にゃがために猫はなく

ぴぴぷちゃ

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第18話 トリプルベアタック+ワン!

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「あれ? おいディアネス」
「なんじゃ、太郎よ」
「いや、敵の攻撃、止んでねえか?」
「む? そういえばそうじゃな」

 俺はディアネスと一緒に、ディアネスがハンマーで床をぶっ叩いて作った障害物の後ろに隠れながら通路を進んでいたんだが、ふと敵の攻撃が止んだことに気付いた。そして、なんで攻撃が止んだのかを確認するために敵のほうを覗いてみると、そこには盛大に暴れるぴぴさんがいた。

「え、なんでだ? なんでぴぴさんがもう奥にいるんだよ!」
「わしにもわからん。というか、いったいいつわしらを追い越したんじゃ?」
「っと、考えるのは後だ。いまは突っ込んで通路の確保を優先しよう」
「うむ、そうじゃの」

 俺とディアネスは走り出す。ぴぴさんにばっか獲物を取られちゃかなわないからな。おっと、どうやらカーロのやつも同じ考えだったようだ。いままでは次郎とぷうさんの護衛も兼ねて、一緒に遠距離戦をすることを選んでいたようだが、あいつも本来は盾と剣で戦う前衛職だからな、こういう前に出れる機会を逃すような奴じゃないよな。背後への備えに関しても、ぷうさんは接近戦もいける口って話だし、次郎は俺と同じ熊だからな、接近戦が苦手とはいえ、防御力はそれなりにある。この距離感なら俺達が戻る事でも十分対処出来るだろう。

「ぴぴさん、加勢するぜ! ここは任せろ!」
「あら? ほんと? じゃあ、私はもっと奥に行くから、ここはよろしくね」
「え?」
「おう、任せとけ!」
「うむ、おぬしは好きに暴れてくるのじゃ!」


 ちょっと言葉のチョイスを間違えたかな? 俺としてはぴぴさんと一緒に戦いたかったんだけど、任せろとか言っちゃったせいで、ぴぴさんはもっと他に行きたくなっちゃったようだ。とはいえ、一度言ったことをあっさり取り下げたら熊が廃るからな。カーロとディアネスもやる気だし、いっちょ暴れてやるぜ!

 ぴぴさんが暴れていたところに到着すると、早速俺のレーダーが地形を把握したのか、教えてくれる。どうやら、さっきの場所よりはるかに広い円柱状の空間のようだ。壁には俺達がいま通ってきたような通路があと4本。均等な方向に向けてあるっぽいな。それから、中央部にはデケえシャフトのようなものが天井を貫くようにそびえたっている。俺とディアネス、カーロはフロアに出てから思いっきり咆哮をかます。そう、ここからは俺達が相手だと、連中に思い知らせてやるためだ! 

「ぐるああああ!」
「がおあ~!」
「がお~!」

 俺達が追いつき、思いっきり吠えたことで、ぴぴさんは俺達にこの場を任せて、そのままどこかへ消える。あれ? なんでだ? 一瞬でぴぴさんが消えたんだけど。っと、いまはそれどころじゃねえな。俺達はこのフロアの連中の相手をしないとだしな! って、あれ? なんか敵、多くね? あっちこっちの障害物から、小鬼どもが銃を構えだしたんだけど。レーダーにもめっちゃ大量の敵の反応が現れやがった。

「おいおい、なんだよこの数、やばくね? ってか、なんでぴぴさん平気だったんだ? 普通こんだけ敵いたら集中攻撃食らってるだろ?」

 通路から見たぴぴさんの暴れっぷりから、俺達でも大丈夫と思って飛び出したんだけど、なんか想定外に敵が多い! 簡易的な防御陣地を作ってるのはさっきの場所と同じだが、そこから顔を出してきた小鬼の数が違いすぎる。くそ、さっきまでレーダーに敵影があまり映ってなかったから気を抜いてたぜ。さっきまで映ってなかったのは、敵が障害物に隠れてた上に、発砲も何もしてなかったからかよ! これは完全に虚を突かれたぜ。

「ぴぴのことなら、ステルスモードの関係だと思うよ。どうもわたしやぴぴのステルスモードは、小鬼達にはまったく察知できないみたいでね。正面から攻撃しても、ぜんぜん反撃されないんだ」

 ぷうさんが通路とフロアの境目くらいからのほほんっとした声で返事をしてくれる。

「つまり、ぴぴさんがこのフロアに突撃してもぜんぜん敵から攻撃食らってなかったのって」
「うん。小鬼達には仲間が攻撃されてることは認識できても、攻撃してるぴぴを認識できなかったから、反撃しようがなかったんだと思うよ。一応仲間がやられてるわけだから、警戒してカバー状態で待機してたみたいだけどね」
「でも、俺達のことは見えてる、よな?」
「うん、ばっちり見えてると思うよ。だから、みんな障害物から銃を構えてるんじゃない?」

 まじかよ! つーか猫系の連中のステルスモードはすげえって聞いてたけど、そんなずるいことあるか? 無敵じゃねえかよ! って、そんなこと考えてる場合じゃねえな。

「ディアネ~ス!」
「任せろ! がおあ~!」

 俺は即座にディアネスの名前を呼ぶ。ディアネスはそれだけで理解してくれたようだ。その巨大なハンマーで地面を叩き、その瓦礫で障害物を作り出す。それと同時に、あちこちからこれでもかと小鬼どものビームが飛んでくる。あっぶね。どうやらぴぴさんが見えてなかったことで、小鬼どもも混乱していたようだな。ギリ助かったぜ。これで最低限、ぷうさんと熊次郎のための障害物は出来た。いや、ぷうさんはステルスモードの説明の時に、わたしやぴぴのって言ってたよな。つまり、ぷうさんもステルスモードを使えば無敵なのか? いや、ダメだ。いまはそんな余計なことを考えている余裕はない!

