7 / 63
第一章 アレクシス攻略
作戦会議・1
しおりを挟む
アレクシスに促され、私は彼が必要以上に兄に萎縮して見えたこと、それを克服するには成功体験を積むしかないと考えたことを説明する。
「成功体験とはなんだ?」
「努力して課題をこなしたり、苦手を克服するなどして、自分が成功したと思える経験のことです。この成功体験がないと、自分に自信が持ちにくくなります」
「ふーん? よくそんなことを知っているな」
感心したようにアレクシスがうなずいている。
前世の知識があるからです、とはとても言えない。
「それで勝負とは、具体的にどうする気だ」
「そうですね。勉強対決はどうでしょう?」
「勉強か……」
アレクシスが露骨に嫌そうな顔をした。
「やはり体を動かす方がお好きですか? 剣での戦いも考えたのですけれど、万が一クリスティアン王子を怪我させて、謀反を疑われてはたまらないでしょう」
「ああ、それは避けた方がいい」
マーサとベインズもうなずいている。
別に私も、兄弟げんかをさせたいわけではないのだ。謀反やクーデターなど、もってのほかである。アレクシスが自信を取り戻してくれればそれでいい。
「狩りも時季が違いますし、あとは勉強くらいしか思いつかなくて……」
「それで勉強か……。さすがに無謀すぎないか? 兄上の知識はオレの比ではないぞ」
「そうなのですか?」
クリスティアンが優秀なのはマンガにも書いてあったが、具体的にどの程度なのかはわからない。
私の問いに答えてくれたのはベインズだった。
「クリスティアン様の家庭教師からは、すでに魔法学院の入学前の勉強はもう終えていると聞いています」
ベインズが本を使って、説明してくれる。
ちなみに本の文字は、転生のおかげか自動で翻訳されているようだ。私の書いた日本語も、現地の言葉に翻訳されているようで非常に助かっている。
内容は基本文字の読み書き、簡単な四則演算、自国の歴史、楽器演奏、宮廷マナーが主だった。だいたい日本の小学校低学年レベルができれば問題なさそうだ。
国語、算数、社会、音楽ときて、理科はないのかと思ったが、魔法が発達しているこの国では科学という概念はないようだ。魔術に関連する部分は魔術師が、建築に関する部分は大工が、など各専門家が独自に研究していることはあるそうだが、子どもの教育体系には入っていないらしい。
また魔法については制御が難しいため、学院に入れるまでは教えてはならないそうだ。
異世界ファンタジーらしいことができるのではと期待していたが、年齢制限に阻まれてしまった。ちょっと残念だ。
「なるほど、だいたいわかりました。ちなみにアレクシス王子はどの程度まで進んでいますか?」
クリスティアンだけではなくアレクシスのレベルも知っておかなければ、どの科目で勝負すべきか判断できない。
私の質問にアレクシスが目をそらした。
「う……」
「坊ちゃま。お勉強から逃れると、こういうときに困るのですよ」
マーサが苦笑しながら、アレクシスをたしなめる。
勉強が嫌な気持ちはわかるよ。遊ぶ方が楽しいよね。
そうは思うけれど、アレクシスには頑張ってもらわないと困るのだ。居心地の悪そうなアレクシスを無視して、私はマーサに説明を促す。
「成功体験とはなんだ?」
「努力して課題をこなしたり、苦手を克服するなどして、自分が成功したと思える経験のことです。この成功体験がないと、自分に自信が持ちにくくなります」
「ふーん? よくそんなことを知っているな」
感心したようにアレクシスがうなずいている。
前世の知識があるからです、とはとても言えない。
「それで勝負とは、具体的にどうする気だ」
「そうですね。勉強対決はどうでしょう?」
「勉強か……」
アレクシスが露骨に嫌そうな顔をした。
「やはり体を動かす方がお好きですか? 剣での戦いも考えたのですけれど、万が一クリスティアン王子を怪我させて、謀反を疑われてはたまらないでしょう」
「ああ、それは避けた方がいい」
マーサとベインズもうなずいている。
別に私も、兄弟げんかをさせたいわけではないのだ。謀反やクーデターなど、もってのほかである。アレクシスが自信を取り戻してくれればそれでいい。
「狩りも時季が違いますし、あとは勉強くらいしか思いつかなくて……」
「それで勉強か……。さすがに無謀すぎないか? 兄上の知識はオレの比ではないぞ」
「そうなのですか?」
クリスティアンが優秀なのはマンガにも書いてあったが、具体的にどの程度なのかはわからない。
私の問いに答えてくれたのはベインズだった。
「クリスティアン様の家庭教師からは、すでに魔法学院の入学前の勉強はもう終えていると聞いています」
ベインズが本を使って、説明してくれる。
ちなみに本の文字は、転生のおかげか自動で翻訳されているようだ。私の書いた日本語も、現地の言葉に翻訳されているようで非常に助かっている。
内容は基本文字の読み書き、簡単な四則演算、自国の歴史、楽器演奏、宮廷マナーが主だった。だいたい日本の小学校低学年レベルができれば問題なさそうだ。
国語、算数、社会、音楽ときて、理科はないのかと思ったが、魔法が発達しているこの国では科学という概念はないようだ。魔術に関連する部分は魔術師が、建築に関する部分は大工が、など各専門家が独自に研究していることはあるそうだが、子どもの教育体系には入っていないらしい。
また魔法については制御が難しいため、学院に入れるまでは教えてはならないそうだ。
異世界ファンタジーらしいことができるのではと期待していたが、年齢制限に阻まれてしまった。ちょっと残念だ。
「なるほど、だいたいわかりました。ちなみにアレクシス王子はどの程度まで進んでいますか?」
クリスティアンだけではなくアレクシスのレベルも知っておかなければ、どの科目で勝負すべきか判断できない。
私の質問にアレクシスが目をそらした。
「う……」
「坊ちゃま。お勉強から逃れると、こういうときに困るのですよ」
マーサが苦笑しながら、アレクシスをたしなめる。
勉強が嫌な気持ちはわかるよ。遊ぶ方が楽しいよね。
そうは思うけれど、アレクシスには頑張ってもらわないと困るのだ。居心地の悪そうなアレクシスを無視して、私はマーサに説明を促す。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!
