に、意識したことがバカらしくなる。
シュガー君にとって当たり前なことなのだ。目の前の人がご飯粒を付けていたら、とってあげる。そんな自然な流れなのだ。


「何でもないよ。」


私は自然を装って、シュガー君をなるべく見ないように食事を再開した。


だから、私を見つめるシュガー君の眼差しに気付くことが出来なかったのである。
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