「太郎、カーロ、続けていくぞ! ぷう、次郎、援護しろ!」
「「おう!」」
「「うん!」」

 俺達前衛組はディアネスにそこらじゅうをハンマーでぶっ叩いてもらって、瓦礫を量産する。そして、俺とカーロはその瓦礫の破片をそこら中に巻き散らして障害物をどんどん作っていく。こういう時は、こちらが有利な場を作るのが得策ってな!

 ある程度瓦礫の散布が終わって、ディフェンダーによる集中砲火のリスクさえ下がればこっちのもんよ。

 俺達は瓦礫から飛び出し次々と敵を倒していく。ディフェンダーは30mとデカくてそこそこ耐久性能もあるが、俺にとっては1撃で仕留められる相手だし、なによりその残骸は、投擲武器、あるいは盾としてもなかなかいい。俺は仕留めたディフェンダーを別の敵へと投げ飛ばす。その重量故に敵も無視はできまい。よけるなり盾でガードなりしているその隙に、一気に距離をつめてさらに仕留める! が~っはっはっは! 完璧じゃねえの!

 カーロも本領発揮だな。カーロの盾なら、2、3匹のディフェンダーのビームが集中しても防ぎきれるからな。盾でビームを防ぎながら強引に突進して、そのままシールドバッシュ。そして体勢が崩れたところを剣で貫く。カーロの必勝パターンってやつだな。単純な戦法ではあるものの、俺よりでけえカーロのシールドバッシュは、結構効くんだよな。

 ディアネスの戦い方は攻防ともに派手だな。敵の銃撃をその巨大なハンマーや、床を叩いて出来る瓦礫でガードしたかと思えば。ハンマーを床をえぐるように振るい、床の破片を直接敵に飛ばすっていう、なんとも豪快な遠距離攻撃までする。そして、接近すればそれこそやつの真骨頂だ。両手持ちの巨大なハンマーは、10mの小さい連中どころか、30mのディフェンダーすら盾ごと一撃で粉砕する。うお、相変わらずすげえな。ディフェンダーがバラバラになってるじゃねえか。

 ぷうさんと熊次郎も的確に射撃して、俺達の背後に敵が回り込めないようにしてくれているし、こりゃあ、思ったよりも楽勝だな。とはいうものの、敵の数はあいっ変わらず多い。倒せど倒せど全然減ってる気がしねえ。いまはまだ余裕があるが、小鬼どもは数だけは多いからな。このまま持久戦をするのは、あまりいい選択肢じゃねえよな。

 ふ~む、新しい敵の反応はシャフトの周辺に多いな。こりゃあ、中央のでかいシャフトの中に、エレベーターとか、何らかの兵隊の輸送装置があると考えるのが自然だな。そこまで攻め込んで制圧したいところではあるんだが、こうも数が多いと、下手に前に出ると、横から回り込まれるリスクがある。くっそ、忌々しい。ちょっと早い気もするが、ここは俺達の最大火力の連携技をお披露目するとするか。

「おいお前ら、あれやるぞ!」
「狙いは?」
「中央のシャフトだ。十中八九あそこから増援が来てる」
「わかったよ!」
「了解じゃ!」
「おうよ!」

 よし、そうときまりゃあ、見せてやるぜ、俺達の連携技、その名もトリプルベアタックってやつをな。ん? 言い間違いじゃないぜ。トリプル、ベアー、アタックを略して、トリプルベアタックだからな!

「カーロ、守ってね! 兄ちゃん、いくよ!」
「「おう!」

 まず、熊次郎が両手と口からエネルギーを放出し、ぷうさんの爆弾のようなエネルギー弾を繰り出す。そしてそこに、俺も熊力ことベアーパワー、通称bpを追加で注入する。次郎の作ったエネルギー弾がどんどん大きくなる。いよっし、いい出来だな。ちなみにカーロは俺達の前に立って、盾のバリアを使ってのガード役だ。

「ディアネス!」
「わかっとる! いくぞ!」

 そして、そんな巨大なエネルギー弾を、ディアネスがハンマーで思いっきりぶっ叩く。これぞ俺達パーティーが誇る最大火力の連携技、トリプルベアタックだ! 

 俺と次郎の作った巨大エネルギー弾は、ディアネスによって打ち出され、真っ直ぐにシャフトに向かって飛んでいく。うおっしゃあ! 命中だ!

 ちゅっど~ん!

「が~っはっはっは! デケえシャフトも、俺達のトリプルベアタックにかかればこんなもんだな!」
「がっはっは! 当然じゃな! 流石はわしらのトリプルベアタックじゃ!」
「うんうん、今日もトリプルベアタック絶好調だね!」
「トリプルトリプルって、俺だって一応ガード役で参加してるんだからな」

 う~む、カーロも入れてやらないと可哀そうか。次回以降はトリプルベアタックじゃなく、クアドルプルベアタックにでも改名してやるかな? が~っはっはっは!
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