柚希乃愁
ファンタジー
『Blessing Blossom』という大人向けの恋愛シミュレーションRPGゲームがあった。
いわゆるエロゲ―だ。
その中に登場する公爵家長男レオナルド=クルームハイト。
あるときゲーム内のキャラクターであるはずの彼は、今の自分ではないもう一つの記憶を思い出す。
それはこの世界とは別の世界のもの。
その記憶の中で、彼は今自分がいるのがゲームの世界だということを知る。
しかもレオナルドは、ヒロインのどのルートに進んでも最後は死亡してしまう悪役令息で……。
ゲーム本編開始までにはまだ時間がある。
レオナルドは記憶を頼りに死亡回避のために動き出す。
自分にできることをしよう、と。
そんなレオナルドの行動は少なからず周囲に影響を与えていく。
自身の死亡回避、そして悠々自適なスローライフという目標に向かって順調に進んでいるかに見えたレオナルドだが、ある事件が起きる。
それはゲームにはなかったもので……。
ゲームと今レオナルドが生きている現実で展開が違っているのだ。
この事件をきっかけにレオナルドの考え方は変わっていくこととなる。
果たしてレオナルドは死亡エンドを回避できるのか―――。
*念のためのセルフレイティングです。
10/10 男性向けHOTランキング3位!
10/11 男性向けHOTランキング2位!
10/13 男性向けHOTランキング1位!
皆様お読みくださりありがとうございますm(__)m
11/4 第一章完結
11/7 第二章開始
未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます(Ver.02)
京衛武百十
ファンタジー
俺の名は錬是(れんぜ)。開拓や開発に適した惑星を探す惑星ハンターだ。
だが、宇宙船の故障である未開の惑星に不時着。宇宙船の頭脳体でもあるメイトギアのエレクシアYM10と共にサバイバル生活をすることになった。
と言っても、メイトギアのエレクシアYM10がいれば身の回りの世話は完璧にしてくれるし食料だってエレクシアが確保してくれるしで、存外、快適な生活をしてる。
しかもこの惑星、どうやらかつて人間がいたらしく、その成れの果てなのか何なのか、やけに人間っぽいクリーチャーが多数生息してたんだ。
地球人以外の知的生命体、しかも人類らしいものがいた惑星となれば歴史に残る大発見なんだが、いかんせん帰る当てもない俺は、そこのクリーチャー達と仲良くなることで残りの人生を楽しむことにしたのだった。
筆者より。
なろうで連載中の「未開の惑星に不時着したけど帰れそうにないので人外ハーレムを目指してみます」に若干の手直しを加えたVer.02として連載します。
なお、連載も長くなりましたが、第五章の「幸せ」までで錬是を主人公とした物語自体はいったん完結しています。それ以降は<錬是視点の別の物語>と捉えていただいても間違いではないでしょう。
令嬢は至極真面目にレベルアップで解決無双!貧乏も婚約破棄もレベルに全てお任せです!
鏑木 うりこ
ファンタジー
田舎子爵令嬢マリーはレベルが上がれば幸せになれると教えられた少し残念な女の子。王都の学園へ入学したマリーは幸せを目指してレベルアップに勤しむ。
「田舎臭い、服がダサいわ」「レベルアップよ!」「お金がないわ」「レベルアップよ!「あんな人に殿下のお心を盗まれるなんて!」「レベルアップよ!」
毎日レベルアップの連続でマリーは高レベル令嬢へと成長していく(んだろうか?)そしてレベルが上がったマリーは本当に幸せを掴めるのか!?無双で努力チート(?)は幸せの役に立つのか?立たせてみせようじゃないか。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
幼馴染を守る為に死んだ黒騎士は、あの約束を守る為に、転生する
竹桜
ファンタジー
幼馴染を守る為に死んでしまったエドリックは、記憶が無くしたまま、別の世界に転生した。
だが、別の世界に住んでいた記憶が無いエドリックは、クラスメイト共に元々居た世界に勇者召喚されてしまう。
そこで記憶を取り戻し、幼馴染との約束を守る為にエドリックは、幼馴染と約束した場所に向かうのだった。
*タイトルを変更しました。
旧タイトル、生まれ変わっても君との約束を守るよ
新タイトル、幼馴染を守る為に死んだ黒騎士は、あの約束を守る為に、転生する
帰らずの森のある騒動記 (旧 少女が魔女になったのは)
志位斗 茂家波
ファンタジー
平凡だったけど、皆が幸せに暮らしていた小国があった。
けれどもある日、大国の手によって攻められ、その国は滅びてしまった。
それから捕えられ、とある森にその国の王女だった少女が放置されるが、それはとある出会いのきっかけになった‥‥‥
・・・・・ちょっと短め。構想中の新たな連載物の過去話予定。
人気のある無しに関わらず、その連載ができるまでは公開予定。ちまちまと別視点での話を更新したりするかも。
2018/01/18 旧「少女が魔女になったのは」
変更し、「帰らずの森のある騒動記」にしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる