にゃがために猫はなく

ぴぴぷちゃ

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第25話 また来たよ

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 我輩がミニぴぴぷちゃ号をぴっかぴかにして戻ってくると、ぴぴとぷうは熊さん達と楽しそうに通信しながら修理をしていた。我輩が手伝えることも特になさそうなので、ごろごろしながらみんなの作業風景を眺めていたのだが、突如ミニぴぴぷちゃ号に通信が入る。

「こちらハンターギルド虎支部、繰り返す、こちらハンターギルド虎支部。小鬼達の侵攻を確認した。至急ハンターギルド虎支部へと集合してほしい。繰り返す、小鬼達の侵攻を確認した。至急ハンターギルド虎支部へと集合してほしい」

 熊さん達との通信からも同じ音声が聞こえるから、どうやら向こうにも同じ通信が来たようだ。

「おいおい、まじかよ」
「くそ、よりにもよってBPSが故障してるときにこなくってもいいだろうが!」
「熊太郎、わしらは修理を続行する。リーダーとしてギルドへ行ってきてくれ」
「ああ、わかったぜ!」
「はぴもお願い。わたしとぴぴはここで作業してるから」
「うん、わかった!」
「よし、はぴさん、付いてきてくれ。こっちに俺達の車がある」

 我輩は熊太郎の車に乗り込み。虎のギルマスのいるギルド支部へと足を運ぶ。ハンターギルド虎支部には、続々とハンター達が集まってきているようだ。BPSや宇宙船、車が続々と駐車場に集合してくる。そしてその中には、めめさんもいた。

「はぴさん!」
「めめさんも来たのか」

 最近はついつい口調が乱れていたが、めめさんもいることだし、ここは気を引き締めないとな。

「はい、ハンター業は休止中ですが、気になりましたので」
「では、めめさんも一緒に行くとしよう」
「はい! あの、羊のめめと申します。熊太郎さんですよね? よろしくお願いします」
「丁寧なあいさつ感謝する。俺は熊太郎。めめさんのお噂はかねがね聞いている。こちらこそよろしく頼む」

 あれ? この二人って知り合いなのかな? 羊と熊、あんまり接点が思い当たらないんだけど。まあ、二人ともハンターだし、顔くらい知っていてもおかしくはないのかな?

 めめさんと合流した我輩達は、ギルド虎支部の中へと入っていく。ギルド内はまだ混雑していないようだ。でも、駐車場に来ていた車なんかを見るとこの後結構大変なことになりそうだ。

「はぴさん、熊太郎さん、まずは食堂で場所を確保しませんか? この後すごく混んでくると思いますので」
「めめさん、ナイスアイデアだ。そうしよう」
「ああ、俺も賛成だ」

 そして、我輩達が食堂に向かうと、ギルド職員の妖精さんが声を欠けてきた。

「はぴさん、それにめめさんに熊太郎さんですね。申し訳ありません。挨拶もそこそこに申し訳ないのですが、こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」
「うむ、構わない。二人もいいかな?」
「ああ」
「はい!」

 ギルドの職員さんについていくと、会議室へと案内された。部屋の中にはすでに数人のハンターがいる。それから、壁際には何枚かのモニターが用意されており、その内の1枚は別の部屋の様子を映しているようだ。

 どうやらモニターの先の部屋にも、ハンターが集められているようだな。

「申し訳ないのですが、こちらの部屋でお待ちください。もう少ししたらメンバーが揃いますので、その後ギルマスかサブマスから、ご説明があります」
「うむ」
「ああ」
「はい」

 我輩達は適当な席に座り、言われるがままに待つことにした。

「はぴさん、めめさん、気付いているか?」
「はい」
「え、何のこと?」

 ん? 熊さんとめめさんは何を言ってるんだろう? ただ会議室に案内されて座ってるだけなのに、気付くことなんて普通ないよね? 我輩が戸惑っていると、二人がフォローしてくれた。

「はぴさん、この部屋にいるハンターメンバーと、モニターに映ってるハンターの話だ」
「はい。この部屋にいるハンターも、モニターに映っているハンター達も、みな凄腕と呼ばれている方ばかりです」
「そうなの?」
「はい。私もすべてを把握しているわけではありませんが、ハンターならだれもが知っているような大物だらけです。正直、私なんかがここにいていいのかと、緊張するレベルです」
「ああ、俺も大半は知ってるな」
「そ、そうなんだ」

 やばい。我輩、他のハンターのことなんてまったく知らない。そりゃあ我輩だって時々ギルドの食堂でご飯を食べてるから、見たことあるハンターくらいはいるけど、名前とかそんなことは一切知らないんだよね。

「ま、まあ、はぴさんが知らなくてもしょうがないさ。俺が知ってるのも、他のパーティーと合同で何かやったりしたことがあるからだしな」
「そ、そうですよ。はぴさん達は3人で完結してますから。他のパーティーと組む機会は無いでしょうし、組む機会がなければ知らないのも当然ですよ」
「うん・・・・・・、ありがとう」

 くう、まさか二人にフォローまでさせてしまうとは。熊さんとめめさんは、今も新たに部屋に入ってきたハンター相手に、軽く手を上げたり会釈したりと、それとなく挨拶をしているみたいだから、本当に二人とも知り合いが多いみたいだ。

 そして、待つこと小一時間。ハンター達が続々と集まり、最後に虎のギルマスが現れた。

「おう、お前ら集まったか。急に呼び出して悪かったな。んじゃ、早速だが説明を開始するぜ。まずはこいつを見てくれ」

 ギルマスがモニターを操作して、現在のこの星系の状況を映し出す。そこには、赤い点で惑星アルファに近づく隕石のようなものが映し出されていた。

「ま、見ての通りだな、このアルファに接近中の赤い点が、今回の侵攻における敵の拠点だ。直径50km程度の、岩石と氷からなる小惑星を改造したと思われる拠点で、その姿から妖精軍はデメキンと名付けた。最初はなんだそのネーミングセンスはって思ったが、実際アップで見るとこの通り、デメキンにしか見えねえ」

 モニターには敵の拠点のアップが映し出されたが、確かにデメキンだ。角と牙っぽいのがくっ付いているのが気になるが、表面の凸凹が魚の鱗っぽく見えるし、推進装置の炎かなにかが、これまた尻尾みたいに見える。うん、まぎれもなくデメキンだ。

「んで、これもまあ見ての通りなんだが、現在デメキンはここにいる、今のままの速度だとアルファまで約700時間ってところだな」

 700時間ってことは約30日か。

「まあ、デメキンが全速力なのかわからんからな。途中で加速もあり得るし、減速もあり得る。大まかな目安程度に思っておいてくれ。んで、ここからが本題なんだが、妖精軍ではこのデメキンと正面からやり合うことを決定した。そのうえでお前らに依頼だ。このデメキン、俺達も協力して落とすぞ。ここまでで何か質問は?」
「いいか?」

 ハンターの一人が手を上げる。

「おう、なんだ?」
「敵の戦力はどの程度だ?」
「そこはこの後話す予定だったが、まあいい。正直敵の規模はわからん。その辺の偵察もこれからの予定だ。ただ、今回のデメキンによる侵攻は、アルファの維持のための正念場になるっていうのがお偉いさん方の意見だ。つまり、それ相応の規模だと思ってくれ」
「それは、先の大戦で戦った、惑星アルファの駐留部隊よりも多いと言うことか?」
「当然だ。惑星アルファの駐留部隊が俺達に負けたんだぜ? 本格的に奪い返すってんなら、その倍は用意してるだろうな。まあ、そこんところは、これからデメキンをつついて調べる予定だ。そういうのが得意な足の速い連中には、むしろ手伝ってほしい」

 ここでいう先の大戦というのは、我輩が妖精軍と仲良く戦った、亜光速ゲートによる小鬼達の襲撃のことじゃないっぽい。そのもっと前、めめさん達と仲良くなった、惑星アルファ侵攻作戦のことだ。

「あたしからもいいかい?」
「ああ、なんだ?」
「惑星アルファの侵攻には、反撃なんかをされにくいように、タイミングなんかを十分に計っていただろう? 惑星ベータもガンマも、今は公転周期の関係で遠い。デメキンはどっからやってきたんだい?」

 惑星ベータやガンマというのはこの星系の他の惑星の名前だ。このNK222星系には、合計8つの惑星がある。そして、妖精の国では外側の惑星から順番に、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタと順番に命名している。

 ちなみにベータはアルファに似た氷惑星で、アルファ以上に巨大な小鬼達の拠点があるとされている。そしてガンマとデルタは巨大ガス惑星のため、惑星そのものには小鬼達は住んでいない。巨大ガス惑星はテラフォーミングの難易度が非常に高いのだ。その代わり、周囲に浮かぶ衛星に拠点を持っているといわれている。そして、イプシロン、ゼータ、エータ、シータは岩石惑星で、この岩石惑星達が小鬼達の本拠地と言われている。

「それに関しては推測の段階を出ないんだが、可能性として一番高いのは、デルタとイプシロンの間にたくさんある小惑星の一つを改造して作られた軍事施設って説だな。軌道的にデルタ方面から飛んできてるから、たぶんだが、デルタでスイングバイでもして加速したんだろう」
「デルタより内側か、厄介だね」
「ああ、その通りだ。デルタよりも内側からってことは、敵の本拠地の戦力を抽出した可能性がある。今回の侵攻、もしかすると小鬼どもだけじゃなく、鬼が混ざってくるかもしれないぜ」

 このギルマスの発言に、にわかに会議室の中が騒がしくなる。鬼か~、どんなやつなんだろう。小鬼が大きくなったようなかんじなのかな?

「うるせえ! 鬼がいる可能性はアルファ侵攻時から言われてたことじゃねえか! いまさらびびってんじゃねえ!」

 ギルマスが一喝すると、表面的には静かになる。でも、ちょっと待ってほしい。みんなさも当然のように鬼のことを理解しているけど、我輩、鬼がそもそもなんなのか知らないんだけど・・・・・・。

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