にゃがために猫はなく

ぴぴぷちゃ

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第13話 ハードボイルドにゃんこな1杯

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「うむ、流石めめさんだ。実に美味い」
「ふふ、ありがとうございます」

 我輩は今、めめさんの喫茶店の庭で、朝の木洩れ日を浴びながらコーヒーシェイクを飲んでいる。一緒に食べるのはサンドイッチだ。卵サンドと、ハムレタスサンドというシンプルなメニューだが、めめさんは料理の腕も一流だ。とても美味い。

 商業ギルドでの交渉から3日、我輩達の縦横300mあった土地は生垣により、縦横100mに9分割され、その内南西エリアのめめさんの喫茶店も無事に完成した。

 めめさんの喫茶店は3階建の木造建築だ。100m四方の土地を全面に使うのではなく、庭も確保されている。そこには木々が植えられて、さらにウッドデッキとテーブルもある。レンガ造りのアプローチといい、ウッドデッキといい、めめさん達の美的センスはなかなかのものだ。

 しかも、我輩達が出入りしやすいように北東方向にもわざわざアプローチとテーブルを取り付けてくれた。うむ、やはりめめさんは良いひとだ。

「それにしても、初日から大盛況だな」
「ええ、そうですね。正直各種ギルドの本格稼働までは閑古鳥が鳴くものかと思っていたのですが、まさか初日からこんなに大勢に来ていただけるとは思っていませんでした」

 めめさんの喫茶店の客入りだが、初日からすごい多い。今はまだ街の庁舎や議会、各種ギルドといった行政機関が機能移転の最中ということもあって本格稼働していないにもかかわらず、すでに満席に近い。どうやら工事関係者をはじめ、移転作業にかかわる人たちが噂を聞きつけてすでに来ているようなのだ。我輩も危うく一番客という名誉を取り損ねるところだった。

「最初、商業ギルドの方に進められたときは、100m四方に3階建の建物なんて広すぎると思っていたのですが、いまではこれでよかったとホッとしております」
「うむ、流石は商業ギルドといったところだな。先の見通しの建て方が我々とは違ったな」
「はい」
「さて、ではそろそろ失礼させてもらうかな」

 めめさんのコーヒーシェイクとサンドイッチは非常に美味しかったからぺろりと食べてしまった。であれば、こんな混雑している時間にのんびりするのも悪いだろう。

「あら、もう行かれてしまうのですか?」
「うむ、中からめめさんの妹さんかな? めめさんに助けてほしそうに見ているからな」

 この喫茶店は3階建ということもあって、めめさん一人で切り盛りしているわけではない。そのため、めめさんの妹達が一緒に働いている。そしてその目が、助けてお姉ちゃんと、先ほどから訴えかけているのだ。

「もう、あの子ったら。すみませんはぴさん、追い出すような形になってしまって」
「構わんよ。この混雑っぷりだ、めめさんの不在は辛いだろう?」
「ありがとうございます。これは、私が少しくらい抜けても大丈夫なように、妹たちを鍛えないといけませんね」
「ほどほどにな。では、お勘定を置いていく」
「あ、はぴさん、多いですよ」
「なに、開店祝いだ」
「ありがとうございます」
「うむ、ではな」
「はい、またいつでもいらっしゃってください」

 我輩はかっこよく、そう、ハードボイルドにゃんこ的かっこよさを醸し出しながら、めめさんの喫茶店を後にした。



 さて、ここで我輩達のスペースの紹介をしよう。まず、我輩のミニぴぴぷちゃ号が停泊している場所は、9区画のうちの真ん中のスペースだ。100m四方の土地のど真ん中にミニぴぴぷちゃ号の停泊スペースがあり、ミニぴぴぷちゃ号の正面には、ぴぴとぷうの切り裂き王と噛み付き王がお出かけする際の発着場がある。まあ、発着場などとかっこよく言ってみたが、ただの空き地だ。

 空き地以外の場所にはところどころに木が植えてあったり、地面は芝で覆われておりと、これぞ庭という感じになっている。木や芝の管理なんて出来るのって思われそうだが、もちろんできない。そこはめめさん達がやってくれるというのでお任せだ。というか、この庭もめめさん達の作品だしな。そして、真ん中の土地へアクセスする南がわの100m四方の土地も同じく庭になっている。正門が南側についているくらいしか、代わり映えはしない。

 そうそう、この空間はあくまでもプライベートスペースなので、のぞき見防止用のジャミングフィールドが常時展開されている。じゃないと宇宙からのぞき放題になってしまうからな。あとは周囲が比較的騒がしい土地ということで、防音フィールドも展開している。


 そして、我輩がミニぴぴぷちゃ号に帰ってのんびりしていると、ミニぴぴぷちゃ号のレーダーにぴぴとぷうのバトルパワードスーツ、切り裂き王と噛み付き王の反応があった。

「「ただいま~」」
「おかえり、早かったね。地下基地はもう攻略しちゃったの?」
「ううん、まだだよ。ご飯無くなっちゃったから帰ってきたんだ」
「そっか、10日分くらい渡したつもりだったけど、もしかしてぷうにはちょっと少なかった?」
「うん、わたしは1日6食くらい食べたいんだ。だから、ぴぴの倍頂戴」
「そっか、わかったよ。それで、ご飯無くなって帰ってきたってことは、また行くんだよね? 次はいつ行くの?」
「5日後に向こうで熊のパーティーと組む約束をしたの。だから、それに間に合うようにいくつもりよ」
「なるほど、それじゃあそれまでにご飯の用意をしとくね」
「そういえば、敷地内に木造の建物があったけど、あれはなに?」
「ああ、あれはめめさんの喫茶店だよ」
「ということは、はぴもようやく開拓をはじめたのね」
「うん、これからはどんどんお店が出来るよ。たぶん」
「わかったわ。近いうちにめめさんの喫茶店に行きたいわね。あそこのコーヒーは美味しかったしね」
「うん、そうだね。3人でいこ~」

 こうして、我輩達はめめさんの喫茶店に行ったり、10日分のご飯を作ったりと、のんびりと5日間を過ごした。そして、5日後、ついに出発の日がやってきた。いろいろとお弁当を用意してしまったが、今回はやっぱり我輩もついていくことにした。理由としては、開拓のめどもついたし、ここで待っていても暇だからだ。いや、現地に行っても暇なのに変わりないんだけど、一緒に行けばご飯トラブルなんかは回避出来るからな。

「はぴさん、これをどうぞ」

 見送りに来てくれためめさんからなんか巨大な樽をもらった。

「これは?」
「中身はコーヒーシェイクです。よかったら旅先で飲んでください」
「ありがとう」
「いえいえ。心配する必要はないかと思いますが、気を付けて行ってくださいね」
「うむ、めめさんこそ留守を頼んで悪いな」
「いえ、お気になさらず」

 我輩達の土地を新たに借りたい人などが出てきた場合の対処に関しては、我輩の不在中はめめさんがやってくれることになった。なんだかなんでもかんでもめめさん任せにしてしまってちょっと悪い気もするが、本人が気にしないでほしいと言ってくれているので、気にせずお任せすることにした。

 そうそう、もちろんお金は支払っているからな。ぴぴとぷうのおかげでお金は腐るほどあるから、けちけちする必要はないのだ。

「では、行って来る」
「はい、行ってらっしゃいませ」

 こうして我輩達はミニぴぴぷちゃ号で氷の大地へと向かう。我輩が参戦するからには地下基地攻略も佳境に差し掛かったと言っても過言ではないのだ!

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