上 下
27 / 34

第27話 合体! 羊羊熊猫!

しおりを挟む
 ハンターギルドでの話し合いから二日、あっという間に約束の日になった。今日からめめさん達と熊さん達と一緒に、デメキンへと向かって進撃だ!

 待ち合わせ場所は惑星アルファの静止軌道だ。街の上空なんかでふよふよしているとなにかと迷惑だからな。妖精軍の旗艦グラジオラスの周りでは、妖精軍も進軍の準備にばたばたしているみたいだ。旗艦グラジオラスはいざという時の最大兵力なので、今回もお留守番かな?

 我輩達がふよふよと浮かんでいると、熊さん達の熊宇宙船と、めめさん達の羊の宇宙船が静止軌道まで上がってきた。

 めめさん達の宇宙船はデフォルメされた羊だ。まるまるしてて実に可愛らしい。ただ、そのサイズは結構大きい。長さが500mくらいある上に、胴回りも直径300mくらいある。横幅はそこに更にでっかい角も加わるため、なかなかの大きさだ。おまけに一隻じゃない。500mのでっかいのの後ろには、300mの少し小さいのが一隻ついてきている。しかも、これで全兵力というわけじゃなく、コーヒー農園の管理などのために、300mの宇宙船を一隻残して来たというんだから、めめさん達のパーティーの規模の大きさにはびっくりだ。

 2隻から通信が入る。ここからはパーティー用のチャンネルを設定して、ずっと繋げっぱなしの予定だ。

「すみません。お待たせしました」
「悪い、待たせたみたいだな」
「いや、なんの問題もない。待ち合わせ時間には少し早いしな。それより、準備が済んでいるようなら出発しようか」
「はい。私達は大丈夫です」
「ああ、俺達もだ」
「では、予定通りめめさん達の500mの宇宙船を中心に隊列を組むとしよう」
「はい! ババ、ドッキング準備はいい?」
「おっけいだよ~!」
「では、ドッキング開始!」

 ちなみにババさんというのは、めめさんの妹だ。もちろん羊だ。めめさんの名前は十中八九鳴き声のメーメーから来ていると思うのだが、ババさんも一緒なのだろう。なにせとある言語では、羊の鳴き声はbaa baaというらしいからな。きっとそうに違いない。

 我輩達は隊列を組む。まず、めめさんが艦長を務める500mの羊さんの上に、ババさんが艦長を務める300mの羊さんが、どで~っと覆いかぶさるようにくっ付く。

「ねえさん。ドッキング完了したよ!」
「こちらでも確認したわ。では次、はぴさん、熊太郎さん、お願いします」
「うむ」
「おうよ!」

 次は我輩と熊さんの番だ。熊さんの宇宙船は、300mの羊さんの更に上にドッキングする。これで、500mの羊さん、300mの羊さん、130mくらいの熊さんという、3段重ねが完成する。

 そして、我輩のミニぴぴぷちゃ号だが、熊さんの上に乗るのかと思いきや、500mの羊さんの前方上部が空いているから、そこにドッキングだ。ただ、ドッキングとはいっても、ミニぴぴぷちゃ号にそんなことを前提にした装備はないので、500mの羊さんの上に、その可愛らしい手足でしがみ付くだけだけど。

「艦長、全宇宙船のドッキングを確認しました」
「よろしい。では、出発します。速度は巡航速度、目標は敵小惑星型移動拠点デメキン!」
「「「「「は!」」」」」
「メインブースター点火!」

 めめさんの500mの羊さんが本格的に動き出す。最初こそなかなかのGが発生したが、しだいに巡航速度に近づいていき、それに伴いGも減少していく。そして、最終的には加速度はほとんどなくなった。

「みなさん、巡航速度になりました。ここからは安定飛行になりますので、自由に動いていただいて構いません。今後のスケジュールについて連絡がございますので、はぴさんと熊太郎さんは本艦のブリッジに来て頂けないでしょうか?」
「うむ」
「ああ、わかったぜ」

