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第一章 アレクシス攻略
叱られました
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「来たな、ルシール。詳しい話を聞かせてもらおうか」
数日後、アレクシスから私だけ城に呼び出された。
招きに応じてアレクシスの私室に入ると、部屋の主は仁王立ちして待ち構えていた。しかも、しかめ面のおまけ付きだ。
なぜだろう。怒られる予感しかしない。
「あの……アレクシス王子。どうしてそんな難しい顔をしているのです?」
「アンタが、兄上に勝負を仕掛けるなどと言うからだ。しかもあの後、詳しいことは何一つ言わず、帰っていったではないか」
「ええ。先日は婚約のご挨拶に伺っただけですから。長居してもご迷惑になってしまうでしょう?」
「そういう問題ではない」
私は首を傾げる。
あの時点ではただの思いつきでしかなかったし、作戦を立てるためには情報が足りなかった。
だらだら居残っても、侍従たちを無駄に拘束するだけになってしまうから帰ったのだが、何が問題だったのだろうか。
「……昨日、兄上から勝負の日取りはいつにするのかと、質問が来た」
「ええ!? クリスティアン王子からですか!?」
「そうだ。たいそう楽しみにしている、とのことだぞ。今は保留にしてもらっているが、あまり引き延ばしはできないと思え」
背中に汗がしたたっていくのを感じる。
あのときアレクシス王子は近くにいなかったはずなのに、どうして私たちの会話を知っているのだろう。
「……あの、私、あくまで軽い提案と言いますか。もう少し詳細を練ってからクリスティアン王子に頼むつもりで……」
アレクシスが呆れたようにため息をつく。
「アンタが口にした場所を思い出してみろ。特に人払いをしたわけでもない、城の庭だぞ。たとえ兄上がその場にいなくとも、兄上の従者か誰かが耳にして伝えることぐらい想像ができないか?」
「ご、ごもっともです……」
冷静にアレクシスに諭され、私はうなだれる。
王族と会うのだからと、普段以上に気をつけていたつもりだったのだが、いつの間にかテンションが上がってしまっていたようだ。ぐうの音も出ない。
「……まあいい。アンタが何も考えずに口にしたことはわかった」
「すみません……」
「今回は仕方がない。だが、次から発言には気をつけてくれ。オレの婚約者となったアンタは、よかれ悪しかれ、注目を浴びている」
十歳の子どもに説教されて、私はすっかり肩を落としてしまった。
もしかしたら、自分の方が年上だからというおごりがあったのかもしれない。
「以後、気をつけます……」
「わかってくれれば、それでいい」
アレクシスがこくりとうなずく。
そして、そのまま首を背後に向けると、後ろに控えていた二人がさっと前に出る。
恰幅のいいマーサと、献上品の受け渡しを取り仕切っていた年嵩の侍従だ。
「マーサは知っているな。男の方はベインズだ。侍従たちをとりまとめている」
「よろしくお願いいたします、ルシール様」
「こちらこそよろしくね、ベインズ」
ベインズと挨拶を交わしながら、なぜ紹介されたのだろうと思っていると、マーサがニコニコと話しかけてきた。
「ルシールお嬢様のご提案は、坊ちゃまの今後に深く関わるお話のようでした。ですので、坊ちゃまをよく知る年嵩の者ならば、お力になれるのではと考えたのです。どうか同席をお許しくださいませ」
「ええ。もちろん構わないわ」
私はうなずく。
子どもだけで話すのは不安だから、大人もつけろというマーサの主張はもっともだ。
私はアレクシスに向き直る。
「では、アレクシス王子。何からお話しすればよいですか?」
「ふむ。まずは勝負とはなんだ? そもそも、どうして兄上に勝負を挑むなどという話になったのだ? そのあたりから話してくれ」
「わかりました」
数日後、アレクシスから私だけ城に呼び出された。
招きに応じてアレクシスの私室に入ると、部屋の主は仁王立ちして待ち構えていた。しかも、しかめ面のおまけ付きだ。
なぜだろう。怒られる予感しかしない。
「あの……アレクシス王子。どうしてそんな難しい顔をしているのです?」
「アンタが、兄上に勝負を仕掛けるなどと言うからだ。しかもあの後、詳しいことは何一つ言わず、帰っていったではないか」
「ええ。先日は婚約のご挨拶に伺っただけですから。長居してもご迷惑になってしまうでしょう?」
「そういう問題ではない」
私は首を傾げる。
あの時点ではただの思いつきでしかなかったし、作戦を立てるためには情報が足りなかった。
だらだら居残っても、侍従たちを無駄に拘束するだけになってしまうから帰ったのだが、何が問題だったのだろうか。
「……昨日、兄上から勝負の日取りはいつにするのかと、質問が来た」
「ええ!? クリスティアン王子からですか!?」
「そうだ。たいそう楽しみにしている、とのことだぞ。今は保留にしてもらっているが、あまり引き延ばしはできないと思え」
背中に汗がしたたっていくのを感じる。
あのときアレクシス王子は近くにいなかったはずなのに、どうして私たちの会話を知っているのだろう。
「……あの、私、あくまで軽い提案と言いますか。もう少し詳細を練ってからクリスティアン王子に頼むつもりで……」
アレクシスが呆れたようにため息をつく。
「アンタが口にした場所を思い出してみろ。特に人払いをしたわけでもない、城の庭だぞ。たとえ兄上がその場にいなくとも、兄上の従者か誰かが耳にして伝えることぐらい想像ができないか?」
「ご、ごもっともです……」
冷静にアレクシスに諭され、私はうなだれる。
王族と会うのだからと、普段以上に気をつけていたつもりだったのだが、いつの間にかテンションが上がってしまっていたようだ。ぐうの音も出ない。
「……まあいい。アンタが何も考えずに口にしたことはわかった」
「すみません……」
「今回は仕方がない。だが、次から発言には気をつけてくれ。オレの婚約者となったアンタは、よかれ悪しかれ、注目を浴びている」
十歳の子どもに説教されて、私はすっかり肩を落としてしまった。
もしかしたら、自分の方が年上だからというおごりがあったのかもしれない。
「以後、気をつけます……」
「わかってくれれば、それでいい」
アレクシスがこくりとうなずく。
そして、そのまま首を背後に向けると、後ろに控えていた二人がさっと前に出る。
恰幅のいいマーサと、献上品の受け渡しを取り仕切っていた年嵩の侍従だ。
「マーサは知っているな。男の方はベインズだ。侍従たちをとりまとめている」
「よろしくお願いいたします、ルシール様」
「こちらこそよろしくね、ベインズ」
ベインズと挨拶を交わしながら、なぜ紹介されたのだろうと思っていると、マーサがニコニコと話しかけてきた。
「ルシールお嬢様のご提案は、坊ちゃまの今後に深く関わるお話のようでした。ですので、坊ちゃまをよく知る年嵩の者ならば、お力になれるのではと考えたのです。どうか同席をお許しくださいませ」
「ええ。もちろん構わないわ」
私はうなずく。
子どもだけで話すのは不安だから、大人もつけろというマーサの主張はもっともだ。
私はアレクシスに向き直る。
「では、アレクシス王子。何からお話しすればよいですか?」
「ふむ。まずは勝負とはなんだ? そもそも、どうして兄上に勝負を挑むなどという話になったのだ? そのあたりから話してくれ」
「わかりました」
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