 我輩はミニぴぴぷちゃ号から降りて500mの羊さんのブリッジへと向かう。宇宙船間の移動は、それ用の通路があるわけではなく、普通に宇宙空間に出て、てくてく歩いて向かう。生命の進歩と言っていいのか、食べ物等から大量の宇宙パワーを摂取している我輩達は、生身で宇宙空間を移動しても大した影響は受けない。

 熊太郎も熊さんの宇宙船からぴょ~んと飛んでやってくる。

 そして、我輩達はめめさんの500mの羊さんに乗り込み、ブリッジを目指す。

「ようこそいらっしゃいました」
「ここがめめさんの宇宙船のブリッジか、凄いもこもこだな」
「ああ、もこもこしてて気持ちいいな」

 めめさんの宇宙船のブリッジは、一面もこもこだった。もこもこの絨毯に、もこもこの椅子。壁紙なんかももこもこだ。

「ふふ~ん。このブリッジのウールは全部ねえさんの毛から作ったんだよ。触り心地抜群でしょ?」
「うむ、実にいい手触りだ」

 ミニぴぴぷちゃ号の床は、生活スペースには畳が敷かれている。あれはあれで気持ちいいのだが、このウールもまた実にいい。

「ああ、これはちょっとほしくなるな」
「でも、お姉ちゃんのウールは高いんだからね!」
「こらババ! もう、この子ったら、すみません。紹介しますね、この子は私の妹の一人で、ババと申します。300mの宇宙船の艦長でもあります」
「ババです! よろしくね!」
「うむ、こちらこそよろしく頼む」
「ああ、よろしく頼むぜ」
「今後の予定なのですが、スクリーンをご覧ください」

 ブリッジにあるスクリーンには、この船の現在位置と速度。デメキンの現在位置と予測進路、速度が映されている。

「まず、デメキンの動向ですが、妖精軍やハンターギルドからもたらされる情報から、進路、速度共に二日前と変わらず、現在は惑星アルファから28日地点を飛行中です。そして、こちらの巡航速度はデメキンより速いため、順調にいけば12日後に会敵可能です。いかが致しましょう?」
「12日後か、それだと妖精軍の本隊よりもだいぶ早いか?」
「はい、妖精軍の本隊は3日後に出発予定ですので、普段の巡航速度からして、15日後の会敵になるかと思われます」
「俺達としては、BPSが直ってくれれば俺達だけで仕掛けても問題ないな」
「うむ、我輩達も同意見だ」
「修理に関しては、間に合いそうなのですか?」
「何とも言えねえな。今日からめめさん達のエンジニアの力も借りる予定だから、それ次第ってところだな」
「我輩達のほうは微妙な感じで言っていたな。完全修理は間に合わないらしいが、最低限動けるようにする分には問題ないらしい」
「なるほど。では、熊太郎さん達のBPSの修理状況を見て決めますね。もし間に合わないようでしたら、会敵するタイミングを遅らせます」
「俺達は助かるが、いいのか? はぴさんとめめさん達のパーティーだけでやっててくれても構わないぜ」
「いえ、小鬼達だけならともかく、鬼がいる可能性がある以上、準備は万全にすべきです」
「そういうことなら、わかったぜ」
「では、当面はこのまま飛行し、会敵のタイミングに関しては、熊太郎さん達の修理状況次第ということでよろしいでしょうか?」
「うむ」
「すまんな」
「では熊太郎さん。BPSの修理状況の確認に行きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、頼む」
「では、我輩もついて行くかな」
「はい!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アンチ・ラプラス

朝田勝
SF
確率を操る力「アンチ・ラプラス」に目覚めた青年・反町蒼佑。普段は平凡な気象観測士として働く彼だが、ある日、極端に低い確率の奇跡や偶然を意図的に引き起こす力を得る。しかし、その力の代償は大きく、現実に「歪み」を生じさせる危険なものだった。暴走する力、迫る脅威、巻き込まれる仲間たち――。自分の力の重さに苦悩しながらも、蒼佑は「確率の奇跡」を操り、己の道を切り開こうとする。日常と非日常が交錯する、確率操作サスペンス・アクション開幕!

暗闇ロボ 暗黒鉄

ヱヰキング
SF
ここは地球、美しく平和な星。しかし2年前、暗闇星人と名乗る謎の宇宙人が宣戦布告をしてきた。暗闇星人は、大量の量産型ロボットで地球に攻めてきた。世界は国同士の争いを一度すべて中断し、暗闇星人の攻撃から耐え続けていた。ある者は犠牲になり、ある者は捕虜として捕らえられていた。そしてこの日、暗闇星人は自らの星の技術で生み出した暗闇獣を送ってきた。暗闇獣はこれまで通用していた兵器を使っても全く歯が立たない。一瞬にして崩壊する大都市。もうだめかと思われたその時、敵の量産型ロボットに似たロボットが現れた。実は、このロボットに乗っていたものは、かつて暗闇星人との争いの中で捕虜となった京極 明星だったのだ!彼は敵のロボットを奪い暗闇星から生還したのだ!地球に帰ってきた明星はロボットに暗黒鉄と名付け暗闇獣と戦っていくのだ。果たして明星の、そして地球運命は!?

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

幻想遊撃隊ブレイド・ダンサーズ

黒陽 光
SF
 その日、1973年のある日。空から降りてきたのは神の祝福などではなく、終わりのない戦いをもたらす招かれざる来訪者だった。  現れた地球外の不明生命体、"幻魔"と名付けられた異形の怪異たちは地球上の六ヶ所へ巣を落着させ、幻基巣と呼ばれるそこから無尽蔵に湧き出て地球人類に対しての侵略行動を開始した。コミュニケーションを取ることすら叶わぬ異形を相手に、人類は嘗てない絶滅戦争へと否応なく突入していくこととなる。  そんな中、人類は全高8mの人型機動兵器、T.A.M.S(タムス)の開発に成功。遂に人類は幻魔と対等に渡り合えるようにはなったものの、しかし戦いは膠着状態に陥り。四十年あまりの長きに渡り続く戦いは、しかし未だにその終わりが見えないでいた。  ――――これは、絶望に抗う少年少女たちの物語。多くの犠牲を払い、それでも生きて。いなくなってしまった愛しい者たちの遺した想いを道標とし、抗い続ける少年少女たちの物語だ。 表紙は頂き物です、ありがとうございます。 ※カクヨムさんでも重複掲載始めました。

基本中の基本

黒はんぺん
SF
ここは未来のテーマパーク。ギリシャ神話 を模した世界で、冒険やチャンバラを楽し めます。観光客でもある勇者は暴風雨のな か、アンドロメダ姫を救出に向かいます。 もちろんこの暴風雨も機械じかけのトリッ クなんだけど、だからといって楽じゃない ですよ。………………というお話を語るよう要請さ れ、あたしは召喚されました。あたしは違 うお話の作中人物なんですが、なんであた しが指名されたんですかね。

スペースシエルさんReboot 〜宇宙生物に寄生されましたぁ!〜

柚亜紫翼
SF
真っ暗な宇宙を一人で旅するシエルさんはお父さんの遺してくれた小型宇宙船に乗ってハンターというお仕事をして暮らしています。 ステーションに住んでいるお友達のリンちゃんとの遠距離通話を楽しみにしている長命種の145歳、趣味は読書、夢は自然豊かな惑星で市民権とお家を手に入れのんびり暮らす事!。 「宇宙船にずっと引きこもっていたいけど、僕の船はボロボロ、修理代や食費、お薬代・・・生きる為にはお金が要るの、だから・・・嫌だけど、怖いけど、人と関わってお仕事をして・・・今日もお金を稼がなきゃ・・・」 これは「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」に投稿している「〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜」の元になったお話のリメイクです、なので内容や登場人物が「リーゼロッテさん」とよく似ています。 時々鬱展開やスプラッタな要素が混ざりますが、シエルさんが優雅な引きこもり生活を夢見てのんびりまったり宇宙を旅するお話です。 遥か昔に書いたオリジナルを元にリメイクし、新しい要素を混ぜて最初から書き直していますので宇宙版の「リーゼロッテさん」として楽しんでもらえたら嬉しいです。 〜隻眼の令嬢、リーゼロッテさんはひきこもりたい!〜 https://www.alphapolis.co.jp/novel/652357507/282796475

処理中です...